20 / 89
第一章
20
しおりを挟む
三人は風呂が済んだので宿泊の部屋に移動した。
クガヤはサタヴァに女性をくどくコツみたいなのを聞き出そうと熱心で、特に細かいとこまで聞きたがった。
ヤトルは妻子持ちなこともあり、独身二人の話題には口を挟まないほうが平和だと感じており相槌をうつだけになっていた。
時々女性の方からサタヴァに声をかけるという話を聞いて、クガヤは羨みながらあやかりたいあやかりたいと嘆息していた。
しかし話が進むにつれて、出会いがあってもあまり長続きせず、相手がいつの間にか他の人と付き合ってるという話になると、
クガヤは「お前もそういう感じなのか…」と言って頭を垂れてしばらく黙り込んてしまった。
みんなだいぶ飲んでいたので、クガヤが飲みながら突然寝入ったのかと残り二人は一瞬思った時、クガヤは頭を垂れたまんま話しだした。
「実は徴兵に参加しようとした理由、俺は女絡みなんだ。と言っても結果付き合ってたわけじゃなかったんだけど。」クガヤはまた新しく酒をついで一口飲んだ。「まあ、俺は付き合ってると思ってたんだけどな。」
クガヤはその時のことを思い出しながら二人に語った。
クガヤはその日、町に行って家に向かう帰り道だった。
親に頼まれた買い物を忘れたのに気づき、青果店のあたりに戻ったとき、何やら話し声が隣の雑貨屋の近くからきこえたのだ。
「だからイルベさんとは将来の約束をしてますってお父様にお話できたの。今度向こうのご両親とも会うことになっているのよ。」
クガヤは胸がとまるような想いをした。声はクガヤが付き合っている女性の声だった。…何かの間違いだ!としか思えなかった。
そこへ向かいながら、クガヤは足の運びが妙にふわふわした感じになったそうだ。
現実味をまるで欠いており、ゆっくりとしか足を進めることができなかったと。
その後、女性を捕まえて事実確認はしたらしい。
彼女がいうには、クガヤは家を継がないし、すぐ仕事につけるかわからない。仕事につけても最初はなかなか給料はあがらないだろう。その点、申込みしてくれた男性は家がお金持ちで何もかんも条件がいいからだと。
その後なにを話したかよく覚えてないとクガヤはいった。
どうもそのまま結局頼まれた買い物もなんも忘れて家に帰ったらしい。
帰ってなぜ買い物を忘れたかと理由を母親に話してるうちに、その娘と別れた話になった。
母親が言うには、商売は上の兄弟がつぐから、お前はいずれにしろ家を出ないといけない、最初仕事について苦しいところから始めるのは仕方がないんだ、それを相手が嫌なら仕方がないんだよと言われたと。
上の兄弟が仕事をついで自分はどこかの下積みから始める、それはクガヤはよくわかっている話だったが、この時はそれを聞くのがどうにもたまらなかったそうだ。
突然、料理用の鍋を頭にかぶって、このまま徴兵に参加すると言いながら後も見ずに家を出たらしい。
「まあなんだな」クガヤは言った。「徴兵に参加した経験を積むと、一目置かれるような感じになるかと思ったんだ。女性相手にも仕事するにしてもな。
衝動的に来たんだけれど、今ではいい経験になればいいなと思ってる。」
「まあなんでも気になることは心にためて置かないほうがいいと思うぞ、誰かに話したほうがいい。」とサタヴァはいう。
「いろんなものに隙ありとつけこまれることになるからな。」
「いろんな人につけこまれる?それなら話さないほうがいいじゃないですか?」ヤトルが言うと、「いろんな"もの"だ。人ではない。」とサタヴァは言う。
「魔獣や魔物が人の心を乱すと言われているだろう。あれらは心に隙があればそこをついてくる。弱点だからな。
実はそれらだけではなく、普通の獣なんかでも、人の心を乱そうとしてくる場合もある。
まあ、あれらの多くは、自分やまだ小さい子供の命とか縄張りを守ろうとしてやってるだけなんだがな。」
この話には、クガヤとヤトルは、サタヴァ何言ってんだろうという顔になった。
ヤトルは思った。自分が村にいた時は、かわいい奥さんや子供のちょっとした話を周りにできた。でもこの三人の中ではあまりしない方がいいかもしれない。
本当はここでもそういう話をして二人と笑いたいけど、自分だけが幸せな感じになるので、二人のことを思うと話をするのは我慢しようと思った。
サタヴァは思った。二人とも自分の話を聞いて目をパチクリさせている。獣に限らず、草木や、果ては山や鉱物なんかでも、そういったことがおこる話まではとてもできないな、このあたりでやめておこう、と。
クガヤは言った。「ま、自分言い出したのでアレなんだけど、そろそろ寝よう、遅いし。」
三人は休んだ。
クガヤはサタヴァに女性をくどくコツみたいなのを聞き出そうと熱心で、特に細かいとこまで聞きたがった。
