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本編
第19話 再会と激怒
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英弘8(2026)年7月
理仁親王は予定よりも少し早めに帰省し、兄の健仁の家族との顔合わせを終えた。
その後は極力部屋に引きこもり出ない予定である。兄一家と家族の夕食も「東京都内で高校の友達と会う」という名目で避けていた。
健仁の家族と顔を合わせた直後だった。
「ただいま~」
健仁が葛城宮と誠子と共に帰宅したのだ。その瞬間、少し空気が凍り付いた。
「お~理仁じゃん!去年の11月以来か!元気にしてたか?」
健仁は笑顔で声を掛ける。
「あ、お母さま。少し急用を思い出しちゃったから...」
そう言って部屋を出ようとする理仁の腕を健仁は掴んだ。
「お前とは面と向かって話すのは初めてだな。どうだ?そこのベンチで話さないか?」
「あなたと話す事等ありませんよ。」
「そうつれない事を言いなさんな。兄弟で話そうじゃないか」
「...」
少し苛立ちを覚える理仁。誠子が思わず介入しようとするのを葛城宮が制する。
「お父さま...!流石に健仁さんと理仁を合わせるのはヤバいですよ...」
「そうは言ってもアイツは1人で抱え込む癖があるからな。良い感じに吐き出させる良い機会かもしれん」
「でも...!」
「大丈夫だ。健仁は身内には優しいからな。」
「...」
誠子は押し黙るしかなかった。
「理仁、この機会だし話してきたらどうだ。思う所はあるにせよ、世話になった恩もあるんだし」
「...分かったよ、お父さま。健仁さん、行きましょう」
渋々と言った感じでリビングを後にする理仁。健仁もそれに続く。
理仁は約20年の人生の中で初めて皇室を離れ、皇位継承の全てを自身に押し付けた元凶と対峙することとなった。
◇◇◇
葛城宮邸から少し歩いた場所にあるベンチで健仁と理仁の2人は座っていた。
「さて...お前、随分と色々溜め込んでるみたいだな。この機会だし吐き出したらどうだ?」
健仁は気遣うような声色で理仁に声を掛ける。
(...は?)
理仁は一瞬何を言われたのか理解できなかった。色々と溜め込んでいるのは目の前にいる兄が皇室を離れたからである。
自分に全てを押し付けて自由を謳歌しているくせにどの口で「吐き出せ」と言うのだろうか。
「誰のせいで溜め込んでいると思ってんだよ...」
彼は健仁の言葉を前にそう呟く事しかできなかった。
「...ん?」
健仁の言葉に彼は声を荒げる。
「誰のせいで溜め込んでると思ってんだよ!このクソ野郎が!」
理仁はそう言って健仁に怒鳴り付ける。健仁は驚いて目を見開いた。
「まあまあ落ち着けよ、どうした急に...そんなしんどいならその原因を俺が...」
言い終わる前に理仁が被せる様に怒声を挙げる。
「だからテメェが一番の原因なんだよ!ユダヤ教に改宗するとか訳分かんねえ選択したせいでどんだけウチが苦労したと思ってんだ!大体最近までメディアやネットでおもちゃみてーに扱われてたのも元はと言えばお前が皇室離れた挙句イスラエルでメチャクチャやったからだろうが!」
そもそもこんな気遣う様な口調で話し掛けられた所で元はと言えば健仁が皇室を離れた事が彼が色々と溜め込むことになった原因である。
「しかもアレ全部中国が裏で糸を引いてたんだってな!?中国人に言いくるめられて改宗するとか間抜け過ぎるだろうが!誰がその尻拭いしてやってると思ってんだよ!その挙句に「溜め込んだものを吐き出せ」だと?ふざけるのもいい加減にしろ!」
理仁は自分でも内心驚く程健仁に怒りをぶつけていた。理仁の立場は「次世代唯一の皇位継承資格者」というもの。彼が妃を迎え、息子が産まれなければ神武天皇以来約2,686年に渡って紡がれてきた皇統が断絶するという状況にある。
