うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜

双華

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第1章 幼少期編

従話 ポチの冒険(4)後編

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「ヒッヒッヒ。パープルも久々にスイッチが入ったようですね。こうなると厄介ですよ?
 パープルはかつて鉄壁の二つ名で、魔界でも恐れられていた実力者です。
 ただでさえ硬い守りを有しているのに、倒しても倒しても起き上がるその姿は、さながらアンデットに例えられました。それがこの部屋の効果とは言え、レベル140まで高められているのです。貴方にその壁を超える事が出来ますか?」

 超える超えないより、色々と気になる情報が出て来たのだ。召喚主って誰なのだ? このダンジョンを作った奴なのだ? 後、魔界って何なのだ? なのだ?

「レッド、色々と喋り過ぎよぉ。幾ら死んで行く身とは言え、教えて良い事と悪い事があるでしょぉ? 地上の生き物達は、魔界の存在に気付いていないのよぉ」

 緑も初めて声を聞いたのだ。男の声なのに、女の喋り方なのだ。オネエって奴なのだ。ちょっと身震いがしたのだ。そして喋りすぎとか言いながら、自らも情報をくれたのだ。魔界は地上の生き物に認知されていないと。メモメモなのだ。

 けど、さっきの会話で少し突破口が見えて来た気がするのだ。

「ちょっと聞いて欲しい話があるのだ」

「何ですか? 命乞いなら、残念ですが聞けませんよ? この部屋に入った時点で、次の階層に進むか、死ぬかの2択しかありませんからね」

「それは今までの階層で分かっているのだ。そうでは無くて、お前達は自分たちの意思でここに居るのだ? それとも契約で仕方なくなのだ?」

 我輩がそう尋ねると、赤は動きを止めて考え始めたのだ。動きを止めたと言っても、隙がある訳ではなく、一種の膠着状態みたいな感じなのだ。この隙に不意打ちで攻撃する事は出来そうにないのだ。そもそも出来そうでも、そんな卑怯な事はしないのだ。

「ふむ。改めて、そう聞かれると返す言葉に困りますね・・・。
 私達はもう1000年以上もこの階層を守護しています。先程、退屈とは言いましたが、私としてはここに居る事が日常になっていますので、特に契約云々に縛られているとは考えていませんし、不満もありません」

「全員同じ考えなのだ? ここから解放されたくはないのだ?」

 吾輩の問いに、紫が反応する。狙い通りなのだ。

「私は解放されるとしたら、解放されたい。けどそれは無理な話。あの方との契約を無効にするなんて不可能よ」

 あの方って誰なのだ? コイツらを召喚した奴だって事は何となく分かるけど、分からないのだ。謎は深まるばかりなのだ。

 まあ、分からない事は幾ら考えても分からないのだ。それより、この紫の悪魔は話に乗ってくれそうなのだ。追い討ちをかけるのだ。

「実は我輩、契約を上書きする方法を知っているのだ。過去に契約の上書きをした事があるのだ。興味はないのだ?」

「興味ないわぁ。そんな甘い言葉で油断させておいて、私達をサクッと攻撃する気かも知れないしねぇ」

《『攻撃弱化』をレジストしました。
 『速度低下』をレジストしました。
 『魔力弱化』をレジストしました》

 そう言いながら、緑の奴はガンガンと弱体魔法を我輩に掛けて来るのだ。レジストできるとしても、あまり良い気分では無いのだ。

「ああ、そうですぜ。そんな胡散臭い話にのる訳ないでやんす」

 赤、黄、緑の3人は興味は無さそうなのだ。と言うか、黄色のキャラが掴めないのだ・・・。やんすって何なのだ?

「さて、下らない話はこれくらいでいいですかね? 時間を貰って、こちらも回復させて頂きました。第二ラウンドと行きましょうか?」

 今までが第一ラウンドだったのだ? 10時間以上あったのだ。勘弁して欲しいのだ・・・。

「さあ、行きますよ!」

 そう言って、赤い奴が剣を構えて我輩に肉迫する。けど、コレは今までに何度もあったパターンなのだ。我輩には余裕を持って避けられる速度なのだ。吾輩の速さは3倍なのだ。

「よし、今よぉ、イエロー。とっておきを魅せてあげなさい。『連続発動』重ね掛けよぉ」

「おう! 行くでやんす!」

《『速度低下』をレジストしました。
 『速度低下』をレジストしました。
 『速度低下』をレジストしました。
 『速度低下』をレジストしました。
 『速度低下』をレジストしました。
 『速度低下』をレジストしました。
 短時間に連続でレジストした事により、コンマ1秒の硬直時間が発生します》

 何なのだ? 身体が動かないのだ。デバフのレジストにそんな仕様があったのだ!?
 こ、このタイミングで一瞬の硬直は命取りなのだ!

 赤い奴の剣が我輩に迫る。あ、このスローモーション5年振りなのだ。今回は仲間たちとの思い出がいっぱいだから、走馬灯もちゃんと流れるのだ。

 って、心配する所はそこじゃないのだ。ピンチなのだ! 避けるのが一瞬間に合わないのだ! 死ぬ事は無いと思うけど致命的なのだ! 致命的なのに死なないとはコレいかに。哲学なのだ。

 カキーン!!

 あれ? 我輩の目の前で剣が止まったのだ。見えないバリアのような物があるのだ。

「なっ! パープル! 何をするのですか! 相手はスキルレジストの硬直を知らなかった。これは唯一無二のチャンスだったのですよ!」

 どうやら、察するに紫の奴が助けてくれたらしいのだ。

「情に訴えかけても、我らは退かないとは言ったけど、ここから解放されるとなると話は別ね。ここから解放されるとしたら、私は悪魔にでも魂を売る!」

 紫さん、貴女が悪魔なのだ。

「あらぁ、パープル。貴方私達を裏切るきぃ?」

「裏切るも何も、私は最初から仲間意識はないわ。契約に縛られて共に守護者をやっていただけ。このダサいスーツも嫌だったの!
 それに私が何の為に盾役をやっていると思っているの? 外に出たら、また色々な痛みに出会えるじゃない? ここに居ても数百年に一度しか戦う機会は無いしね。
 ああ! 新しい痛みを想像するだけで楽しみよ!」

 んん? 唯一まともなキャラかと思っていたけど、結局は同じ穴のムジナなのだ? 同じ穴のアクマなのだ? 痛いのが好きとか、変態さんの臭いしかしないのだ・・・。ドMさんなのだ・・・。

「さあワンちゃん、コイツらをさっさと倒して、さっきの話の続きを教えて頂戴? まあ、倒しても階層主に設定されてるから、その内復活するんだけどね。このフロアに縛られている替わりに、死ぬこともない、そんな呪いの様な契約なのよ」

 うわぁ、復活したらまたこのキャラの濃い悪魔達と戦う日が来るかも知れないのだ? 嫌なのだ!

 とりあえず、パワーバランスが崩れた戦いは、この後早々に決着がついたのだ。

 紫の強化魔法が無くなった悪魔達と、紫の強化魔法で更に強化された吾輩のステータスとの差は歴然だったのだ。

 そしてその後、見事に契約の上書きが成功して紫がご主人の従魔になった事を付け加えておくのだ。

 追伸、名前がアクモンになり一悶着起きそうになったが、メリットとデメリットを比較して何とか納得してもらったのだ。

 全くご主人のセンスにも困ったものなのだ。
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