ヤトルは妻子持ちなこともあり、独身二人の話題には口を挟まないほうが平和だと感じており相槌をうつだけになっていた。
時々女性の方からサタヴァに声をかけるという話を聞いて、クガヤは羨みながらあやかりたいあやかりたいと嘆息していた。
しかし話が進むにつれて、出会いがあってもあまり長続きせず、相手がいつの間にか他の人と付き合ってるという話になると、
クガヤは「お前もそういう感じなのか…」と言って頭を垂れてしばらく黙り込んてしまった。
みんなだいぶ飲んでいたので、クガヤが飲みながら突然寝入ったのかと残り二人は一瞬思った時、クガヤは頭を垂れたまんま話しだした。
「実は徴兵に参加しようとした理由、俺は女絡みなんだ。と言っても結果付き合ってたわけじゃなかったんだけど。」クガヤはまた新しく酒をついで一口飲んだ。「まあ、俺は付き合ってると思ってたんだけどな。」
クガヤはその時のことを思い出しながら二人に語った。
クガヤはその日、町に行って家に向かう帰り道だった。
親に頼まれた買い物を忘れたのに気づき、青果店のあたりに戻ったとき、何やら話し声が隣の雑貨屋の近くからきこえたのだ。
「だからイルベさんとは将来の約束をしてますってお父様にお話できたの。今度向こうのご両親とも会うことになっているのよ。」
クガヤは胸がとまるような想いをした。声はクガヤが付き合っている女性の声だった。…何かの間違いだ!としか思えなかった。
そこへ向かいながら、クガヤは足の運びが妙にふわふわした感じになったそうだ。
現実味をまるで欠いており、ゆっくりとしか足を進めることができなかったと。
その後、女性を捕まえて事実確認はしたらしい。
彼女がいうには、クガヤは家を継がないし、すぐ仕事につけるかわからない。仕事につけても最初はなかなか給料はあがらないだろう。その点、申込みしてくれた男性は家がお金持ちで何もかんも条件がいいからだと。
その後なにを話したかよく覚えてないとクガヤはいった。
どうもそのまま結局頼まれた買い物もなんも忘れて家に帰ったらしい。
帰ってなぜ買い物を忘れたかと理由を母親に話してるうちに、その娘と別れた話になった。
母親が言うには、商売は上の兄弟がつぐから、お前はいずれにしろ家を出ないといけない、最初仕事について苦しいところから始めるのは仕方がないんだ、それを相手が嫌なら仕方がないんだよと言われたと。
上の兄弟が仕事をついで自分はどこかの下積みから始める、それはクガヤはよくわかっている話だったが、この時はそれを聞くのがどうにもたまらなかったそうだ。
突然、料理用の鍋を頭にかぶって、このまま徴兵に参加すると言いながら後も見ずに家を出たらしい。
「まあなんだな」クガヤは言った。「徴兵に参加した経験を積むと、一目置かれるような感じになるかと思ったんだ。女性相手にも仕事するにしてもな。
衝動的に来たんだけれど、今ではいい経験になればいいなと思ってる。」
「まあなんでも気になることは心にためて置かないほうがいいと思うぞ、誰かに話したほうがいい。」とサタヴァはいう。
「いろんなものに隙ありとつけこまれることになるからな。」
「いろんな人につけこまれる?それなら話さないほうがいいじゃないですか?」ヤトルが言うと、「いろんな"もの"だ。人ではない。」とサタヴァは言う。
「魔獣や魔物が人の心を乱すと言われているだろう。あれらは心に隙があればそこをついてくる。弱点だからな。
実はそれらだけではなく、普通の獣なんかでも、人の心を乱そうとしてくる場合もある。
まあ、あれらの多くは、自分やまだ小さい子供の命とか縄張りを守ろうとしてやってるだけなんだがな。」
この話には、クガヤとヤトルは、サタヴァ何言ってんだろうという顔になった。
ヤトルは思った。自分が村にいた時は、かわいい奥さんや子供のちょっとした話を周りにできた。でもこの三人の中ではあまりしない方がいいかもしれない。
本当はここでもそういう話をして二人と笑いたいけど、自分だけが幸せな感じになるので、二人のことを思うと話をするのは我慢しようと思った。
サタヴァは思った。二人とも自分の話を聞いて目をパチクリさせている。獣に限らず、草木や、果ては山や鉱物なんかでも、そういったことがおこる話まではとてもできないな、このあたりでやめておこう、と。
クガヤは言った。「ま、自分言い出したのでアレなんだけど、そろそろ寝よう、遅いし。」
三人は休んだ。
2
あなたにおすすめの小説
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~
風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる