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プロローグ

プロローグ・前編

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 どこまでも広がる白い空間。上も下も分からない。気が付くと俺はそんな場所に立ち尽くしていた。

 寝起きではないようで、頭はそこそこ冴えている。しかし、何故こんなところに居るのか、全く心当たりがない。

 ただ、可能性としては2つ思い当たる。

 1つ目は夢落ち。この可能性が一番高いと思う。

 2つ目は噂に聞くあれ。俺は死んでしまってここは神様の空間と言うやつ。

 まあ、でも多分非常に鮮明な夢だろう。死んだ覚えはない。

「すみません。残念ながら後者が正解です」

 俺がそんな事を考えていたら、どこからともなく女性の声が聞こえてきた。

 慌てて俺は周囲を見渡す。すると先程まではただの白い空間しかなかった場所に、少し扇情的な白い服を着た人が現れていた。今までに見たことがない程、美人である。髪の色はちょっと前まで緑だったと思ったら、今は水色っぽい。そしてまた色が変わっていく。何か神秘的な感じがするな。

 と言うか、今この人は何て言った? 後者が正解? って事は・・・俺死んだ!?

「はい。竜馬リューマさん。残念ですが、貴方はお亡くなりになりました」

 うわー。どこかで聞いた事のあるセリフだ。そうか、あれか、ここまで含めて夢落ちか! 頬を抓ってみよう。うん、痛くない。やっぱり夢だ。

「えっと、竜馬さん、貴方はお亡くなり、魂だけの存在ですので痛覚はありません。その体は魂に記憶されていたイメージを具現化させているにすぎません。
 記憶が混濁されているのかも知れませんが、確かにお亡くなりになっています。・・・トラックにはねられて」

 死因もテンプレ。俺の妄想もレベル低いな。あ、イヤ目の前の人は見た事もない程の美人だし、見た事もないような美人の妄想とかレベルが高い?

「あの、その、美人と言って頂けるのは大変ありがたいのですが、話が進まないので私がお話しして、思い出して頂きますね」

 いや、言って頂けとか言われたけど、よく考えたら俺喋ってないよ? 心が読まれてる?

「はい。先程もお話した通り貴方は魂だけの存在です。考えている事は相手に筒抜けです。それで死因ですが、貴方は愛犬ポチの散歩中にトラックにはねられました。
 道路に飛び出してしまったポチを助ける為、貴方も道路に飛び出したのです」

 ふむ、考えてる事は筒抜けなのか。変な事考えないようにしないと。それにしても、この人、いや話の流れからしたら神様? 女神様? とにかくかわいいな。扇状的な服装で、胸元とか気になっちゃうのも伝わるのかな? ヤバいな。・・・でも不思議とムラムラしたりはしない。

「そうそう、この世界では感情が昂りすぎると、自動的に抑えられます。大抵は貴方は死にましたとか、そんな話をするので感情が昂る人が多いですからね。
 あ、すみません。私とした事が、自己紹介がまだでしたね。私は転生を司る女神の一柱で、名はルナです。本来、転生は自動化されていて私達が関わる事はありませんが、今回特殊な事情もありこうして、直接ここにお越しいただきました」

 女神様ってのは想定内だけど、特殊な事情か・・・、気になるけど話が進まなくなるので、まずは本当に俺は死んでしまったのか、という事だよな。

 確かにポチの散歩に出掛けたのは覚えてる。ポチは俺が小さい頃にダンボールに入れて捨てられていたのを拾ってきた犬だ。

 小さかった俺は安易にポチとか名前を付けて、親も特に反対しなかったので、そのままポチとなった。今はもっとかわいい名前を付けたら良かったと後悔している。

 俺は高校生になり、ポチもかなり高齢となっていたが、まだまだ足腰はしっかりしていて毎日の散歩は欠かさなかった。何しろ一緒に育ってきた兄弟のような関係だ。ポチが散歩したいとおねだりしてくる限り、それに応えてやりたい。

