不運なプリンスの闘い~未来の天皇は家族の危機に立ち向かう~

オーガスト

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本編

第15話 友情と愚者

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 英弘8(2026)年1月

 大学の学生食堂で徳川とくがわ佐喜子さきこと食事を取っていた理仁おさひと親王しんのう。いつもいる2人(近衛このえ智久ともひさ二条にじょう明子はるこ)は今日はアルバイトのシフトに入っており今はいなかった。

 彼が重圧を強いられる結果となった原因の裏側を知らぬ者はいなかったが大学の仲間たちは敢えてその話題に触れる事はなかった。

 理仁もそんな友人の配慮に感謝しつつ日々を過ごしていた。

 「あ、理仁君。私のアルバイトしてるお店で期間限定でフライドポテトのMサイズとLサイズが250円になるんだけど大学終わりに寄って行かない?」

 「そうなの?ちょっと寄ってみようかな」

 「多分智久君も明子ちゃんも働いているだろうし!」

 「そういえばあの2人が働いている場所って見た事なかったな。行こうか」

 「うん!」

 そんな2人の会話を近くで盗み聞きしている不届き者がいた。

 ◇◇◇

 週刊誌のカメラマンは久々に理仁を尾行していた。大学の同級生と名乗る匿名のタレこみがあったからだ。昨年の報復からある程度の時間が経ち、特に被害が小さかった雑誌は無人と化した皇室ゴシップ市場を独占すべく動き始めていた。

 しかし...

 「ちょっとそこのお兄さん。何を撮っていたのかな?」

 カメラマンに声を掛けた1人の男性。欧米風の見た目だがその日本語はネイティブと遜色がない程に流暢だ。

 彼は元アメリカ軍特殊部隊の隊員であり、健仁が経営する民間軍事会社の非公式・非公開の破壊工作部門-ヘブライ語で『影』を意味する『ツェル』と呼ばれている-に所属している。彼は主に皇室関係の監視部隊の1人であり、理仁を影日向から見守っていた。その隠密性は皇宮護衛官からも気づかれない程である。

 「え?」

 カメラマンは最後まで言葉を言いきることができなかった。彼は一瞬で頸椎を折られ息絶えたからだ。

 「さてと...舐めたクソガキの処分に掛かるとしますか」

 男はそう言うとタレこみを行った学生の家へと向かった。

 ◇◇◇

 「おいおいマジかよ...タレこみだけで3万も貰えたんだけど...!」

 たまたま理仁と佐喜子の会話を聞いていた学生は銀行アプリの画面を見ながら喜んでいた。学生として色々と遊びまわっていた結果実家からの仕送りと奨学金では生活がカツカツとなった彼はあろうことか理仁の情報を週刊誌に売ることで遊ぶ金を手に入れようとしたのだ。

 それはつい最近までクラウドソーシングサイトで葛城宮家を誹謗中傷して小遣い稼ぎをしていた者を彷彿とさせる行為であった。

 「ショート動画バイトもやろうか迷ったんだけどあれをやって兵隊を差し向けられても困るからな...」

 そんなことを言っているとインターホンがピンポーンと鳴った。

 「通販で買ったゲーム機が届いたのか」

 そう言って彼は玄関を開ける。その後、ジタバタと争うような音としばらくしてから車が出発する音が聞こえた。

 その後、彼の姿をキャンパスで目撃した者はいないという。その後、アフリカの鉱山で犯罪者や重度債務者が作業に従事させられる危険エリアに東洋風の見た目の若い工員が加わったが彼の正体は知る由もない。

 ◇◇◇

 「いらっしゃいませ~...っておっ...理仁親王殿下」

 いつも通り『おっさん』と言いかけたが他のスタッフや客の手前即座に敬称で呼ぶ明子。

 「こんにちは、制服似合ってるね」

 理仁はそんな彼女にそう声を掛ける。その直後彼の隣の空気が少し...いや急激に冷たくなった。

 「あれ?佐喜子ちゃんどうかした?」

 「別に~」

 そう言って視線を逸らす佐喜子。そんな彼女を見て明子はニヤニヤと笑みを浮かべる。

 「乙女心を分かってないね~宮様は。あんなに美人なお姉様がいらっしゃるというのに」

 「からかうなよ」

 明子のからかいにそう反論する理仁。

 彼は佐喜子と共にポテトを注文すると客席へと向かった。

 ◇

 「佐喜子ちゃんどうかした?何か機嫌悪いみたいだけど...」

 そう尋ねる理仁を彼女はジド目で睨みつつ「別に機嫌悪くないもん」と返す。

 「もしかして...明子の制服姿を揉めたのに嫉妬してる?」

 その直後彼女の顔が真っ赤になった。

 「えっ!?いや...そんな訳...」

 そこまで言って押し黙る佐喜子。

 「うん...ちょっとだけ...」

 そう言ってもじもじする佐喜子を見て(可愛いなぁ...)と思う理仁。

 「そっか...ごめんね。そういえば佐喜子ちゃんの制服姿って僕見た事ないかも」

 「そうだよね!またいつか見に来てよ!」

 「分かった。約束する」

 そう言って小指を差し出す理仁。

 「うん!」

 佐喜子も指を絡める。こうして2人は仲直りすることとなった。
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