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平成十四年 テーマパーク
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東京都心、夜も深い時間、中島孝之は扉を開けた。そこには一緒に仕事をしている桐間貫太郎に抱かれたしんいちろうがいた。
「しんいちろう」
中島はしんいちろうに近寄った。しんいちろうは中島に抱き着いた。
「かわいそうに・・・」
中島はしんいちろうを強く抱きしめた。
「つらかったね」
中島の目から涙が流れた。人間にはそれぞれの役割があるとはいえ、こんな幼い時から辛い経験をしなければならないなんて・・・。
「しんいちろう、お腹空いてないかい?」
「喉が渇いていないかい?」
しんいちろうは中島にくっついたままだ。悲しみが深い。
「良文に会うかい?」
しんいちろうはやっと顔を上げた。
「いいの?」
「もちろんさ、良文は凄く喜ぶよ」
「寝ているよね」
「いいさ、しんいちろうが来てくれたんだもの」
「会いたいな」
「よし、良文の部屋に行こう!」
中島はしんいちろうを抱いたまま、良文の部屋に向かった。
部屋の扉を開けると真っ暗で、良文は布団の中でぐっすり寝ていた。電灯を点け、中島はしんいちろうを抱いたまま、枕元に進んだ。中島はしんいちろうに囁いた。
「呼びかけてごらん」
「いいの?」
美しい黒い瞳は心配そうだ。
「もちろんさ。良文の一番のお友達だもの」
優しく微笑んだ。
「よっちゃん、よっちゃん」
しんいちろうは良文の耳元に顔を寄せた。
「ん、ん、ん」
寝返りを打つ。
「ん!?」
飛び上がる。
「しんちゃん!?」
良文はしんいちろうに飛びついた。
「わぁ、しんちゃん、会いたかったよぉ」
良文は嬉しかった。まさかしんいちろうが東京に来てくれるなんて夢みたいだった。
「よっちゃん、よっちゃん、よっちゃん」
しんいちろうはいつもより強く良文にくっついた。
「ごめんね。よっちゃんにどうしても会いたくなっちゃったんだ」
「いいよ、嬉しいよ。僕とっても嬉しいよ」
二人の姿を見て中島は深い絆を感じた。
「しんちゃん、あったかーい」
「よっちゃん、よっちゃん、よっちゃんちゃん♪」
二人はしばらくじゃれ合っていた。
「しんいちろう、パジャマに着替えよう。良文と一緒に寝なさい」
「いいの?」
しんいちろうは良文を見る。
「もちろん、僕嬉しいよ!」
「決まった。良文、パジャマを出してあげなさい」
パジャマを用意している間もしんいちろうは良文にぴったりくっ付いていた。しんちゃん、いつもと違うよ。もしかして怖がっているの? 不安なの?
着替えが終わると、中島はしんいちろうに歯磨きをさせた。その間、良文はしんいちろうの左腕をずっと抱えていた。
「しんいちろう、少し水分を摂ろう。このお水を飲みなさい」
中島はコップを渡した。しんいちろうはゴクゴク飲み切った。
「良文も、ほら」
良文も渡された水を飲んだ。
「さぁ、三人で寝よう。和室に布団を敷いて」
中島は小さな二人を和室に誘った。押し入れから掛け布団と敷布団を二組出した。
「ちょっと狭いけど頑張って三人で寝よう」
中島の言葉とともに二人は布団に飛び込んだ。
「わぁ、しんちゃん、柔らかーい」
「よっちゃん、よっちゃん、よっちゃんちゃん♪」
最初は子犬のように布団の上でじゃれ合っていたが、いつしか眠りに落ちた。
中島孝之は寝付いた二人を見届けると居間に戻った。そこには桐間貫太郎が待っていた。
「寝ましたか・・・」
「ちょっと睡眠導入剤を用いました。くっ付いて寝てますよ」
「そうですか、良かったです。しんいちろうのショックが大き過ぎたので良文君を頼ることにしたんですよ」
「そうですか、そんなにショックを受けたんですか・・・、かわいそうに」
二人はしんいちろうの運命を悲しんだ。
「私は新宿に行ってきます。後始末をしないといけないのでね」
「いつも助かります」
「いえ、これくらい簡単なもんですよ。しかし、GPSってのは困りますな。位置情報特定ってやつですか。スマホなんて持つもんじゃないですね」
「全くです。常に追われているような感じがして嫌ですね。情報化社会なんて真っ平です」
二人は溜息を付いた。桐間が切り出す。