更にかつての様に側室を設けることもできなければ藩屏となる華族もなく、万が一のスペアとなる宮家も女性ばかりで同年代や年の近い男系男子の皇族もいない。
旧世襲親王家の男系男子孫も長年の皇室バッシングの悪質さから復帰を打診されても辞退するか「子供が小さいので成年まで待って欲しい」と保留にするばかり。
彼の置かれた立場はお世辞抜きに皇室史上最も過酷と言えた。
そして、そうなったのは健仁がユダヤ教に改宗しイスラエルへと移住したからである。
さらに彼の行動は家族へのバッシングの遠因となっていた。
健仁による圧倒的な暴力によって捻じ伏せられたとはいえ家族が負ったダメージはとんでもないものであった。
「まあまあ落ち着けって...何をそんなに怒ってるんだよ...そんなに悪いことしたか?俺はユダヤ教に惹かれたから選んだんだ。まあ、中国の掌で転がされてたのはショックだったけどな。」
健仁はそう言って理仁を宥めようとする。
「お前が果たすはずだった役割を放棄して皇室から離れたからだろうが!何が「同じような悩みを共有できる存在」だよ!そんなもん俺にはいねーんだよ!俺しかいないんだから!」
文子と誠子は皇位継承資格を持たない内親王であり、姉妹である事から同じ境遇と言えた。しかし、皇位継承資格を持つ唯一の若い世代の親王である理仁にそんな存在はいない。
「そう気負うなよ。あんまそういうストレスは良くねーぞ。リラックス、リラックス」
「ふざけんな!気負わずにいられるわけがねえだろうが!」
健仁の言動は理仁を苛立たせるばかりだった。
自分1人に皇室の存続が掛かっている状況下で気負わずにいられるわけがない。
「大体本来はお前が皇位を継いで俺がそれを支えるはずだっただろうが!しかもお前には息子が4人...っ!?」
理仁は健仁に対し怨嗟の声をぶつける。しかし、言葉を続けるより先に健仁の腕が伸びた。その先は理仁の首を掴んでいる。
「テメェもそれを言うのか。だから俺の子供は6人だって何回言えば分かるんだよ。当たり前みたいに娘を除外しやがって...テメェも娘を透明化しやがるのか...」
そう言って乱暴に離す健仁。理仁は一旦咳きこんでから息を整える。
「別にそんなつもりはないよ...でも、少なくともアンタがここにいれば次の世代には4人の皇位継承資格者がいた。そうだったら...今ほどヤバい状況じゃなかったはずだったのに...俺が全部背負わされることもなかったのに...」
そう言って健仁を睨む理仁。
「なるほどな。お前がキレたのはそれが理由だったのか。まあ、皇室の跡継ぎなんて碌なもんじゃねえよな。自分より馬鹿な人間の顔色を伺いながら国が決めた法律や政令に名前書いて判子押すだけのつまらない人生だし」
健仁はそう理仁に言葉を掛ける。それは、彼の人生そのものに対する侮辱としか思えなかった。
「そのつまらない人生がなければ...国は機能不全に陥るだろ...」
「まあ正当性はなくなるわな。機能自体はなくならないだろうけど」
「そうなったら国民生活にも多大な影響が出る」
「それで何か問題あるか?舐め腐った一部のカスと大多数の自分とは関係ないから傍観してる役立たず共が苦しむだけだろ?」
「それでも彼らに寄り添い、彼らの幸福を祈り、苦楽を共にするのが皇室の役割だから...」
「でも俺が動くまで誹謗中傷酷かっただろ?アレがお前の寄り添うべき国民なのか?本当に祈りを捧げるに値する存在なのか?」
健仁はそう尋ねる。彼に理仁を馬鹿にする意図はない。ただ、健仁が皇室の役割に対して抱いた疑問を口にしているだけだ。
「国民にどれだけ寄り添ったとしても、ネットのバカみたいな言論を真に受けてお前や家族を攻撃した。文子は日本に居られなくなり、誠子も長期の静養を余儀なくされた。伯母さんだって未だに体調が不安定で公務の日程調整も難しい状態だ。爺さんと婆さん(上皇と上皇后。2人の祖父母に当たる)だって改元と同時に誹謗中傷の的だぜ。
何度裏切られた?
何度傷付けられた?
何度国民は皇室の善意に甘えていた?
