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第1章 幼少期編

第19話 会敵

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 俺たち3人は『浮遊』で浮いたまま森を進む。

 30分程かけて、この前森に来た時にゴブリンジェネラルに出会った辺りまで来た。さすがに3人同時だと時速10kmくらいしか出なかったな。

 ただ、同時に何人も移動させるには、今まで以上に精密な魔法コントロールが必要だったので、集中して魔法を使った結果、【魔力操作】のスキルが【魔力精密操作】に変化したのは棚から牡丹餅だった。

「凄いわね。森の中で人をこのスピードで運べるなんて。
 しかも移動に使うのは【生活魔法】の『送風』なんでしょ? 消費魔力も少ないし、画期的だわ! 革命ね」

 画期的かも知れないけど、まず『浮遊』を使うには【無属性魔法】のレベルが6必要なんだよね。今、人類最高が5らしいのでまず入り口で躓きそうだ。

 更に【重複魔法】も必要だし【魔力操作】も高くないと、上手く進めない。

「・・・多分、他の人には難しいですよ?」

「まあ、そうね。リョーマ、あなた1人を移動させるだけでも、最低2つの魔法を併用してるでしょ? 普通の人には無理ね」

 リーナ師匠はやれやれと言った感じのポーズでそう言うが、暗に俺が普通の人じゃないと言われているようだ。いや、実際そうなんだけど。

 【重複魔法】はスキルランクスーパーレアなので数万人に1人しか使えない。数万人に1人の時点で普通じゃないよね。

「さてリョーマ。貴方がこの前ゴブリンジェネラルと出会ったのはこの辺りなのかしら? 私の【予感】スキルでも、この辺りは嫌な予感がビンビンだわ」

「ええ、この辺りですね。でも【気配察知】のスキルでは今はこの周りは大丈夫のようです」

 そんな感じで、更に森を進んで行く。途中で女子2人はガールズトーク? に花を咲かせていた。

「今更だけど私、リーナさんにちゃんと自己紹介をしていない気がするの。
 私はレミ。見ての通り猫の獣人で巫女候補よ。
 初対面の時はごめんなさい。貴女に失礼な事を言ってしまって」

 本当に今更だった。

「大丈夫。話は聞いているわ。サーシャさんが大好きなのよね」

「ええ、あの人は本当に凄いよね!? 全ての女性の憧れじゃない? 強い女の人って本当にステキ!」

 レミは母が絡むとホントに人が変わるな。それ以外だとかわいい猫耳っ娘なのに。

「あら、強い女が好きなら、私もタダの美少女に見えるかも知れないけど、強いのよ?」

「え? でもリョーマに負けてたわよね?」

「ぐはぁっ!」

 あ、何か女の子が出さない方が良いような声を出して、目に見えて落ち込んだ。

「そ、それは相手が悪かったの。まさかこんな化け物だとは思わなかったわ。どう見てもその辺りにいる男の子じゃないの」

「そうよね。リョーマはサーシャ様のご子息だからね。それと比べたらダメだよね」

「そんな次元では無いけど、説明しても分からないだろうからいいわ。
 とにかく私は強いから、遺跡までの道程は安心してね」

 そんな会話を聞きながらも、どんどん森の中を進んでいく。ギルドで調べた情報だと、森の入口から遺跡まで10km弱位だったので、あと3分の1ってところだ。

 「今のところ魔物にも出会わないし、順調ですね」

【気配察知】スキルもこの3日でレベル5まで上がっているので、100m先までの気配が分かる様になった。なので【気配察知】をして魔物が近くにいたら避けて移動していたというのも順調な要因ではある。

 だけど、順調とか言ってしまったのがフラグだったのか、ついに【気配察知】のスキルに大量の反応が現れた。

「ちょっと、止まりますね」

「とても嫌な【予感】がするわ。魔物かしら?」

「ええ、50m~100m程先に魔物がひしめき合っています」

 そう言えば、リーナ師匠は俺と模擬戦をするのに【予感】は働かなかったのだろうか? 相手が強すぎると働かないとか、そんな仕様なのかな? 自惚れている訳では無いけど、実際レベル差はトリプルスコアだし。