「宮本村長のことを調べているのは、柳沢知事の息のかかった人間ですよ」
「知事が動き始めましたか」
「酒井市長もここのところマメに動いているようです」
「合併のことですか? まだ諦めていませんか?」
「えぇ、財政の関係上、どうしても山田村と合併し、吸収したがっていましてね。宮本さんは何度も断っているのですが、諦めませんねぇ」
「健全ですからねぇ、山田村の財政は」
二人は溜息を付きながらも宮本村長の手腕が誇らしかった。
「知事も市長も山田村は観光資源が多いと睨んでいます。山田村の美しい町並みと手付かずの自然に興味を持っているんですよ」
「昔から山田村を詮索する輩がいるのですが、この頃は合併するためにうろつく輩が多くなりましたかね」
「町並み、自然の他、文化財も興味を示しています。あなたのご先祖が集めた美術品ですね」
「あぁ、それはいつものことですね。みなさん、お好きですからねぇ」
二人はクスッと笑った。
「知事の秘書の柳生というものも探っているようです。この秘書が切れ者みたいですね。知事の椅子を狙っているようです。山田村を調査するためにこっそり偵察を送ったようです」
「柳生・・・、昔から黒幕として陰で囁かれる人物ですね」
「えぇ、それが今回のことに繫がりました。かわいそうに」
二人は溜息を付く。
「桐間さん、明日、しんいちろうを気分転換させるためにテーマパークに行こうと思うんです」
「ぜひ、そうしてあげて下さい」
二人は明日の予定を話し合った。予定が決まると桐間は深夜の新宿に向かった。
しんちゃんと僕は一緒に起きた。
「しんいちろう、良文、おはよう!」
お父さんはいつもと格好が違う。普段はパリッと糊の利いたワイシャツと紺色のスラックスなのに白のパーカーにカーキ色のハーフパンツだ。ランニングに出かける時のよう。
「さぁ、お出かけしよう。ほら、着替えて」
僕は驚いた、今日は平日だ。
「えっ、学校は?」
「風邪をひいたから休みますって電話しておいたよ。しんいちろうが来てくれたんだもの。遊ばなきゃ!」
お父さんの笑顔に僕はびっくりしながらも最高にご機嫌になった。学校に行かなくていい上に、しんちゃんとお出かけできるなんて。
「いいの?」
しんちゃんはお父さんを見つめる。こんなしんちゃん、これまで見たことがない。ほんとに嫌なことがあったんだろうな。お父さんはしんちゃんを抱き寄せた。
「いいに決まっている。私があなたと行きたいんだよ。一緒に行ってくれるかな?」
「はい、嬉しいです」
しんちゃんはお父さんの胸に顔を埋めた。
「中島家の人間はずっと昔からしんいちろうが好きだからねぇ」
お父さんも『ずっと好き』と言った。優しい言葉だな。
しんちゃんと僕は色違いのパーカーを着た。しんちゃんが明るい青、僕が濃い青だ。ボトムスはしんちゃんがカーキ色のハーフパンツ、僕が黒色のハーフパンツだ。しんちゃんとおそろいで嬉しいな。支度を終えて居間に行くと桐間さんが待っていた。
「おはよう、しんちゃん、よっちゃん。二人ともかわいいね」
桐間さんは満面の笑みで僕らを迎えた。
「用意はできたかい? 朝ごはんは車の中でいいかな。サンドイッチと飲み物が用意してあるよ。いいかい?」
「はいっ!」
僕らは元気よく返事をした。嬉しくてニコニコだ。
桐間さんはお父さんと一緒に会社を経営している。山田村の農産物を取り扱う会社だ。桐間さんは東京と山田村を行き来していて、僕の家に来るときは美味しい野菜などの産物といっしょにしんちゃんのお手紙をもってきてくれるんだ。普段からチャキチャキしていてかっこいいし、優しいし、そして面白い。僕は大好きだ。
「さぁ、出発しよう」
「ホントにいいの?」
しんちゃんは桐間さんを見つめる。弱弱しいしんちゃん、とても悲しいことがあったんだろうな。桐間さんはしんちゃんを抱き寄せた。
「いいに決まっているよ。私があなたを連れていきたいんだよ。いいかな?」
「はい、嬉しいです」
しんちゃんは桐間さんの胸に顔を埋めた。
「桐間家の人間はずっと昔からしんいちろうが好きだからね」
桐間さんも『ずっと好き』と言った。優しい言葉だな。
僕らは車に乗り込んだ。運転手は桐間さん、後部座席にお父さん、しんちゃん、僕が乗った。しんちゃんが真ん中だ。嬉しいな。朝の渋滞の中、僕らはサンドイッチを頬張った。しんちゃんは何でもおいしそうに食べる。見ていて嬉しくなっちゃう、みんなニコニコだ。