でもそれは彼らだけの原因ではない。皇室が弱いからだよ。
私有財産を持たず
藩屏となる華族もなく
宮家も女子ばかりで将来の断絶が確定している
その上世論の気まぐれに振り回される。この上なく脆弱な存在だ。
誹謗中傷も俺が潰すまで酷い有様だった。あれ、下手すりゃいつか死人が出てたぜ。」
健仁はそう理仁に声を掛ける。
それは彼の人生を否定するに等しい発言だった。
「俺が小さい頃は伯父さんとこが誹謗中傷されていて、反対に俺達が持ち上げられていた。改元したら逆転したがな。あの掌返しっぷりの気持ち悪さは忘れられないよ。だから理仁、俺はお前には感謝しているんだ。」
そう言って彼の肩に手を掛ける。
「こんな無意味な人生を肩代わりしてくれてありがとう。日本国民の幸せの為に紛い物の神に頭を下げ続ける人生を代わりに送ってくれて。」
それは理仁にとって自分の全てに対する侮辱だった。
しかし、それでも彼は言葉を紡ぐ。
「お前は...これまで家族に迷惑を掛けたとか...皇室を離れた事に対する後ろめたさとか罪悪感とかあんのか?」
「ないな。皇室を離れてむしろ良かったって思ってるよ。国民はクソだし、何の刺激もない退屈な場所だからな」
「でも俺達の生活は国民に支えられている...1億人以上いれば多少変なのはいるにしても感謝とかしてないのか?」
「感謝?むしろ怒り心頭だよ。シケた特権で俺と言う才能溢れる人間を15年も縛りやがって」
「お前のせいでお前が果たすはずだった役割を背負ってる俺にはどう思ってんだよ」
「あ~。大変そうだな~ごめんね~って感じ。」
「...そうかよ」
理仁はそう言うと拳を握り、健仁の顔面を思いっきり殴打した。
「痛ぇな...何すんだよ」
鼻血が出る鼻を抑えながらそう言う健仁。しかし、そんな彼に対し理仁は容赦なく拳を振るっていた。
何とか手首を掴んでギリギリで止めている健仁。
理仁にとってこの際自分に皇室の全てを押し付けた事も、そんな自分の人生を公然と侮辱した事もどうでも良いことだった。
ただ、自分が両親と同行したり1人で行った公務を通じて交流した人々を「クソ」と切り捨てた事がどうしても我慢ならなかったのだ。
その時だった。
「何をしているんだ!止めなさい!」
葛城宮の怒号が響いた。
理仁親王は予定よりも少し早めに帰省し、兄の健仁の家族との顔合わせを終えた。
その後は極力部屋に引きこもり出ない予定である。兄一家と家族の夕食も「東京都内で高校の友達と会う」という名目で避けていた。
健仁の家族と顔を合わせた直後だった。
「ただいま~」
健仁が葛城宮と誠子と共に帰宅したのだ。その瞬間、少し空気が凍り付いた。
「お~理仁じゃん!去年の11月以来か!元気にしてたか?」
健仁は笑顔で声を掛ける。
「あ、お母さま。少し急用を思い出しちゃったから...」
そう言って部屋を出ようとする理仁の腕を健仁は掴んだ。
「お前とは面と向かって話すのは初めてだな。どうだ?そこのベンチで話さないか?」
「あなたと話す事等ありませんよ。」
「そうつれない事を言いなさんな。兄弟で話そうじゃないか」
「...」
少し苛立ちを覚える理仁。誠子が思わず介入しようとするのを葛城宮が制する。
「お父さま...!流石に健仁さんと理仁を合わせるのはヤバいですよ...」
「そうは言ってもアイツは1人で抱え込む癖があるからな。良い感じに吐き出させる良い機会かもしれん」
「でも...!」
「大丈夫だ。健仁は身内には優しいからな。」
「...」
誠子は押し黙るしかなかった。
「理仁、この機会だし話してきたらどうだ。思う所はあるにせよ、世話になった恩もあるんだし」
「...分かったよ、お父さま。健仁さん、行きましょう」
渋々と言った感じでリビングを後にする理仁。健仁もそれに続く。
理仁は約20年の人生の中で初めて皇室を離れ、皇位継承の全てを自身に押し付けた元凶と対峙することとなった。
◇◇◇
葛城宮邸から少し歩いた場所にあるベンチで健仁と理仁の2人は座っていた。
「さて...お前、随分と色々溜め込んでるみたいだな。この機会だし吐き出したらどうだ?」
健仁は気遣うような声色で理仁に声を掛ける。
(...は?)
