無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ

文字の大きさ
13 / 14

十三

しおりを挟む
ギルドから帰りながら、俺は昼飯時に聞いた先輩の話のヤバい部分を思い出していた。

先輩はこんなことを語ってくれたのだった。

「…ここの商業ギルドの今後の方針は、

可能な限り、帳簿や書面の誤りの指摘や整合性の確認を省く。

そういう方向へ進む方針らしいぞ。

一つには、その仕事をしなくなる分、人が少なくてすみ、人件費は安くなる。

今までも人を安月給で使い潰す方針だったが、こうするとさらに人件費を大幅に削ることができるからな。

もう一つは、これがメインの目的なんだが、

裏金のある金持ち連中からの仕事を得るため、
そういう方針にするらしい。

薄暗い商売をしている連中は、そもそも国からは目をつけられている。

そのため、商業ギルドのような外部の機関に、帳簿や書類を預け、監査をしてもらったという体裁を取るんだ。

なぜなら、国の方は、監査機関が入っているのならと、調査に出向く回数が減るからだ。

その間、連中は国に対し何かしらの隠蔽工作をする時間ができるという訳だ。

それでな、その客層のギルド側への要求だが…

帳簿や書類はギルドに預け形だけの監査は受けるが、妙な部分を見つけても指摘しないでくれ、ということらしいぞ。

追求されると困ることだらけだから、そう要求してくるんだろうな。

これは真っ当な商業ギルドなら、はなっから断る話だ。

国側にバレたら、監査する商業ギルド側は、ただではすまないからな。

ただ、ここの商業ギルドは、以前からその客層の仕事をやりたがっていた。

金払いがかなりいいらしいんだ。彼らはな。

そして、そういう追求してはいけない部分がある仕事を引き受けるためには、

数字の合わなさを指摘するスタッフは邪魔でしかない。

むしろ、全くものがわからない、変かどうか考える頭がないスタッフの方が都合がいい。

ここの商業ギルドの上層部は、そう考えるようになったらしい。

そして不当な監査をした件で国から咎めを受けた場合には、

上の連中は、書類をじかに扱っているスタッフ、つまりお前たちのせいだとして、自分らは責任逃れするつもりらしいんだ。

お前がずっと残っていたら、その時責任をとらされるのは、まず間違いないだろうな。

それから新しく入ったナジル。

ナジルは物事の良し悪しがよくわからないのをいいことに、切り捨て要員として雇われたんじゃないかなと思う。

全くとんでもないところだな。

まあ、ここの上の連中、いつまでも無事ではない。

バトー達のことを告発しようとしている動きがある。

もしそうなったらこの商業ギルドは営業停止、免許取り上げの上に、
関係していた職員もろとも逮捕と罰則金だ。

他の者への見せしめもあるから、

罰則金や拘束期間は重いものになると思うぞ。」

だから早く辞めておけ!そう彼は忠告してくれていたのだった。

バトー、俺が仕事の内容について、実はわかっておりませんとしらを切った途端、積極的に続けてこちらを雇おうとする顔になっていた。

ナジルと同様、俺を切り捨て要員として使えると思ったのかもしれない。

俺は引き継ぎせずにすぐ辞めたかったから、

実は何もわからないから何もできないですということにしたつもりだったんだが…

そもそもナジルに引継ぐことは無理だしな。

ナジルに完全に引継ぎが終わってから辞めろと言われる場合を想像し、俺は背筋が寒くなった。

…まあ、あまり引き留められず、すぐに辞めることができたのは助かった。

帳簿や資料を今後見ないようにするという話は、先輩から聞いた時点では信じられない気持ちが残っていたのだが、

バトーの言動を実際に目の当たりにすると、間違いなかったようだ。

ナジル…残していくことになったが、あいつは俺の言うことなんか聞く耳持たないから、仕方ないな。

…話しても、内容を理解しなさそうだしな。

逆に、レイオ先輩が俺の出世を邪魔してくる!と怒り狂うかもしれないな…

物差しを振り回しながら。

ため息をつきながら、俺は帰り道を急いだ。 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

団長サマの幼馴染が聖女の座をよこせというので譲ってあげました

毒島醜女
ファンタジー
※某ちゃんねる風創作 『魔力掲示板』 特定の魔法陣を描けば老若男女、貧富の差関係なくアクセスできる掲示板。ビジネスの情報交換、政治の議論、それだけでなく世間話のようなフランクなものまで存在する。 平民レベルの微力な魔力でも打ち込めるものから、貴族クラスの魔力を有するものしか開けないものから多種多様である。勿論そういった身分に関わらずに交流できる掲示板もある。 今日もまた、掲示板は悲喜こもごもに賑わっていた――

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました

ほーみ
恋愛
 その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。 「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」  そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。 「……は?」  まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。

妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。  マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

処理中です...