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本編
第13話 思い出
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誠子内親王が泣き止んだ後、理仁親王と彼女は宮邸へと戻った。
2人は宮邸に戻ると父の書斎へと向かう。
「お父さま、昔のあの人の写真ってある?ちょっと気になったから見たいな~って思ってさ」
理仁は健仁が皇族だった頃の写真がないか父の葛城宮維仁 親王に尋ねた。
「健仁の写真か…ここのアルバムにはいってるかな?」
そう言って彼は書斎の本棚の下の引き戸を開ける。
そこには年季の入ったアルバムが何冊も入っていた。
「君が生まれる前の誠子と文子と共に写ってるのがこれだな」
その後、彼は比較的新しいアルバムを取り出した。
「こっちは君も含めた4人で写ってる唯一の写真がある奴だ。」
葛城宮がそう言ってアルバムを開くと中には病室で撮られたと思しき1枚の写真があった。
ベビーベッドで眠る理仁を囲む様に健仁と文子、誠子が笑顔でピースサインを見せている。
「確かこの頃にはもうユダヤ教に改宗していたのよね…」
誠子はそう言って表情を曇らせる。
「そうだな...あの時の衝撃は今でも忘れられないよ...」
葛城宮も同じく表情を曇らせながらそう返答する。
彼の決断は18年が経過した今もなお皇室に暗い影を落としていた。
その後、葛城宮は古いアルバムを開く。
「これは誠子が赤ちゃんだった頃の写真だな」
そう言って葛城宮はアルバムの写真を指さす。そこには、赤ちゃん時代の誠子が当時3歳だった健仁の両足に両手を乗せて乗り上がっている写真と笑顔の文子の写真が載っていた。
「この頃から兄妹仲は良かったんだなって思っていたよ」
そう懐かしそうに告げる葛城宮。理仁は「昔見たお父さまの子供の頃の写真にそっくりだね」と感想を述べる。
「そうだな...あの子は生き写しと言えるくらい私にそっくりだからね」
体型がガッチリしている事と短めのペイオット(伸ばしたもみあげを巻いたユダヤ人に多い髪型)を巻いている事を除いて彼は葛城宮とほぼ瓜二つの容姿をしている。
そんな彼は皇族時代、特殊な環境で思い悩むことの多かった文子や誠子の相談によく乗っていた。
また幼い時子の遊び相手として当時の皇太子夫妻(現在の天皇皇后両陛下)の信頼も厚く皇室の未来として期待されていた。
皇室専門家の中には「健仁さんの離脱が無ければ皇室が現在直面する危機の殆どが当面の解決を見たのではないか」と述べる者もいる程だった。
それ程までに彼の存在は皇室にとっても、そして誠子にとっても非常に重要なものであった。
そして、ユダヤ教改宗という予期せず生じたイレギュラーは今も家族の関係、そして皇室の未来に影を落としている。
「昔は良く相談に乗ってくれていたのに...」
そう悲し気に呟く誠子の姿に理仁も葛城宮も胸が痛む。特に幼少期から仲の良かった2人の姿を知る葛城宮はことさら胸が痛む様子だった。
「そうだな...兄さん達への悪意ある報道や私が海外訪問中にいかがわしい店に出入りしたといったありもしない週刊誌報道に傷付いていた君や文子はよくあの子の部屋で相談していたな...」
「健仁さんがイスラエルで自由にしているのに嫉妬して...それが収まったら今度はあの人のビジネスが受け入れられなくて...でも助けてもらって...頭の中がグチャグチャだよ...」
そう下を向いて呟く誠子。そんな彼女を葛城宮は優しく抱きしめる。華奢な彼の細い腕だが、誠子にとっては力強く安心できるものだった。
「確かにそうだね...私も彼には思う所はあるが、それでも助けられたのは事実だ。でもね...だからといって彼の全てを肯定する必要もないんじゃないかな。彼の振る舞いは皇室として受け入れ難い部分もあるしね」
「何かそう思う事でもあったの?あの人のイスラエルでの事業以外に」
理仁がそう尋ねると葛城宮は答える。
「ああ...そうだな、例えば去年の夏から今年の初め辺りだな。あの子がコメを投機の対象にして大儲けしていたんだ。それがコメの価格の高騰にも少なからず影響を与えていてね『食べ物で遊ぶな』と叱ったばかりなんだよ」
「それは...マジで反省してもらいたいですね...」
少し引きながら理仁は答える。
「ホント...流石に生活必需品の価格を徒に上げる様な真似は慎むべきだわ」
そう誠子も憤る。
その後、3人はアルバムを眺めていた。
そこへ紗栄子も現れる。
「あら?懐かしいわねそのアルバム。どうかしたの?」
紗栄子の問いに理仁が応える。
「ああ、昔のあの人がどんな人だったのか気になってね。それでちょっと見てたんだ。」
そう答えると紗栄子は優し気に微笑んだ。
「そうなのね...少しでもあの子に興味を持ってもらえて私も嬉しいわ」
「君も一緒に見ないか?せっかくだし」
「そうね、私も見させてもらおうかしら」
そう言って3人の輪に加わる紗栄子。