テーマパークの近くで僕らは車から下ろされた。
「閉園時間にここで待ち合わせしましょう」
と約束して桐間さんは去っていった。車が見えなくなるとお父さんはしんちゃんの手を握った。僕は反対の手を握った。
「さぁ、行きましょう!」
僕らは入場ゲートに向かった。桐間さんがチケットを用意してくれていたのですんなり入場できた。しんちゃんは初めて見る景色にキョロキョロしていた。お父さんは早速ショップに向かった。
「今日、私たちは内緒で来ています。ですから、バレないようにするため被り物をしましょう!」
そこにはテーマパークのキャラクターをモチーフとしたファンキャップという被り物が色とりどりに飾られていた。鼠、家鴨、犬、栗鼠、宇宙人、なんだか分かんない生物など、お茶目な被り物が所狭しと並んでいた。しんちゃんと僕は驚きながらも、嬉しくなってどれにしようか悩んだ。
「しんちゃん、これ似合うんじゃない?」
「こっちもいいんじゃない?」
って色々手に取ってみたんだ。お父さんは涙を流して笑っている。
「かわいいっ」
って大喜びだ。しんちゃんは可愛い黄色のもじゃもじゃのオバケの被り物を手に取った。
「これにするかい?」
しんちゃんはコクンと頷いた。僕ももちろん同じのにした。
「私もこれにします」
お父さんも一緒のを買った。
「お父さん、お父さんがバレないようにって言ってたのに目立っちゃうよ!」
「何が?」
お父さんはいつものスマートな身のこなしで変てこりんなオバケのファンキャップを被った。僕らは大笑いしたんだ。しんちゃんが笑っている、嬉しいなぁ。うちのお父さんはさくらちゃんを筆頭に女の人から、
「かっこいい」
「素敵」
と言われているが、身近にいる僕からすると時々強烈だ。きりりとして物静かでクールなのに、しんちゃんと一緒にいるときは笑顔いっぱいで豊かなんだ。僕と同じようにはしゃいじゃう、子どものように。
平日のテーマパークは空いていた。僕たちのような小学生はほとんどいなかった。怖い先生やお友達がいない、大好きなしんちゃんが横にいる、ほんと夢の国だ。普段と違う世界に僕はワクワクが止まらなかった。初めて乗るアトラクションは怖かったけど、しんちゃんと一緒だから何でもチャレンジできた。ジェットコースターは動物園の遠足のときに小さいのに乗ったけど本格的なのは初めてだ。しんちゃんは乗っているときも僕の手を握っていた。僕はとっても嬉しかった。
「しんいちろう、食べるかい?」
お父さんは美味しそうなものを見るとすぐに声を掛けた。しんちゃんはキョロキョロしていた。初めて食べるものがいっぱいあるから迷っているんだろうな。お父さんは買ってあげたくってしょうがないようだ。お父さんが一番楽しんでいるや。たくさんのグルメがある中でしんちゃんはアイスクリームを選んだ。三人でぺろぺろ舐めたんだ、甘いね、美味しいね。
「こんなの初めて食べるよ、美味しいなぁ」
しんちゃんは嬉しそうだ。山田村のお店にはアイスクリームの種類が少ないんだろうな。
「よっちゃん、こんなのいつも食べてるの?」
「ううん、こんなの食べるの久しぶりだよ」
「私も久しぶりです。しんいちろうと食べるとおいちぃです♡」
お父さんは必ず僕らの話に入ってくる。お父さん、変な被り物して、アイスクリーム食べている、なんか面白いよ。
僕らはテーマパーク内のアトラクションの全制覇を目指して、いっぱい歩いた。そして、いっぱい甘いものを食べて、いっぱい笑った。
楽しい時間はあっという間に過ぎる。出口に向かって歩くのは寂しかった。足取りが重いのは一生懸命遊んで疲れただけではなかった。夢の時間が終わっちゃうんだ・・・。しんちゃんはお土産屋の前で立ち止まった。
「何でも選びなさい」
お父さんはしんちゃんの背中を押してお店に入らせた。そこには可愛いものがいっぱいあった。しんちゃんは僕の手を握りながらいろんなものを見ていた。
「よっちゃんとおそろいにしたいです」
「いいですよ、なんでも選びなさい」
「わぁ、よっちゃん、どれがいい?」
「僕、しんちゃんと一緒ならどれでもいいよ」
かわいいものがいっぱいある中で、しんちゃんはオバケの小さなぬいぐるみを選んだ。ヘンテコで面白いキャラクターだ。真っ黒な目でふにゃふにゃ笑っていてなんだかしんちゃんのようだ。