理仁は一瞬何を言われたのか理解できなかった。色々と溜め込んでいるのは目の前にいる兄が皇室を離れたからである。
自分に全てを押し付けて自由を謳歌しているくせにどの口で「吐き出せ」と言うのだろうか。
「誰のせいで溜め込んでいると思ってんだよ...」
彼は健仁の言葉を前にそう呟く事しかできなかった。
「...ん?」
健仁の言葉に彼は声を荒げる。
「誰のせいで溜め込んでると思ってんだよ!このクソ野郎が!」
理仁はそう言って健仁に怒鳴り付ける。健仁は驚いて目を見開いた。
「まあまあ落ち着けよ、どうした急に...そんなしんどいならその原因を俺が...」
言い終わる前に理仁が被せる様に怒声を挙げる。
「だからテメェが一番の原因なんだよ!ユダヤ教に改宗するとか訳分かんねえ選択したせいでどんだけウチが苦労したと思ってんだ!大体最近までメディアやネットでおもちゃみてーに扱われてたのも元はと言えばお前が皇室離れた挙句イスラエルでメチャクチャやったからだろうが!」
そもそもこんな気遣う様な口調で話し掛けられた所で元はと言えば健仁が皇室を離れた事が彼が色々と溜め込むことになった原因である。
「しかもアレ全部中国が裏で糸を引いてたんだってな!?中国人に言いくるめられて改宗するとか間抜け過ぎるだろうが!誰がその尻拭いしてやってると思ってんだよ!その挙句に「溜め込んだものを吐き出せ」だと?ふざけるのもいい加減にしろ!」
理仁は自分でも内心驚く程健仁に怒りをぶつけていた。理仁の立場は「次世代唯一の皇位継承資格者」というもの。彼が妃を迎え、息子が産まれなければ神武天皇以来約2,686年に渡って紡がれてきた皇統が断絶するという状況にある。
更にかつての様に側室を設けることもできなければ藩屏となる華族もなく、万が一のスペアとなる宮家も女性ばかりで同年代や年の近い男系男子の皇族もいない。
旧世襲親王家の男系男子孫も長年の皇室バッシングの悪質さから復帰を打診されても辞退するか「子供が小さいので成年まで待って欲しい」と保留にするばかり。
彼の置かれた立場はお世辞抜きに皇室史上最も過酷と言えた。
そして、そうなったのは健仁がユダヤ教に改宗しイスラエルへと移住したからである。
さらに彼の行動は家族へのバッシングの遠因となっていた。
健仁による圧倒的な暴力によって捻じ伏せられたとはいえ家族が負ったダメージはとんでもないものであった。
「まあまあ落ち着けって...何をそんなに怒ってるんだよ...そんなに悪いことしたか?俺はユダヤ教に惹かれたから選んだんだ。まあ、中国の掌で転がされてたのはショックだったけどな。」
健仁はそう言って理仁を宥めようとする。
「お前が果たすはずだった役割を放棄して皇室から離れたからだろうが!何が「同じような悩みを共有できる存在」だよ!そんなもん俺にはいねーんだよ!俺しかいないんだから!」
文子と誠子は皇位継承資格を持たない内親王であり、姉妹である事から同じ境遇と言えた。しかし、皇位継承資格を持つ唯一の若い世代の親王である理仁にそんな存在はいない。
「そう気負うなよ。あんまそういうストレスは良くねーぞ。リラックス、リラックス」
「ふざけんな!気負わずにいられるわけがねえだろうが!」
健仁の言動は理仁を苛立たせるばかりだった。
自分1人に皇室の存続が掛かっている状況下で気負わずにいられるわけがない。
「大体本来はお前が皇位を継いで俺がそれを支えるはずだっただろうが!しかもお前には息子が4人...っ!?」
理仁は健仁に対し怨嗟の声をぶつける。しかし、言葉を続けるより先に健仁の腕が伸びた。その先は理仁の首を掴んでいる。
「テメェもそれを言うのか。だから俺の子供は6人だって何回言えば分かるんだよ。当たり前みたいに娘を除外しやがって...テメェも娘を透明化しやがるのか...」
そう言って乱暴に離す健仁。理仁は一旦咳きこんでから息を整える。
「別にそんなつもりはないよ...でも、少なくともアンタがここにいれば次の世代には4人の皇位継承資格者がいた。そうだったら...今ほどヤバい状況じゃなかったはずだったのに...俺が全部背負わされることもなかったのに...」