4人はそうして健仁の写真を発端に幼少期の思い出話に花を咲かせていた。
2人は宮邸に戻ると父の書斎へと向かう。
「お父さま、昔のあの人の写真ってある?ちょっと気になったから見たいな~って思ってさ」
理仁は健仁が皇族だった頃の写真がないか父の葛城宮維仁 親王に尋ねた。
「健仁の写真か…ここのアルバムにはいってるかな?」
そう言って彼は書斎の本棚の下の引き戸を開ける。
そこには年季の入ったアルバムが何冊も入っていた。
「君が生まれる前の誠子と文子と共に写ってるのがこれだな」
その後、彼は比較的新しいアルバムを取り出した。
「こっちは君も含めた4人で写ってる唯一の写真がある奴だ。」
葛城宮がそう言ってアルバムを開くと中には病室で撮られたと思しき1枚の写真があった。
ベビーベッドで眠る理仁を囲む様に健仁と文子、誠子が笑顔でピースサインを見せている。
「確かこの頃にはもうユダヤ教に改宗していたのよね…」
誠子はそう言って表情を曇らせる。
「そうだな...あの時の衝撃は今でも忘れられないよ...」
葛城宮も同じく表情を曇らせながらそう返答する。
彼の決断は18年が経過した今もなお皇室に暗い影を落としていた。
その後、葛城宮は古いアルバムを開く。
「これは誠子が赤ちゃんだった頃の写真だな」
そう言って葛城宮はアルバムの写真を指さす。そこには、赤ちゃん時代の誠子が当時3歳だった健仁の両足に両手を乗せて乗り上がっている写真と笑顔の文子の写真が載っていた。
「この頃から兄妹仲は良かったんだなって思っていたよ」
そう懐かしそうに告げる葛城宮。理仁は「昔見たお父さまの子供の頃の写真にそっくりだね」と感想を述べる。
「そうだな...あの子は生き写しと言えるくらい私にそっくりだからね」
体型がガッチリしている事と短めのペイオット(伸ばしたもみあげを巻いたユダヤ人に多い髪型)を巻いている事を除いて彼は葛城宮とほぼ瓜二つの容姿をしている。
そんな彼は皇族時代、特殊な環境で思い悩むことの多かった文子や誠子の相談によく乗っていた。
また幼い時子の遊び相手として当時の皇太子夫妻(現在の天皇皇后両陛下)の信頼も厚く皇室の未来として期待されていた。
皇室専門家の中には「健仁さんの離脱が無ければ皇室が現在直面する危機の殆どが当面の解決を見たのではないか」と述べる者もいる程だった。
それ程までに彼の存在は皇室にとっても、そして誠子にとっても非常に重要なものであった。
そして、ユダヤ教改宗という予期せず生じたイレギュラーは今も家族の関係、そして皇室の未来に影を落としている。
「昔は良く相談に乗ってくれていたのに...」
そう悲し気に呟く誠子の姿に理仁も葛城宮も胸が痛む。特に幼少期から仲の良かった2人の姿を知る葛城宮はことさら胸が痛む様子だった。
「そうだな...兄さん達への悪意ある報道や私が海外訪問中にいかがわしい店に出入りしたといったありもしない週刊誌報道に傷付いていた君や文子はよくあの子の部屋で相談していたな...」
「健仁さんがイスラエルで自由にしているのに嫉妬して...それが収まったら今度はあの人のビジネスが受け入れられなくて...でも助けてもらって...頭の中がグチャグチャだよ...」
そう下を向いて呟く誠子。そんな彼女を葛城宮は優しく抱きしめる。華奢な彼の細い腕だが、誠子にとっては力強く安心できるものだった。
「確かにそうだね...私も彼には思う所はあるが、それでも助けられたのは事実だ。でもね...だからといって彼の全てを肯定する必要もないんじゃないかな。彼の振る舞いは皇室として受け入れ難い部分もあるしね」
「何かそう思う事でもあったの?あの人のイスラエルでの事業以外に」
理仁がそう尋ねると葛城宮は答える。
「ああ...そうだな、例えば去年の夏から今年の初め辺りだな。あの子がコメを投機の対象にして大儲けしていたんだ。それがコメの価格の高騰にも少なからず影響を与えていてね『食べ物で遊ぶな』と叱ったばかりなんだよ」
「それは...マジで反省してもらいたいですね...」
少し引きながら理仁は答える。
「ホント...流石に生活必需品の価格を徒に上げる様な真似は慎むべきだわ」
そう誠子も憤る。
その後、3人はアルバムを眺めていた。
そこへ紗栄子も現れる。
「あら?懐かしいわねそのアルバム。どうかしたの?」
紗栄子の問いに理仁が応える。
「ああ、昔のあの人がどんな人だったのか気になってね。それでちょっと見てたんだ。」
そう答えると紗栄子は優し気に微笑んだ。
「そうなのね...少しでもあの子に興味を持ってもらえて私も嬉しいわ」
「君も一緒に見ないか?せっかくだし」
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4人はそうして健仁の写真を発端に幼少期の思い出話に花を咲かせていた。
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