「これだけでいいのかい?」
しんちゃんはコクコクと首を振る。一個でいいんだ、欲がないんだね、しんちゃん。お父さんは嬉しそうにレジへ向かった、たくさんの箱詰めのお菓子とともに。
桐間さんは朝と同じところで待っていた。
「おやおや、三人ともかわいいオバケになっちゃって」
桐間さんは大笑いしていた。きっとお父さんの姿を笑っているんだろう。僕らは車に乗り込んだ。助手席には女性が乗っていた。おじいちゃんの屋敷で見たことがある。優しくてきれいな人だ。僕は車に乗り込むとあっという間に寝ちゃったんだ。
「中島様、ありがとうございました。私はもう大丈夫です」
「そうかい。もういいのかい」
「はい、皆さんに心配を掛けますので」
「あぁ、しんいちろうは優しいなぁ」
中島は愛おしく見つめる。
「紙と鉛筆を貸してください」
しんいちろうはさらさらと絵を描いた。
「相変わらずうまいねぇ」
褒める中島の顔を覗き込む。
「中島様、私はよっちゃんに嫌われないでしょうか?」
「心配することはないよ。良文はあなたの読んでいる歴史書の中にある通りの『よっちゃん』だから、とても強い『あはれ』を持っている。『あはれ』は人を想う優しい気持ちだ。良文はあなたのことが好き、ずっと好きでいますよ」
「中島様、私を嫌いにならないで」
「もちろん、私もあなたの知っている中島ですから、ずっとあなたを好きでいますよ」
しんいちろうは中島にぎゅっとしがみついた。
お菓子のお土産をたくさんもらったしんいちろうは後部座席に座り、帰途に就いた。そして、女性に抱かれて眠った。
起きたらしんちゃんはいなかった。僕は大泣きしたんだ。お父さんは僕を優しく抱いた。
「みんなが心配するから帰るって」
分かっているさ、そんなこと。
「しんいちろうが手紙を書いてくれたよ。机の上に置いてあるよ、見てごらん」
しんちゃんは僕に手紙を残していった。
「わぁ、すごいや、昨日の僕たちだ」
そこには三人がアイスクリームを食べているところ、ジェットコースターに乗ったところ、パレードでダンサーの真似をして踊っていたところが描かれていた。
「わぁ、うまいなぁ。しんちゃん、笑ってるよ」
僕は昨日のことを思い出して泣きながら笑ったのさ。しんちゃんとおそろいの被り物とおばけのぬいぐるみ、大事にするよ。
「良文、昨日のことは誰にも言ってはいけないよ」
「うん」
「気付かれてもいけない」
「うん」
「今週はとにかく静かにしていなさい。手紙やぬいぐるみを持って行ってはいけないよ」
「うん、分かったよ」
「田沼君が良文にちょっかいを掛けてきても切り抜けるんだ。それが中島としてのやることだ。気付かれてはならない」
僕は驚いた。しんちゃんが急にやってきたこと、元気がなかったこと、お父さんと桐間さんがしんちゃんのために動いたこと、どれも普段じゃ考えられない。そんなに知られてはいけないことなの?
「しばらくは桐間さんは来ないだろう。私もお前も何事もなかったように過ごすんだ。今日は学校に行きなさい。いつもを演じるんだ。分かったかい?」
「しんちゃんに何かあったの?」
お父さんの話す内容が怖くなった。しんちゃん、しんちゃん、大丈夫なの?
「何もなかったようにするのがお前のやるべきことだ。山田村に興味のある悪い奴が私たちに嫌がらせを仕掛けてきそうなんだ。そのため、私たち山田村の関係者は調べられているようなんだ。良文は何も怖がることはないよ。いつものように振る舞えば問題ない。しんいちろうのためならできるな?」
「しんちゃんなんだね、しんちゃんに関わることなんだね」
「あぁ」
「しんちゃんのためならやるよ。約束するよ」
「よろしく頼む」
お父さんは僕をぎゅっと抱いた。僕は学校の準備をした。僕はいつも通り、朝ごはんを食べ、学校へ向かった。泣いてなんかいられないや、しんちゃんが悲しむようなことがあったら大変だ。
僕はマスクをずっとしていた。昨日、風邪をひいて休んだことになっているから。休み時間、着席している僕にさくらちゃんが心配そうに寄ってきたんだ。
「心配してくれてありがとう」
と言って下を向いたんだ。田沼君の気配を感じたけど僕は本を出して読んでいだ。本を読んでいると話しかけられないから。
それにしても、しんちゃんを悲しませることって何だろう?
