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第一章
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クガヤはソワソワした顔で食堂のテーブルに座っていた。
ヤトルはこまった顔でその隣に座っていた。
現在村の宿屋の食堂で食べようとしているところだった。
クガヤがソワソワしている理由は、同じテーブルで食事をしているサタヴァの周りに、若い女の子がくっついてきたからだった。それも三人も。
女の子たちは村に若い男が少なかったせいもあり積極的に話しかけに来ていたのだ。
「ねぇねぇところでえ、あなたたちはもう、恋人とか奥さんとかはいるのお?」という問いかけに、
ヤトルは「僕は奥さんと子供います」と答え、クガヤが「俺は独身です!彼女はぜんぜんいません!」と強く主張している中、
「あなたは?ねえあなたは?」と、なぜか無言のままのサタヴァが独身か彼女がいるかを聞きだしたがったのだった。
サタヴァは顔立ちはまあまあ整ったほうではあったが、別に人目を引くほどの美男子というわけではなかった。
特徴的なのは目が丸く大きいのだが、時々その目に見すえられると、なぜか落ち着かない気分にさせられた。
例えて言うなら、切り立った崖下をのぞいている時のような、あるいは夜に沼地の暗い水面をついついずっと見てしまうような感じである。
それに加えて、一種、精悍な風貌であった。
よく体を鍛えていれば、野性味は自然と備わってくるものであるがそれに近い感じだ。
この神秘的で精悍というあたりが、妙に女性達の気を惹いたのかもしれなかった。
サタヴァが決まった相手がいないことを口に出すと、女の子たちは一人ずつサタヴァの右と左の隣に座り、あぶれた女の子が隣のテーブルの椅子を引っ張りサタヴァの背中すぐ近くに座った。
クガヤが「うわあ、やっこさん、マジか」と小声でヤトルに囁いた。「なんかすごい光景ですよね」ヤトルも囁きかえした。
「予想だにしなかった光景を見ている」クガヤはブツブツ言った。「本当に予想外で混乱した。状況を確認するためにあの間に挟まってくる!」
「それ勇者だけどいま勇者にならなくていいと思いますよ。」ヤトルも言う。「なんかもう静かに観察したほうが良さそう。久々に普通の食事だから、食べましょうよ。」
食事が運ばれてきたのでクガヤとヤトルは二人でそれをつついた。
サタヴァがすこし自分も食べようとしたら、右と左の女の子が、「取り分けまーす」とサタヴァの皿に料理をとりわけた。
「それでぇ各地歩いてるんですか兵隊さあん」
「そうそう、俺が隊長なんだ」
「隊長さあん!」他の女の子が声を揃える。「すご~い!かっこいい!」
サタヴァはこれまで無口なクールさを保っていたのだが、さすがに我慢しきれなかったのかニコッとなりデレデレした。
クガヤはそのやりとりを見ながらいちいち「うわっ」とか「うへっ」とか小さい声で反応していたが、ヤトルはもう傍観することに決めたらしく食事に集中した。
クガヤが立ち上がってサタヴァ右隣りにいる女の子のそばへ行ったので、女の子三人はクガヤを見た。
クガヤは言った。
「信じられますか?お嬢さん方。
あなたらが話しているこの男、野宿多くて滅多に風呂入らないようなやつなんですよ?
洗濯もあんまできないような生活してるんですよ?こいつ。
その~この男のどこがよろしいんでしょうか。後学のため参考にお話聞きたい…」
背後でヤトルがこいつやっちまったぜ的な顔をしているのが見なくてもわかったが、クガヤはどうにも止められなかった。
「ウソ~、大変じゃーん!宿にお風呂あるから案内したげようか?」
「お仕事大変なのね~!洗濯、私得意だから!」「私も!お手伝いできるわよ!」
女の子たちは、自分の方がよく世話が焼けると言わんばかりにアピールしだした。
食事は進み、酒がまわるにつれて、クガヤは「まさかお待ち帰りすることにならんよな?このうち誰かとかを。
まさか全員とかではないだろうなあ。
本人が何かしたわけでもないのにこうなるの凄すぎる。もはや伝説の領域だろこれ」とかつぶやきはじめ、ヤトルはもうどうまとめたらいいのか分からなくなって黙っていた。
しかし事態は危惧したようにはならなかった。
女の子が複数だったため、お互いに牽制しあい、誰とも仲が進展しない結果となったのだ。
最後に「隊長さあん、またあしたね♡」と手をふりながら女の子たちは帰っていった。
ニコッと手を振り返しているサタヴァに、「隊長さあんに話がある、いやお話があります、このまま明日まで飲みにつきあって話聞いてください、いやぜひお話きかせてください!女の子と仲良くする方法とかそのへんとか」クガヤは絡みだした。
ヤトルが必死に、宿の風呂が終わってしまうので先に入ろう、また食堂も終わってしまうからここでは無理ですよと主張したので、一同は先に風呂に入り、あとから部屋で話すことになった。予算の関係で共同で一部屋取ってあるのだ。