「リョーマは【気配察知】もかなり高レベルなの? ホントに多芸ね」

 因みに【気配察知】は集中したら虫とかの小さな生物までも対象に入れる事ができるが、今は魔物と人に絞っている。

 更に、この3日で色々と試した結果、薬草の時に使った方法の応用で、【気配察知】した対象を【鑑定】して集計結果も【アナウンス】で分かるようになった。

 勿論、【地図】スキルと組み合わせて【地図】上に【気配察知】の結果を表示する事も出来る。色々と万能過ぎる。とりあえず、【気配察知】の結果を【鑑定】してみよう。

《【鑑定】結果を整理しました。
 ゴブリンが10体、ゴブリンソルジャーが4体、ゴブリンアーチャーが3体、ゴブリンメイジが2体、ゴブリンジェネラルが1体です。
 それぞれ【鑑定】結果を地図にマーキングしました》

 総勢20匹か。すぐさま、俺は【鑑定】結果を2人に伝える。

「えっ!? 【気配察知】ってそこまで分かるもの!? 絶対違うわよね!」

「ちょ、ちょっと! 師匠声が大きいです。気付かれてしまいます」

 リーナ師匠はハッとして口を押さえるが、もう遅かったようだ。【地図】上のゴブリン達はこちらに向かい始めている。

「ああ、気付かれたようです。近付いて来ます」

 そう言うと、俺は【風魔法】で周りの邪魔な草を薙ぎ倒し、広場を作る。幸いにもこの辺りは木も少なく、動きやすそうだ。この3日で普通の魔法の使い方とか修行しておいて良かった。

「レミは後ろに。俺と師匠で戦います。あっ!」

「ん? どうしたの?」

 【気配察知】の反応が増えていく。

「ゴブリンの数が増えてます。多分、仲間を呼んでいるのだと思います」

《【鑑定】結果を整理しました。
 ゴブリンが18体、ゴブリンソルジャーが6体、ゴブリンアーチャーが5体、ゴブリンメイジが3体、ゴブリンプリーストが2体、ゴブリンナイトが2体、ゴブリンジェネラルが2体です。
 それぞれ【鑑定】結果を地図にマーキングしました》

 ゴブリンの種類の多さにビックリだ。どれだけの種類があるのか、今度ギルドで調べないとな。

 それにしても、ゴブリンの割合がこんな感じなのだとしたら、最初にジェネラルに遭遇した俺は、運が良かったのか悪かったのか・・・。

「そんなに増えているとなると厄介ね・・・。もうスタンピード1歩手前って感じね。一度引く?」

「いえ、多分大丈夫です。幸い森の中なので、全ての敵が同時に攻めてくる訳ではないでしょうし」

「そうね。じゃあ迎え撃ちましょう。
 ここは森の中だから、大規模な魔法を使うわけにもいかないわ。1匹づつ個別撃破ね。
 それと、リョーマは本格的な乱戦は初めてなんでしょ? 同士討ちには注意するのよ」

 師匠に、この前のゴブリンジェネラルが初めての実戦だという話はしてある。

「分かってます。因みに、見えた側からリーナ師匠の光の魔法で処理したらどうですか?」

「それが出来たら楽なんだけどね。実はあの魔法、事前に魔力を溜める必要がある上に、魔力の消費も半端ないの。1対1ならともかく、乱戦ではちょっと使えないわ」

 『飛翔』もそうだけと、何かリーナ師匠のオリジナル魔法って燃費悪いな・・・。そう言う制限でもあるんだろうか? まあ、そこはスキルを覚えたら分かるか。

「では、とりあえず俺が前衛で前に出ますので、師匠はレミを守りながら援護をお願いします。僕たちが来た方向に敵は居ませんので、今作った広場の出来るだけ後ろの方へ」

「分かった。リョーマ頑張ってね。私も巫女見習いとして、少しぐらいなら【回復魔法】とか使えるから援護するわ」

「ありがとう。もし怪我をしたらよろしくお願いします」

 俺【回復魔法】もレベル10なんだけと、そこは言わない方が良いよね。

「来ます!」

 先発隊として無印のゴブリンがワラワラとやってきた。ソルジャーは2匹しか混じっていないので様子見のつもりだろうか?

「「ムギャーッ!」」

 ゴブリン達は子供3人しか居ない事に気付き、威勢の良い叫び声を上げながら走り始めた。対して俺は1人で剣を構えて前に出る。

 今まで使っていた剣は師匠に壊されたので、先日の報酬を使って新調したロングソードだ。武器屋で【鑑定】しまくって見つけた業物である。

 さあ、来いゴブリン。新しい剣のサビにしてくれる! すぐ手入れするからサビないけどね!
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