二〇〇二年十月十日の東京都新聞ネットニュースの一部
行方不明になっているのは、東京都□◇区の江戸文化博物館勤務の男性(三八)です。 警察によりますと、男性は九月二九日から十月三日まで有給休暇を取得することを勤務先の上司に願い出ておりました。しかし、十月四日になっても男性が出社せず、連絡が取れない状況が続いているため、男性の家族が警察に届け出ました。警察は消防と捜索を続けていますが、男性の行方は分かっていません。
「しんいちろう」
中島はしんいちろうに近寄った。しんいちろうは中島に抱き着いた。
「かわいそうに・・・」
中島はしんいちろうを強く抱きしめた。
「つらかったね」
中島の目から涙が流れた。人間にはそれぞれの役割があるとはいえ、こんな幼い時から辛い経験をしなければならないなんて・・・。
「しんいちろう、お腹空いてないかい?」
「喉が渇いていないかい?」
しんいちろうは中島にくっついたままだ。悲しみが深い。
「良文に会うかい?」
しんいちろうはやっと顔を上げた。
「いいの?」
「もちろんさ、良文は凄く喜ぶよ」
「寝ているよね」
「いいさ、しんいちろうが来てくれたんだもの」
「会いたいな」
「よし、良文の部屋に行こう!」
中島はしんいちろうを抱いたまま、良文の部屋に向かった。
部屋の扉を開けると真っ暗で、良文は布団の中でぐっすり寝ていた。電灯を点け、中島はしんいちろうを抱いたまま、枕元に進んだ。中島はしんいちろうに囁いた。
「呼びかけてごらん」
「いいの?」
美しい黒い瞳は心配そうだ。
「もちろんさ。良文の一番のお友達だもの」
優しく微笑んだ。
「よっちゃん、よっちゃん」
しんいちろうは良文の耳元に顔を寄せた。
「ん、ん、ん」
寝返りを打つ。
「ん!?」
飛び上がる。
「しんちゃん!?」
良文はしんいちろうに飛びついた。
「わぁ、しんちゃん、会いたかったよぉ」
良文は嬉しかった。まさかしんいちろうが東京に来てくれるなんて夢みたいだった。
「よっちゃん、よっちゃん、よっちゃん」
しんいちろうはいつもより強く良文にくっついた。
「ごめんね。よっちゃんにどうしても会いたくなっちゃったんだ」
「いいよ、嬉しいよ。僕とっても嬉しいよ」
二人の姿を見て中島は深い絆を感じた。
「しんちゃん、あったかーい」
「よっちゃん、よっちゃん、よっちゃんちゃん♪」
二人はしばらくじゃれ合っていた。
「しんいちろう、パジャマに着替えよう。良文と一緒に寝なさい」
「いいの?」
しんいちろうは良文を見る。
「もちろん、僕嬉しいよ!」
「決まった。良文、パジャマを出してあげなさい」
パジャマを用意している間もしんいちろうは良文にぴったりくっ付いていた。しんちゃん、いつもと違うよ。もしかして怖がっているの? 不安なの?
着替えが終わると、中島はしんいちろうに歯磨きをさせた。その間、良文はしんいちろうの左腕をずっと抱えていた。
「しんいちろう、少し水分を摂ろう。このお水を飲みなさい」
中島はコップを渡した。しんいちろうはゴクゴク飲み切った。
「良文も、ほら」
良文も渡された水を飲んだ。
「さぁ、三人で寝よう。和室に布団を敷いて」
中島は小さな二人を和室に誘った。押し入れから掛け布団と敷布団を二組出した。
「ちょっと狭いけど頑張って三人で寝よう」
中島の言葉とともに二人は布団に飛び込んだ。
「わぁ、しんちゃん、柔らかーい」
「よっちゃん、よっちゃん、よっちゃんちゃん♪」
最初は子犬のように布団の上でじゃれ合っていたが、いつしか眠りに落ちた。
中島孝之は寝付いた二人を見届けると居間に戻った。そこには桐間貫太郎が待っていた。
「寝ましたか・・・」
「ちょっと睡眠導入剤を用いました。くっ付いて寝てますよ」
「そうですか、良かったです。しんいちろうのショックが大き過ぎたので良文君を頼ることにしたんですよ」
「そうですか、そんなにショックを受けたんですか・・・、かわいそうに」
二人はしんいちろうの運命を悲しんだ。
「私は新宿に行ってきます。後始末をしないといけないのでね」
「いつも助かります」
「いえ、これくらい簡単なもんですよ。しかし、GPSってのは困りますな。位置情報特定ってやつですか。スマホなんて持つもんじゃないですね」
「全くです。常に追われているような感じがして嫌ですね。情報化社会なんて真っ平です」
二人は溜息を付いた。桐間が切り出す。
「宮本村長のことを調べているのは、柳沢知事の息のかかった人間ですよ」
「知事が動き始めましたか」