 今日もいつも通り散歩に出掛けて、いつものコースを歩いていた。それは間違いなく覚えている。

 そして、交差点で信号待ちをしていたら、確か正面にいた子供が道路側にボールを落として、それを拾う為に飛び出した。そこにトラックが向かってきて、ヤバいと思った時にポチが飛び出してボールに体当たりした。子供はボールを追ってトラックから遠ざかる方向に行ってくれたけど、今度はポチがピンチになった。俺は無意識に飛び出してポチを助けようとしたんだ。そこで俺の記憶は途絶えてる・・・。

 あー、そう言う事か。これは夢じゃないんだな。そのままトラックにはねられたんだな。

「どうやら、ご理解頂けたようですね。そう、貴方は子供を助けたポチさんを助ける為に交差点に飛び出して、トラックにはねられたのです」

 ですよねー。女神様が言ってる事は多分正しいんだ。俺は死んだのか・・・。短い人生だったな。そう言えばポチは助かったんだろうか?

「・・・残念ですが、ポチさんも貴方と一緒にトラックにはねられました。
 そして貴方の前にこの世界にいらっしゃいました」

 そっか、助けられなかったのか、とても残念だ。

「ポチさんについてはほぼ即死の状態でした。貴方はその後病院に運ばれて一週間程入院していましたが、治療の甲斐無く・・・」

 なるほど、だからポチは先に来たって事なのか。居るなら会いたいな・・・。転生してしまう前に挨拶くらいしておきたい。

 あれ? でもさっき、普通は自動的に転生するって。

「そう、そこが本題なのです。何故貴方をここにお呼びしたのか、今から説明させて頂きます」

「あ、はい、お願いします」

 あ、普通に声も出せた。思った事が筒抜けだから意味ないけどね。

「さて、どこから説明しましょうか・・・。
 そうですね、まず、貴方をここにお呼びしたのはポチさんの依頼となります」

「ポチの?」

 え? ポチ意思疎通できるの!?

「はい。魂となりこの空間に来たら声に出さなくても相手に意思を伝える事ができます。
 そして、何故自動転生の仕組みがある中で、ポチさんがこの空間に来たのか・・・ですが、簡単に言えば、ポチさんの最期の行動によるものです」

 最期の行動ってあれかな、子供を助けたやつ。

「そうです。ポチさんが助けた子ですが、実は別の女神が長い期間かけて準備をしていた、世界の発展に大きく寄与するキーパーソンとなる予定の子だったのです。
 普段はその女神が付きっきりで危険を排除しているのですが、少し目を離した隙に道路に飛び出してしまったらしいのです」

 あー、なるほど。そこもラノベとかではよく聞く話だね。それでポチはその子を助けた功績でここに呼ばれたと。

「理解が早くて助かります。その通りです。そもそも担当の女神が目を離さなければポチさんが飛び出す必要もなかった。つまり、死ぬ事もなかったのです。
 女神とは言え、時間を巻き戻す事は簡単ではありません。そこでポチさんには、せめて転生後に幸せになって頂きたく、この空間にお呼びしたのです。
 本来ですと、そのポチさんを助ける為に飛び出した貴方にも優遇措置として、何とか生き延びて頂きたかったのですが、地球の現代医学からすると奇跡と呼べるような処置を施さないと治癒出来ないような状態でして・・・、色々な規約に引っかかる為、助ける事は叶いませんでした。重ね重ね申し訳ありません」

「そうですね。死んでしまったのは残念ですが、女神様たちにも色々と都合があるんですよね。
 これは俺自身が判断して行動した結果です。そこまで気にやんで頂く必要はありません」

 恋もせず、将来の夢も叶えずに死んでしまったのは確かに無念だけど、ポチの為に死ねたんだし悔いはない。・・・ポチも死んだから無駄死にだけど。

「そう言って頂ければ助かります。ただ何もしないと言う訳にもいきませんので、補償については後ほど説明します」

 補償か、何か気になるな。
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