ヤトルはこまった顔でその隣に座っていた。
現在村の宿屋の食堂で食べようとしているところだった。
クガヤがソワソワしている理由は、同じテーブルで食事をしているサタヴァの周りに、若い女の子がくっついてきたからだった。それも三人も。
女の子たちは村に若い男が少なかったせいもあり積極的に話しかけに来ていたのだ。
「ねぇねぇところでえ、あなたたちはもう、恋人とか奥さんとかはいるのお?」という問いかけに、
ヤトルは「僕は奥さんと子供います」と答え、クガヤが「俺は独身です!彼女はぜんぜんいません!」と強く主張している中、
「あなたは?ねえあなたは?」と、なぜか無言のままのサタヴァが独身か彼女がいるかを聞きだしたがったのだった。
サタヴァは顔立ちはまあまあ整ったほうではあったが、別に人目を引くほどの美男子というわけではなかった。
特徴的なのは目が丸く大きいのだが、時々その目に見すえられると、なぜか落ち着かない気分にさせられた。
例えて言うなら、切り立った崖下をのぞいている時のような、あるいは夜に沼地の暗い水面をついついずっと見てしまうような感じである。
それに加えて、一種、精悍な風貌であった。
よく体を鍛えていれば、野性味は自然と備わってくるものであるがそれに近い感じだ。
この神秘的で精悍というあたりが、妙に女性達の気を惹いたのかもしれなかった。
サタヴァが決まった相手がいないことを口に出すと、女の子たちは一人ずつサタヴァの右と左の隣に座り、あぶれた女の子が隣のテーブルの椅子を引っ張りサタヴァの背中すぐ近くに座った。
クガヤが「うわあ、やっこさん、マジか」と小声でヤトルに囁いた。「なんかすごい光景ですよね」ヤトルも囁きかえした。
「予想だにしなかった光景を見ている」クガヤはブツブツ言った。「本当に予想外で混乱した。状況を確認するためにあの間に挟まってくる!」
「それ勇者だけどいま勇者にならなくていいと思いますよ。」ヤトルも言う。「なんかもう静かに観察したほうが良さそう。久々に普通の食事だから、食べましょうよ。」
食事が運ばれてきたのでクガヤとヤトルは二人でそれをつついた。
サタヴァがすこし自分も食べようとしたら、右と左の女の子が、「取り分けまーす」とサタヴァの皿に料理をとりわけた。
「それでぇ各地歩いてるんですか兵隊さあん」
「そうそう、俺が隊長なんだ」
「隊長さあん!」他の女の子が声を揃える。「すご~い!かっこいい!」
サタヴァはこれまで無口なクールさを保っていたのだが、さすがに我慢しきれなかったのかニコッとなりデレデレした。
クガヤはそのやりとりを見ながらいちいち「うわっ」とか「うへっ」とか小さい声で反応していたが、ヤトルはもう傍観することに決めたらしく食事に集中した。
クガヤが立ち上がってサタヴァ右隣りにいる女の子のそばへ行ったので、女の子三人はクガヤを見た。
クガヤは言った。
「信じられますか?お嬢さん方。
あなたらが話しているこの男、野宿多くて滅多に風呂入らないようなやつなんですよ?
洗濯もあんまできないような生活してるんですよ?こいつ。
その~この男のどこがよろしいんでしょうか。後学のため参考にお話聞きたい…」
背後でヤトルがこいつやっちまったぜ的な顔をしているのが見なくてもわかったが、クガヤはどうにも止められなかった。
「ウソ~、大変じゃーん!宿にお風呂あるから案内したげようか?」
「お仕事大変なのね~!洗濯、私得意だから!」「私も!お手伝いできるわよ!」
女の子たちは、自分の方がよく世話が焼けると言わんばかりにアピールしだした。
食事は進み、酒がまわるにつれて、クガヤは「まさかお待ち帰りすることにならんよな?このうち誰かとかを。
まさか全員とかではないだろうなあ。
本人が何かしたわけでもないのにこうなるの凄すぎる。もはや伝説の領域だろこれ」とかつぶやきはじめ、ヤトルはもうどうまとめたらいいのか分からなくなって黙っていた。
しかし事態は危惧したようにはならなかった。
女の子が複数だったため、お互いに牽制しあい、誰とも仲が進展しない結果となったのだ。
最後に「隊長さあん、またあしたね♡」と手をふりながら女の子たちは帰っていった。
ニコッと手を振り返しているサタヴァに、「隊長さあんに話がある、いやお話があります、このまま明日まで飲みにつきあって話聞いてください、いやぜひお話きかせてください!女の子と仲良くする方法とかそのへんとか」クガヤは絡みだした。
ヤトルが必死に、宿の風呂が終わってしまうので先に入ろう、また食堂も終わってしまうからここでは無理ですよと主張したので、一同は先に風呂に入り、あとから部屋で話すことになった。予算の関係で共同で一部屋取ってあるのだ。
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