「酒井市長もここのところマメに動いているようです」
「合併のことですか? まだ諦めていませんか?」
「えぇ、財政の関係上、どうしても山田村と合併し、吸収したがっていましてね。宮本さんは何度も断っているのですが、諦めませんねぇ」
「健全ですからねぇ、山田村の財政は」
二人は溜息を付きながらも宮本村長の手腕が誇らしかった。
「知事も市長も山田村は観光資源が多いと睨んでいます。山田村の美しい町並みと手付かずの自然に興味を持っているんですよ」
「昔から山田村を詮索する輩がいるのですが、この頃は合併するためにうろつく輩が多くなりましたかね」
「町並み、自然の他、文化財も興味を示しています。あなたのご先祖が集めた美術品ですね」
「あぁ、それはいつものことですね。みなさん、お好きですからねぇ」
二人はクスッと笑った。
「知事の秘書の柳生というものも探っているようです。この秘書が切れ者みたいですね。知事の椅子を狙っているようです。山田村を調査するためにこっそり偵察を送ったようです」
「柳生・・・、昔から黒幕として陰で囁かれる人物ですね」
「えぇ、それが今回のことに繫がりました。かわいそうに」
二人は溜息を付く。
「桐間さん、明日、しんいちろうを気分転換させるためにテーマパークに行こうと思うんです」
「ぜひ、そうしてあげて下さい」
二人は明日の予定を話し合った。予定が決まると桐間は深夜の新宿に向かった。
しんちゃんと僕は一緒に起きた。
「しんいちろう、良文、おはよう!」
お父さんはいつもと格好が違う。普段はパリッと糊の利いたワイシャツと紺色のスラックスなのに白のパーカーにカーキ色のハーフパンツだ。ランニングに出かける時のよう。
「さぁ、お出かけしよう。ほら、着替えて」
僕は驚いた、今日は平日だ。
「えっ、学校は?」
「風邪をひいたから休みますって電話しておいたよ。しんいちろうが来てくれたんだもの。遊ばなきゃ!」
お父さんの笑顔に僕はびっくりしながらも最高にご機嫌になった。学校に行かなくていい上に、しんちゃんとお出かけできるなんて。
「いいの?」
しんちゃんはお父さんを見つめる。こんなしんちゃん、これまで見たことがない。ほんとに嫌なことがあったんだろうな。お父さんはしんちゃんを抱き寄せた。
「いいに決まっている。私があなたと行きたいんだよ。一緒に行ってくれるかな?」
「はい、嬉しいです」
しんちゃんはお父さんの胸に顔を埋めた。
「中島家の人間はずっと昔からしんいちろうが好きだからねぇ」
お父さんも『ずっと好き』と言った。優しい言葉だな。
しんちゃんと僕は色違いのパーカーを着た。しんちゃんが明るい青、僕が濃い青だ。ボトムスはしんちゃんがカーキ色のハーフパンツ、僕が黒色のハーフパンツだ。しんちゃんとおそろいで嬉しいな。支度を終えて居間に行くと桐間さんが待っていた。
「おはよう、しんちゃん、よっちゃん。二人ともかわいいね」
桐間さんは満面の笑みで僕らを迎えた。
「用意はできたかい? 朝ごはんは車の中でいいかな。サンドイッチと飲み物が用意してあるよ。いいかい?」
「はいっ!」
僕らは元気よく返事をした。嬉しくてニコニコだ。
桐間さんはお父さんと一緒に会社を経営している。山田村の農産物を取り扱う会社だ。桐間さんは東京と山田村を行き来していて、僕の家に来るときは美味しい野菜などの産物といっしょにしんちゃんのお手紙をもってきてくれるんだ。普段からチャキチャキしていてかっこいいし、優しいし、そして面白い。僕は大好きだ。
「さぁ、出発しよう」
「ホントにいいの?」
しんちゃんは桐間さんを見つめる。弱弱しいしんちゃん、とても悲しいことがあったんだろうな。桐間さんはしんちゃんを抱き寄せた。
「いいに決まっているよ。私があなたを連れていきたいんだよ。いいかな?」
「はい、嬉しいです」
しんちゃんは桐間さんの胸に顔を埋めた。
「桐間家の人間はずっと昔からしんいちろうが好きだからね」
桐間さんも『ずっと好き』と言った。優しい言葉だな。
僕らは車に乗り込んだ。運転手は桐間さん、後部座席にお父さん、しんちゃん、僕が乗った。しんちゃんが真ん中だ。嬉しいな。朝の渋滞の中、僕らはサンドイッチを頬張った。しんちゃんは何でもおいしそうに食べる。見ていて嬉しくなっちゃう、みんなニコニコだ。
テーマパークの近くで僕らは車から下ろされた。
「閉園時間にここで待ち合わせしましょう」
と約束して桐間さんは去っていった。車が見えなくなるとお父さんはしんちゃんの手を握った。僕は反対の手を握った。
