うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜

双華

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プロローグ

プロローグ・中編

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「さて、先程の話の続きですが、転生を司る女神である私は、ポチさんの魂をここに呼び寄せ、本人にどのような転生をしたいかを自身で決めて頂く事にしました。
 するとポチさんは、出来ることなら来世でも貴方と共に生きたい。今世での恩を少しでも返したい。そう仰られました。
 勿論、貴方が望むなら、と前置きをしてです」

 ポ、ポチ。そんなに俺の事を思ってくれていたのか・・・。恩を感じるような事をした覚えはそんなにない。学校で嫌な事があった時、親と喧嘩した時、親が居なくなった時、いつも側に寄り添ってくれ、むしろ俺の方こそポチに助けられてばかりだった気がする。

「そんな事はありませんよ。
 捨てられてこのまま死んでいくのかと思った時に助けられた事は、今でも忘れていない。その後も本当に良くしてくれ、感謝しかない。
 ポチさんはそう言っていました。そして、願わくば来世でも貴方と共に生きたい。と」

 そうか、俺もポチは大好きだ。可能なのであれば来世でも一緒になりたいな。俺が望むなら、何て心配してたらしいが、望まない訳がないじゃないか!

「貴方も同じ気持ちのようで安心しました。ただ、この話には一つ大きな落とし穴がありまして・・・」

 落とし穴? なんだろう?

「私は転生を司る女神ですので、ある程度望むように転生して頂く事が可能です。しかし、生まれる場所が指定できないのです・・・。条件に合う母体がランダムで選択されます。
 後、ある程度は望むようにとは言いましたが、近しい種族しか選択できません。つまり、地球上でポチさんと貴方がまた出会える確率はとても低いのです」

 あぁ、なるほど世界中のどこで生まれるかも分からない人間と犬が出会う確率なんてぶっちゃけゼロだ。多少違う種族になったところでそれは変わらない。むしろ危険な生物、もしくは小さな生物だと更に難易度が上がる。根本的に無理ゲーか・・・。

「はい。その通りです。ですので私はポチさんに一つの提案をしました。
 私が管理しているもう一つの世界に転生しませんか? と」

「もう一つの世界・・・ですか?」

 流れ的に、何となく想像できるけど、一応聞いてみる。

「はい、薄々勘付かれたようですが、世界は一つではありません。私が転生を管理しているのは、地球の生物の他にもあって、地球とは異なる、とある世界の生物となります。
 その世界は地球で言う中世レベルの文明ですが、魔法やスキルと言うものが存在しています。大凡、貴方の想像されている内容から掛け離れてはいません。
 そして勿論、魔物も存在しているのです。スキルはある程度付与した状態での転生も可能な為、貴方に【テイマー】のスキルを与えて、最初からポチさんを従魔として登録してしまえばどうか? そう提案したのです。
 転生する場所が違ったとしても、魂で繋がる従魔契約をしていれば、出会える可能性は大幅に上がります。地球に転生するよりは遥かに高い確率で再開出来る。私はそう考えています」

「なるほど、そしてポチはそれを受け入れ、女神様は俺が死ぬのを待って、この空間に呼ばれた訳ですね?」

「その通りです。本当に理解が早くて助かります」

 まあ、よく読む小説にあるような話ばかりだから、すんなり入ってくる。まさか趣味の読書が、こんなとこで役に立つとは思わなかったけど。

「それで、どうでしょう? 貴方もその世界に転生されますか? 先程言い忘れましたが、当然今回は特例として、記憶を持ったままの転生となります」

「はい、じゃあ俺もその世界に転生させて下さい!」

「勿論、今すぐに決めろとは言いません。ゆっくり悩んで頂いて構いません。この世界に魂で存在できる時間は48時間ありますので・・・え?」

「俺もその世界に転生させて頂きたいです!」

「もっと悩まれるかと思っていましたが、竜馬さんは理解が早い上に決断力もあるのですね。分かりました! それでは私が責任を持って転生させて頂きます」

 オラ、ワクワクして来たぞ! とか言っちゃいそうだ。異世界転生とか、男の子のロマンだよね。言い過ぎかな?

「ふふっ、何かちょっと嬉しそうですね。お亡くなりになって、もっと落ち込まれると思っていたので、貴方が嬉しそうだと私も嬉しいです。
 さて竜馬さん、ポチさんの待つ世界に転生するにあたって、色々と説明させて頂きます。
 ちょっと長くなるかも知れませんが、大事な事なのでちゃんと聞いて下さいね」

「はい。よろしくお願いします」

 でも、途中で寝ちゃったら、ごめんなさい。

「ふふっ、貴方は今、魂だけの存在ですから眠くなる事はありませんよ?
 さてそれでは、まず種族の説明からさせて頂きますね。地球人と同じ人間種から、獣人等、様々な種族が存在します。まずはこちらからお好きな種族をお選び下さい。貴方が転生可能な種族の一覧です」

 女神様がそう言うと目の前の空間に文字が浮かび上がる。ちゃんと日本語で書いてあるあたり、サービス満点だ。

 それにしても、種族を自分で選べるのは凄いな。ゲームのキャラクターメイキングみたいだ。どれどれ、一覧を見てみよう。

 人、獣人、ドワーフ、エルフ、魔人・・・とはじまり、メジャーなところから、その派生まで様々な種族が網羅されてる。どうやら多種多様な種族が存在する世界のようだ。けど、この中から選べと言われても難しいなぁ。どうしよう。

「すみません。一つ質問していいですか?」

「はい。一つと言わず、いくらでも質問して頂いて構いませんよ」

「では、とりあえず一つ、今から行く世界の種族の比率とか、力関係とか差し支えない範囲で構いませんので、教えて頂けますか?」

 全て教えてくれとお願いしても、女神様にも言える事と言えない事があるだろうし、控えめに質問しておく。俺は気遣いができる男なんだ。

「ふふっ、貴方は優しいのですね。でも、自分で言ったらダメですよ? ん? 今は考えただけで、言ってないからセーフですかね?
 っと、気を取り直して、私の権限で説明出来る範囲でお教えしますね」

 それから女神様は小一時間かけて色々説明してくれた。長かったので勝手に要約すると以下の通りだ。

 まず、一番人口が多いのはご多聞に漏れず人族であり、総人口の三分の二を占めるそうだ。それ以外では獣人が約二割、残りがその他の種族である。

 良くある物語の様に人族と獣人が争い合っていると言う事はなく、そこそこ友好的な関係にあるらしい。

 エルフや魔人は総人口は少ないが、魔力や身体能力などが他の種族より優れているそうだ。うんうん、テンプレで分かりやすい。

 能力で選ぶならエルフや魔人などが良いのだろうが、この種族は隠れ里や辺境の地などに住み、余り人族や獣人の国に姿を見せないらしい。人族の国にも居るには居るが、数は少ない。世界を旅してポチを探すには、悪目立ちしてしまいそうだから除外しよう。
 そうなると、人族か獣人だけど獣人は魔力が低い傾向にあるらしい。折角魔法のある異世界に転生するんだから、魔法は使ってみたいな。・・・よし。

「どうやら、結論が出たようですね」

「はい。転生先は人族でお願いします」
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