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第2章 学園入学編

第8話 再会

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 次の試験は魔法を使えると申請した生徒だけ、順番にその実力確認だ。試験はそのまま訓練場で行われる。その他の生徒はここで試験終了だが、後学の為にと見学していく子も多いようだ。

 ジョージは魔法学はサッパリだったと言っていたが、レベルが高いだけのことはあり一応魔法も使えるそうで、残っていた。

 全部で40人ほどだろうか? 全体の20%くらいはこの歳で魔法が使えるという事だ。これはかなり優秀な数字らしい。【生活魔法】程度なら一般人もそれなりに習得しているが、ここに残ったという事は攻撃力のある属性魔法が使えると言う事である。俺は【生活魔法】の『着火』が【火魔法】の『火炎放射』並だけど・・・。

 魔法の実力確認は10m程離れた的に魔法をぶつけると言う至ってシンプルなもので、全5個の的を何秒で撃ち抜けるかで評価が決まるそうだ。

 属性は自由。俺は何の魔法を使うか考えながら順番を待つ。因みに、この試験もレベル順だった為、俺はまた最後まで出番なしである。

 的は非常に耐久度の高い素材で出来ていて、新入生の魔法程度では擦り傷くらいしか付かない。しかも時間が経つと自己修復すると言う、無駄に高性能だ。魔法が当たれば倒れるようになっているらしい。

「よーし! やっと俺の番だな。さっきの模擬戦では良いところを見せられなかったから、今度は目ん玉かっぽじってよく見とけよ!」

 やっと順番が回ってきて、そう言いながらジョージが前に出る。さて、言うだけの事はあるか、お手並み拝見といきますか。

「それでは始めっ!」

 進行担当の教師と思われるおじさんの声と共にジョージが詠唱を開始する。この詠唱は普通の『火の矢』かな? 文字通り火の矢を撃つ魔法で【火魔法】レベル1で使う事ができる。威力も速度もそこそこなので、好んで使う人が多いそうだ。

 ジョージは中々の精度で当てて行き、魔法の詠唱速度も早かった事もあってここまでのメンバーでは最高記録と、好成績だった。けど、次に模擬戦の相手だった女の子がサクッと記録更新していた。

「そ、そんなバカな・・・」

 膝から崩れ落ちたジョージの肩をポンポン叩き慰めつつ、次の生徒を確認する。レベル3番目と4番目の子は参加しなかったらしく、ボクちん貴族が前に出る。そう言えばこの人の名前知らないや。他の人が試験している間も、ずっとこちらを睨んでいた。怖い怖い。

「グヒヒ、ボクちんの真価は魔法にあるんだ。この魔法を見て恐れ慄くんだよ!」

 よく見たら付けている魔道具が魔力上昇の指輪(上級)や魔力操作支援のネックレス(上級)になっている。なんだかなぁ。

 そして、詠唱を始めると拳台の石が現れる。『石弾』の魔法だ。【土魔法】レベル1で使える。

「これがどうしたと思うでしょ? ところがどっこい、増えるんだよ!」

 拳台の石が2個になった。うん、【土魔法】レベル2になると2個同時撃ちできるからね。でも、的を見ないでこっちを向いて見せてくれてるけど、試験はいいのかな? とか思ってると、

「ああっと! 手が滑ったんだな! 死ねぇ!」

 こっちに向かって撃ってきた。手が滑ったとか言いながら、死ねって。

 精度がお粗末なので、このままだと膝から崩れ落ちてるジョージに当たりそうだ。

「「キャー!」」

 後ろで見てた生徒達から悲鳴も聞こえる。教師も慌てて止めようとしたが、全然間に合っていない。

 仕方ない・・・。俺は一歩前に出ると、両手を前に出す。そして着弾と同時に素手で掴み取った。

「「「え・・・?」」」

「全くもう、危ないですよ? 手が滑ったとは言え、同級生に当たったらどうするんですか?」

 そう言いつつ、手に取った石を握り潰す。

 ───パラパラパラ。

 粉々になった石屑が地面に落ちる。それを無言で見つめるギャラリー達。

「え? は? いや、え??」

 ボクちん君は俺の手元と地面を交互に見て、盛大に混乱している。

「まあ、僕がキャッチ出来る程度のお粗末な魔法で良かったです」

「いや、普通の『石弾』だったぞ?」

 足下でジョージが何か言ってるけどスルーで。

「折角だから、本当の【土魔法】と言うものを見せて上げます」

 俺だけならまだしも、折角出来た友達? まで危険にさらされた事で、温厚な俺もちょっと切れてる。

 俺は右手を前に出すと無詠唱で、スイカくらいの大きさの石を出す。

「え? 詠唱は?」

 はいはい、そんな事言ってる暇は無いですよ。

 俺はボクちん君でも認識できるであろう速さに抑えて、『石弾』を発射する。

「う、うわぁぁぁ!」

 ボクちん君が叫びながらへたり込むと、俺が放った『石弾』は頭の上を通過して5つに分かれる。

 実はこの1年で【魔法創造】のレジェンドスキルは取得できなかったけど、【魔法改変】のスキルは取得できた。今回、『石弾』が途中で分かれるようにアレンジしたのだ。

 そして、分かれた後は一気に速度を上げ、5つの的に吸い込まれて行く。

 ───バーーン!

 凄い音と共に、的がされた。

 ・・・あれ、やり過ぎた?

「うおおおー! すげえ!」

「何!? 今の何!?」

 ギャラリーも大騒ぎしている。

「な、な、な、なんなんだい!?
危ないじゃないか! ボクちんに当たったらどうするつもりなんだい!」

「絶対に当たらないようにしたので、大丈夫ですよ。僕の『石弾』は意思を持ち事前に指定した通りの動きをします」

「石だけに?」

 足下から何か聞こえるけど、気のせい。

「と、兎に角、静かに! 静かにしなさい!」

 見ていた教師がこの場を収めにかかるが、興奮した子供達は中々収まらない。

「ぼ、ボクちんにこんな事して、タダで済むと思わない事なんだな。父様に言って、お前の入学を取り消してもらうんだからな!」

 そしたら、こちらは伯爵の黒い噂を全部白日の元に晒してあげようかな。

「これは一体、なんの騒ぎですか?」

 そんな事を考えていたら、後ろの方から誰か訓練場に入ってきた。

「隣の訓練場を使っていたのですが、先程の大きな音と言い、この騒ぎと言い、一体何なのですか? 責任者の方、説明をお願いします」

 あれ、この声は何処かで聞いたことあるような気がするけど、口調が全然違うような・・・。

 そう思いながら俺が振り向くと、そこに居たのはやはり、想定通りの人物だった。

 前に見た時より成長して少し背も高くなっている。

「り、リーナ様! これはですね・・・」

 責任者の教師がしどろもどろに説明しようとしていたが、ボクちん君が遮る。

「そこの不届き者が、ボクちんに向かって魔法を撃ったんだな! もう少しで大怪我するところだったんだな!」

「こ、こら! この人を誰だと思ってるんだ!」

 はい、師匠です。

「あら、リョーマさん。お久しぶりですね」

 いや、誰ですか! 喋り方おかしいから!
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