「さぁ、行きましょう!」
僕らは入場ゲートに向かった。桐間さんがチケットを用意してくれていたのですんなり入場できた。しんちゃんは初めて見る景色にキョロキョロしていた。お父さんは早速ショップに向かった。
「今日、私たちは内緒で来ています。ですから、バレないようにするため被り物をしましょう!」
そこにはテーマパークのキャラクターをモチーフとしたファンキャップという被り物が色とりどりに飾られていた。鼠、家鴨、犬、栗鼠、宇宙人、なんだか分かんない生物など、お茶目な被り物が所狭しと並んでいた。しんちゃんと僕は驚きながらも、嬉しくなってどれにしようか悩んだ。
「しんちゃん、これ似合うんじゃない?」
「こっちもいいんじゃない?」
って色々手に取ってみたんだ。お父さんは涙を流して笑っている。
「かわいいっ」
って大喜びだ。しんちゃんは可愛い黄色のもじゃもじゃのオバケの被り物を手に取った。
「これにするかい?」
しんちゃんはコクンと頷いた。僕ももちろん同じのにした。
「私もこれにします」
お父さんも一緒のを買った。
「お父さん、お父さんがバレないようにって言ってたのに目立っちゃうよ!」
「何が?」
お父さんはいつものスマートな身のこなしで変てこりんなオバケのファンキャップを被った。僕らは大笑いしたんだ。しんちゃんが笑っている、嬉しいなぁ。うちのお父さんはさくらちゃんを筆頭に女の人から、
「かっこいい」
「素敵」
と言われているが、身近にいる僕からすると時々強烈だ。きりりとして物静かでクールなのに、しんちゃんと一緒にいるときは笑顔いっぱいで豊かなんだ。僕と同じようにはしゃいじゃう、子どものように。
平日のテーマパークは空いていた。僕たちのような小学生はほとんどいなかった。怖い先生やお友達がいない、大好きなしんちゃんが横にいる、ほんと夢の国だ。普段と違う世界に僕はワクワクが止まらなかった。初めて乗るアトラクションは怖かったけど、しんちゃんと一緒だから何でもチャレンジできた。ジェットコースターは動物園の遠足のときに小さいのに乗ったけど本格的なのは初めてだ。しんちゃんは乗っているときも僕の手を握っていた。僕はとっても嬉しかった。
「しんいちろう、食べるかい?」
お父さんは美味しそうなものを見るとすぐに声を掛けた。しんちゃんはキョロキョロしていた。初めて食べるものがいっぱいあるから迷っているんだろうな。お父さんは買ってあげたくってしょうがないようだ。お父さんが一番楽しんでいるや。たくさんのグルメがある中でしんちゃんはアイスクリームを選んだ。三人でぺろぺろ舐めたんだ、甘いね、美味しいね。
「こんなの初めて食べるよ、美味しいなぁ」
しんちゃんは嬉しそうだ。山田村のお店にはアイスクリームの種類が少ないんだろうな。
「よっちゃん、こんなのいつも食べてるの?」
「ううん、こんなの食べるの久しぶりだよ」
「私も久しぶりです。しんいちろうと食べるとおいちぃです♡」
お父さんは必ず僕らの話に入ってくる。お父さん、変な被り物して、アイスクリーム食べている、なんか面白いよ。
僕らはテーマパーク内のアトラクションの全制覇を目指して、いっぱい歩いた。そして、いっぱい甘いものを食べて、いっぱい笑った。
楽しい時間はあっという間に過ぎる。出口に向かって歩くのは寂しかった。足取りが重いのは一生懸命遊んで疲れただけではなかった。夢の時間が終わっちゃうんだ・・・。しんちゃんはお土産屋の前で立ち止まった。
「何でも選びなさい」
お父さんはしんちゃんの背中を押してお店に入らせた。そこには可愛いものがいっぱいあった。しんちゃんは僕の手を握りながらいろんなものを見ていた。
「よっちゃんとおそろいにしたいです」
「いいですよ、なんでも選びなさい」
「わぁ、よっちゃん、どれがいい?」
「僕、しんちゃんと一緒ならどれでもいいよ」
かわいいものがいっぱいある中で、しんちゃんはオバケの小さなぬいぐるみを選んだ。ヘンテコで面白いキャラクターだ。真っ黒な目でふにゃふにゃ笑っていてなんだかしんちゃんのようだ。
「これだけでいいのかい?」
しんちゃんはコクコクと首を振る。一個でいいんだ、欲がないんだね、しんちゃん。お父さんは嬉しそうにレジへ向かった、たくさんの箱詰めのお菓子とともに。
桐間さんは朝と同じところで待っていた。
「おやおや、三人ともかわいいオバケになっちゃって」
