うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜

双華

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第2章 学園入学編

第13話 トラップ

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 俺の手には途中で折れた剣。目の前には下級悪魔レッサーデーモンがいる。

 さて、どうしようかな。さっきも言ったように、この部屋で強力な魔法はクラスメイトに被害が出そうなので使えない。

 まあ正直、相手のレベルは高くてもせいぜい60程度だろうから、俺とのレベル差は2倍以上だ。思ったより相手のレベルが低ければ3倍もありえる。つまり、時間をかけて物理で殴ればその内倒せそうな気もする。所謂、レベルを上げて物理で殴れば良いってやつだ。

「いやぁぁ! 私達、ここで死ぬのよー!」

「お母様ーー! 助けてぇぇ!」

 でも、後ろの方で恐慌状態のクラスメイト達の為にも、早めに倒すに越したことは無いだろう。

 とりあえず、俺は折れた剣を投げ捨てると【収納】から予備の剣を取り出す。予備の剣と言うだけあって、先程の剣より安物だけど、試してみたい事があるからだ。ぶっつけ本番になってしまうけど、仕方ない。

「〈付与〉発動!」

 この場でいきなり鍛治を始めて剣を作るのは無理だが、【付与魔法】ならすぐ使える。

 【付与魔法】も【万物創造】スキルに包含されていたスキルの1つだ。さすがレジェンドスキルは半端なく、【万物創造】スキルは物を作ったり、物を強くする系のスキルはほぼ使えるようになるみたいだ。

 〈付与〉の魔法を発動すると、剣が仄かに光る。この光っているのが準備完了の合図で、ここで更に付与したい効果の魔法を追加する事で剣を強化できるようだ。使い方だけでもこの2週間で調べておいてよかった。

 ただ、その間も下級悪魔は待ってくれないようで、鉤爪で俺を引き裂こうと攻撃をしてくる。しかし、レベル差が有るからか下級悪魔の攻撃はそこまで速くは感じない。俺はその攻撃を軽く避けながら、付与を続ける。スキルレベルが5なので5種類まで同時に付与できる。だけど、いきなり上限は失敗が怖いので、とりあえす3種類の付与を施す事にする。

「〈硬度付与〉! 〈切れ味付与〉! 〈光属性付与〉!」

 よく考えたら【無詠唱】スキルを持っているから叫ぶ必要は無いけど、何となく叫んでしまった。ジェームス先生のこと言えないな。俺も説明台詞みたいになってる。

 因みに、永続効果を付与するには媒体に魔物から取れる魔石を使う必要があるようだが、短時間の付与なら魔力を込めるだけで問題ない。ただ、念のために多めの魔力を込めておく。

「よし、成功だ!」

 剣が光輝いている。硬度と切れ味も上がっている筈だ。

「なっ! 戦闘中に【付与魔法】とか、聞いたことないぞ! どんな集中力をしてるのだ!? しかも3種類付与していたな・・・。【付与魔法】はレベル1で1種類、レベル3で2種類、レベル5で3種類と聞いたことがある。つまりリョーマ君は既にの付与魔法使いということか!?」

 後ろでは何とか復活して起き上がったジェームス先生が叫んでる。またまた説明台詞ありがとうございます。ジェームス先生の言う通り、通常の【付与】スキルはレベル2につき1種類の付与しかできない。また、前にも述べたように本来スキルレベルは10まであるが、レベル5以上の必要経験値が非常に高いため、6を超えるスキルを身に着ける者はほぼいない。つまり、通常はどんなすごい付与師でも3種類が限界なのだ。

 そしてその間も下級悪魔は止まらず俺を攻撃してくる。準備が完了した俺は避けるのをやめて、【付与魔法】を施した剣で鉤爪を受ける。〈硬度付与〉を施したので、剣で受けても破壊されることはないだろう。そして、下級悪魔の鉤爪が剣に当たる。

 ───スパっ

 攻撃を防ぐだけのつもりだったが、受け止めた鉤爪がそのままバターの様に切れ、地面に落ちた。

「「「えっ!?」」」

 後ろから驚く声が聞こえたけど、俺も驚いてるよ。ちょっと多めに魔力を込めてみたけど
、これはもしや・・・やり過ぎた!?

「ナニ・・・!?」

 下級悪魔もいきなり自分の鉤爪が真っ二つになり地面に落ちた事に戸惑い、動きが止まる。

 よし、チャンスだ!

 俺は半歩下がると、勢いを付け踏み込んで斜め上を横薙ぎにする。下級悪魔は避けようとするが、この1年で【剣術】スキルが10まで上がっている俺の剣技からは避けられない。

 下級悪魔に避ける暇さえ与えずに、剣を振りぬいた。

 剣は何の抵抗もなく狙った場所を通過して、下級悪魔の首に一筋の線が走る。

 手応えアリだ!

 ───ズルリ

 次の瞬間、下級悪魔の頭と体がズレていった。少し時間を置いて、下級悪魔の首が地面に落ちる。

 ・・・いや、付与魔法強すぎじゃない? と言うか、3種類はやりすぎた!?

《下級悪魔を倒して経験値を獲得しました》

 下級悪魔が倒れると同時に【アナウンス】が流れ、下級悪魔は光に包まれる。どうやら、無事に倒せたようだ。首を落としても回復するならどうしようかと思ってたところだ。それより、階層主は倒すと光に包まれるのか?

「うおー! すげーー!!」

「キャー! 倒したわ!」

「まさか、本当に単騎で悪魔を倒すとは・・・。本当に新入生か!? と言うより、下級悪魔の単騎討伐なんて、飛行姫リーナ様にもできないのでは・・・」

 相変わらず説明台詞なジェームス先生は置いておいて、俺は振り返りガッツポーズを見せる。不安なクラスメイトを安心させる為だ。

「「「うおーー!!」」」

 クラスメイト達は歓声を上げる。俺は親指を立ててサムズアップしてクラスメイトに応える。

 だが、どうやら俺はこの時、強敵を倒した事で気が緩み油断していたようだ。

「リョーマ君、後ろ!!」

「えっ!?」

 ジュリア先生に言われて振り返ると、倒れた下級悪魔から放たれる光が更に増していた。

 更によく見ると、先程下級悪魔が召喚された時の魔法陣がまた発動しているようだ。

 ただ、先ほどは白かった魔法陣の光が今回は赤い。本能的に感じる。これはヤバいやつだと。

 それを見た瞬間、急いでその場を離れようとするが、一瞬反応が遅かった様だ。俺は魔法陣から湧き上がる光に包まれていく。

「リョーマ!」

「リョーマさん!」

「リョーマ君! ヤバいぞ、トラップだ!」

 そんなクラスメイト達や、先生が心配する言葉と共に俺の視界は真っ赤に染まったのだった。
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