調整師の幸運術~すべてを奪われた令嬢は運を操る

兎緑夕季

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第二章

取引…①

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「なんだお前!急に現れて…」
「私はキュアノルホテルに泊まりに来たのだけれど、興味深いお話を聞いた物ですから…」
「泊まりに来たって?ここがホテルだったのは随分前の話だ。100年前からぶっ飛んできたのか?」

マードリックは下品な笑いを浮かべた。

「まあ、ちょうど退屈してたし、アンタが相手をしてくれるっつうなら歓迎するぜ」

そのゴツゴツとした指が胸のあたりに伸びてきたので、払いのける。

全く、気色の悪い男だこと。

「私は取引を提案しているのよ。大金が欲しいと言っている無礼な方にね」

嫌味を言えば、目の前の男は眉を顰める。
わかりやすく機嫌を損ねたらしい。

「何も持ってなさそうなお嬢さんに払えるのか?第一…」
「シエリー家にしか売れないって契約でしょう?それなら、解決できるわ。私はシエリー家の人間だから」

シアの発言に驚きの声をあげたのはアダムだった。

「君がシエリー一族?本当に?」
「ええ~。そうよ。アダム様だったかしら?つまり私とあなたは親戚という事になります」

呆気にとられるアダムにウインク一つすれば、なぜか顔を赤らめて俯かれる。

もう!失礼しちゃうわ。
皇都の人とはノリが合わないのかしら?
それともフランク過ぎた?
カトリシア様のご親戚に失礼がないようにしたかっただけなんだけど…。
普通に握手を求めるべきだったかも?

「ばっバカ言え。シエリー家はもう、アダムしか…」

疑うマードリックの前にベゴニアの花が象られた指輪を差し出す。

「確かにシエリー家の紋章。でもお前なんて知らない」
「はあ…イーディス家に売られて何年経つと思ってるの?全員、把握していなくても不思議ではないでしょう?」

本当は数時間前にシエリー家の名を貰ったんだけどね。
少し罪悪感が湧くけれど、仕方がない。

「私の身分はカトリシア・シエリー様が保証してくださるわ。まあ、国を出られたから聞くのは難しいですけれど…」
「カトリシア様ですか?あの方はご無事で?」

今度はトーマスが声をあげた。

「えっ…ええ、まあ…」

物凄い勢いで詰めかけられて思わずしどろもどろになる。
歓喜で涙を流すイケおじ…老齢の執事の姿に呆気にとられた。

「カトリシア?そんな方、うちにいたっけ」
「アダム様。カトリシア様はホテル帝国を築いた初代シエリーの末のお嬢様ですよ。かなりアグレッシブな方で若い頃に家を出られたはずです。では、貴女様はカトリシア様の娘様で?」
「いえ、さすがに年齢差がありますでしょう?」
「これは申し訳ありません。ではお孫様でいらっしゃいますか?」
「えっ…。ええ、まあ…。そんなところで…」

ウソをつく形になって、さらに後ろめたい…。

「おい。俺を無視するな。家族の再会はよそでやれよな」
「あら、これは失礼。早い話よ。私がこの建物を買い取るわ。それで、貴方は晴れて自由になれる」

そう言えば、マードックは高笑いした。
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