桐間さんは大笑いしていた。きっとお父さんの姿を笑っているんだろう。僕らは車に乗り込んだ。助手席には女性が乗っていた。おじいちゃんの屋敷で見たことがある。優しくてきれいな人だ。僕は車に乗り込むとあっという間に寝ちゃったんだ。
「中島様、ありがとうございました。私はもう大丈夫です」
「そうかい。もういいのかい」
「はい、皆さんに心配を掛けますので」
「あぁ、しんいちろうは優しいなぁ」
中島は愛おしく見つめる。
「紙と鉛筆を貸してください」
しんいちろうはさらさらと絵を描いた。
「相変わらずうまいねぇ」
褒める中島の顔を覗き込む。
「中島様、私はよっちゃんに嫌われないでしょうか?」
「心配することはないよ。良文はあなたの読んでいる歴史書の中にある通りの『よっちゃん』だから、とても強い『あはれ』を持っている。『あはれ』は人を想う優しい気持ちだ。良文はあなたのことが好き、ずっと好きでいますよ」
「中島様、私を嫌いにならないで」
「もちろん、私もあなたの知っている中島ですから、ずっとあなたを好きでいますよ」
しんいちろうは中島にぎゅっとしがみついた。
お菓子のお土産をたくさんもらったしんいちろうは後部座席に座り、帰途に就いた。そして、女性に抱かれて眠った。
起きたらしんちゃんはいなかった。僕は大泣きしたんだ。お父さんは僕を優しく抱いた。
「みんなが心配するから帰るって」
分かっているさ、そんなこと。
「しんいちろうが手紙を書いてくれたよ。机の上に置いてあるよ、見てごらん」
しんちゃんは僕に手紙を残していった。
「わぁ、すごいや、昨日の僕たちだ」
そこには三人がアイスクリームを食べているところ、ジェットコースターに乗ったところ、パレードでダンサーの真似をして踊っていたところが描かれていた。
「わぁ、うまいなぁ。しんちゃん、笑ってるよ」
僕は昨日のことを思い出して泣きながら笑ったのさ。しんちゃんとおそろいの被り物とおばけのぬいぐるみ、大事にするよ。
「良文、昨日のことは誰にも言ってはいけないよ」
「うん」
「気付かれてもいけない」
「うん」
「今週はとにかく静かにしていなさい。手紙やぬいぐるみを持って行ってはいけないよ」
「うん、分かったよ」
「田沼君が良文にちょっかいを掛けてきても切り抜けるんだ。それが中島としてのやることだ。気付かれてはならない」
僕は驚いた。しんちゃんが急にやってきたこと、元気がなかったこと、お父さんと桐間さんがしんちゃんのために動いたこと、どれも普段じゃ考えられない。そんなに知られてはいけないことなの?
「しばらくは桐間さんは来ないだろう。私もお前も何事もなかったように過ごすんだ。今日は学校に行きなさい。いつもを演じるんだ。分かったかい?」
「しんちゃんに何かあったの?」
お父さんの話す内容が怖くなった。しんちゃん、しんちゃん、大丈夫なの?
「何もなかったようにするのがお前のやるべきことだ。山田村に興味のある悪い奴が私たちに嫌がらせを仕掛けてきそうなんだ。そのため、私たち山田村の関係者は調べられているようなんだ。良文は何も怖がることはないよ。いつものように振る舞えば問題ない。しんいちろうのためならできるな?」
「しんちゃんなんだね、しんちゃんに関わることなんだね」
「あぁ」
「しんちゃんのためならやるよ。約束するよ」
「よろしく頼む」
お父さんは僕をぎゅっと抱いた。僕は学校の準備をした。僕はいつも通り、朝ごはんを食べ、学校へ向かった。泣いてなんかいられないや、しんちゃんが悲しむようなことがあったら大変だ。
僕はマスクをずっとしていた。昨日、風邪をひいて休んだことになっているから。休み時間、着席している僕にさくらちゃんが心配そうに寄ってきたんだ。
「心配してくれてありがとう」
と言って下を向いたんだ。田沼君の気配を感じたけど僕は本を出して読んでいだ。本を読んでいると話しかけられないから。
それにしても、しんちゃんを悲しませることって何だろう?
二〇〇二年十月十日の東京都新聞ネットニュースの一部
行方不明になっているのは、東京都□◇区の江戸文化博物館勤務の男性(三八)です。 警察によりますと、男性は九月二九日から十月三日まで有給休暇を取得することを勤務先の上司に願い出ておりました。しかし、十月四日になっても男性が出社せず、連絡が取れない状況が続いているため、男性の家族が警察に届け出ました。警察は消防と捜索を続けていますが、男性の行方は分かっていません。
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