そう言って健仁を睨む理仁。
「なるほどな。お前がキレたのはそれが理由だったのか。まあ、皇室の跡継ぎなんて碌なもんじゃねえよな。自分より馬鹿な人間の顔色を伺いながら国が決めた法律や政令に名前書いて判子押すだけのつまらない人生だし」
健仁はそう理仁に言葉を掛ける。それは、彼の人生そのものに対する侮辱としか思えなかった。
「そのつまらない人生がなければ...国は機能不全に陥るだろ...」
「まあ正当性はなくなるわな。機能自体はなくならないだろうけど」
「そうなったら国民生活にも多大な影響が出る」
「それで何か問題あるか?舐め腐った一部のカスと大多数の自分とは関係ないから傍観してる役立たず共が苦しむだけだろ?」
「それでも彼らに寄り添い、彼らの幸福を祈り、苦楽を共にするのが皇室の役割だから...」
「でも俺が動くまで誹謗中傷酷かっただろ?アレがお前の寄り添うべき国民なのか?本当に祈りを捧げるに値する存在なのか?」
健仁はそう尋ねる。彼に理仁を馬鹿にする意図はない。ただ、健仁が皇室の役割に対して抱いた疑問を口にしているだけだ。
「国民にどれだけ寄り添ったとしても、ネットのバカみたいな言論を真に受けてお前や家族を攻撃した。文子は日本に居られなくなり、誠子も長期の静養を余儀なくされた。伯母さんだって未だに体調が不安定で公務の日程調整も難しい状態だ。爺さんと婆さん(上皇と上皇后。2人の祖父母に当たる)だって改元と同時に誹謗中傷の的だぜ。
何度裏切られた?
何度傷付けられた?
何度国民は皇室の善意に甘えていた?
でもそれは彼らだけの原因ではない。皇室が弱いからだよ。
私有財産を持たず
藩屏となる華族もなく
宮家も女子ばかりで将来の断絶が確定している
その上世論の気まぐれに振り回される。この上なく脆弱な存在だ。
誹謗中傷も俺が潰すまで酷い有様だった。あれ、下手すりゃいつか死人が出てたぜ。」
健仁はそう理仁に声を掛ける。
それは彼の人生を否定するに等しい発言だった。
「俺が小さい頃は伯父さんとこが誹謗中傷されていて、反対に俺達が持ち上げられていた。改元したら逆転したがな。あの掌返しっぷりの気持ち悪さは忘れられないよ。だから理仁、俺はお前には感謝しているんだ。」
そう言って彼の肩に手を掛ける。
「こんな無意味な人生を肩代わりしてくれてありがとう。日本国民の幸せの為に紛い物の神に頭を下げ続ける人生を代わりに送ってくれて。」
それは理仁にとって自分の全てに対する侮辱だった。
しかし、それでも彼は言葉を紡ぐ。
「お前は...これまで家族に迷惑を掛けたとか...皇室を離れた事に対する後ろめたさとか罪悪感とかあんのか?」
「ないな。皇室を離れてむしろ良かったって思ってるよ。国民はクソだし、何の刺激もない退屈な場所だからな」
「でも俺達の生活は国民に支えられている...1億人以上いれば多少変なのはいるにしても感謝とかしてないのか?」
「感謝?むしろ怒り心頭だよ。シケた特権で俺と言う才能溢れる人間を15年も縛りやがって」
「お前のせいでお前が果たすはずだった役割を背負ってる俺にはどう思ってんだよ」
「あ~。大変そうだな~ごめんね~って感じ。」
「...そうかよ」
理仁はそう言うと拳を握り、健仁の顔面を思いっきり殴打した。
「痛ぇな...何すんだよ」
鼻血が出る鼻を抑えながらそう言う健仁。しかし、そんな彼に対し理仁は容赦なく拳を振るっていた。
何とか手首を掴んでギリギリで止めている健仁。
理仁にとってこの際自分に皇室の全てを押し付けた事も、そんな自分の人生を公然と侮辱した事もどうでも良いことだった。
ただ、自分が両親と同行したり1人で行った公務を通じて交流した人々を「クソ」と切り捨てた事がどうしても我慢ならなかったのだ。
その時だった。
「何をしているんだ!止めなさい!」
葛城宮の怒号が響いた。
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