うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜

双華

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第2章 学園入学編

第18話 正しいダンジョンでの夜営方法

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 何とかトラップにかかった日の内に、1階層の階層主の部屋まで戻ってくる事ができた。ほぼ日付が変わる直前だ。

 学園の予定では本日もここでキャンプのはずだったけど、さすがに階層主が出たり、俺が行方不明になったり色々とあったからか、同級生の姿はなかった。きっと既にダンジョンの外だろう。

 ちなみにこのダンジョン、お試しダンジョンと言うことで、深くまで潜っている冒険者の人はそんなに多くなかったけど、浅い階層にはそこそこの人が居た。

 冒険者としてこれからダンジョンに向かう人たちにとって、ここはダンジョンの雰囲気を学ぶのに丁度いい場所らしい。スラッシュさんとウースさんみたいに観光で奥まで行く人もたまには居るみたいだけど。多分それはイレギュラーだ。

 精神年齢(前世と今世の合計)が20歳を超えていても、肉体年齢は6歳なのでそろそろ眠くて仕方がない。1階層の入口まで戻れば、また騒ぎになったりして寝る時間がいつになるか分からないし、持ちそうにないから、今日はここで寝ることにしようかな。

「ミルク、今日はここまでにして、ここで休もう」

 俺はミルクにそう話しかけたけど、反応がない。あれ?

《従魔ミルクは状態:睡眠です》

 あ、はい。どうやら既に夢の中らしい。2階層に上がった頃から、お喋りもなしで走り続けてて気付かなかった。俺の肩に乗ったまま寝るとか、器用だな。結構なスピードで走って来たけど、振り落とさなくてよかったよ。

 さて、寝るにあたって、ここは安全地帯扱いだから魔物の心配は要らないけど、一応人の出入りはある。魔物は階層主が現れない前提だけどね。

 昨日もここでキャンプだったけど、学園の生徒を襲うような冒険者はいないので、そんなに警戒はしていなかった。

 だけど、今日は見た目は子供が1人だ。万が一を考えないといけない。どうしようかな?

 あ、そうだ! 土魔法で部屋を作ろう。前に読んだ小説ではそんな事してる主人公が居た気がする。

「『土壁』! 『土壁』! 『土壁』! もういっちょおまけに『土壁』!」

 とりあえず4方向を土の壁で覆ってみた。4m×4mくらいで十分な広さが確保できている。壁の高さは天井より少し低い程度、天井までは10m弱あるので、さすがにここから侵入する人もいないだろう。後は人が入れないようなサイズの空気穴を何か所か空けて・・・完成!

 出入口はないから、出るときには壊す必要があるけど、即席の部屋が出来上がった。魔力増し増しなので、そこいらの冒険者には壊す事も出来ないだろう。

 さて、昨日は学園のキャンプだから自重してたけど、今日は自重する必要もない。【収納】から木製のベッドとマットレス、布団一式を取り出して設置する。

 こんなこともあろうかと、移動中に【万物創造】スキルで作っておいたんだ。【サポーター】さんの助言によると、【収納】の中でも材料がそろっていたらそのまま【万物創造】が使えるということで、移動しながらでも作る事ができたんだ。

 【万物創造】は何となく知ってるだけの物も意外と補正が働いて作れるみたいで、かなり現代風の寝具が出来上がった。

 材料は、どこかで使えるかも知れないと集めておいた廃品が役に立ってくれた。捨てるのが勿体ない貧乏性が功を奏したよ。

 やろうと思えば、家も作れるんじゃないかと思ったけど、さすがに家を作るたけの木材はストックしてなかったので、土壁の部屋で我慢する事にする。土壁の部屋でも十分贅沢なんだけどね。

 ミルク用には赤ちゃんを置くような大きめのバスケットにタオルを敷いてベッドにしよう。これもちょっと現代風な作りになったのはご愛敬で。

 よし、夜営の準備は完了! これぞ、正しいダンジョンの夜営メソッドだ! 皆んなも夜営の際は参考にして欲しい! ・・・嘘ですごめんなさい。

 さめ、後はお風呂だ。これも準備は出来ている!

 【収納】から移動中に作った風呂釜を取り出して設置する。妖精とは言え、(多分)女の子のミルクに配慮して、衝立を立てる事も忘れない。

 【火魔法】と【水魔法】の混合魔法で、40℃前後のお湯を作って風呂釜に入れると準備完了。誰得の男の子の入浴タイムである。

 ・・・きっと需要はないので割愛して、いいお湯で癒されたとだけ記しておく。上がった後は、お湯ごとそのまま【収納】にしまった。【収納】便利!

 因みに、お湯を作る混合魔法はこの1年で覚えた。【魔法改良】を使って何となくやったら出来た。普通、魔法でお湯を作ろうと思ったら水を用意してから、【火魔法】で温める必要があるんだけど・・・。チートですみません。

 そして、お風呂でゆっくり温まったのと、この1日色々あった疲れも重なり、俺は布団に入ると直ぐに眠りに落ちたのだった。


 ☆


 ───ドンドンドン!

 ぐっすり眠った次の日、俺は土の壁を叩く音で目が覚めた。今何時だろう。

《午前9時前です》

 ありがとうございます。結構寝過ごした!

「うーん、何の音なの? ・・・と言うか、ここはどこなの!」

 どうやらミルクも今まで寝ていたようだ。

「おはようミルク。ここは俺が作った夜営部屋だよ」

「あ、リョーマ! おはようなの! 昨日リョーマに会えたのは夢じゃなかったの! 嬉しいの」

 ───ドンドンドン!

 まだ叩いてる。誰だよ朝から、と思いつつ【マップ】を確認する。ああ、なるほど。

 【マップ】で叩いてる人物を確認した俺は、とりあえず邪魔な壁を【収納】にしまう。

「やっぱり! 変なオブジェができてると思ったら、貴方でしたのね」

 そこに居たのはリーナ師匠だった。

「師匠、おはようございます。言葉遣いそっちじゃ無い方でお願いします」

「ああ、そうだったわね。
 でも、良かった・・・。昨日、貴方が消えたと報告を聞いて、心配で心配で・・・」

 え? 師匠、俺の事心配してくれてたの?

「他の場所ならそんなに心配しないけど、ここは・・・」

 そうか、自称神様からスキルとコードネームを貰った人達は、ここの奥に魔王が封印されていると説明されてるんだっけ。

「そうそう、僕も会いましたよ。自称神様に」

「えっ!? それって・・・」

 師匠が話を続けようとするのを、俺は右手を上げて止める。

「まあ、詳しい話は脱出してからにしましょう。
 ところで師匠はここまで1人で来たんですか?」

「昨日の夕方に、貴方の話を聞いて直ぐに入口まで来たんだけど、今は危険だから入れないって言われてね。
 一晩かけてAランク冒険者の権限を使って許可を取ったの」

 あれ? 師匠は去年はBランクだったような?

「ランクアップしたんですね。おめでとうございます。
 でも、師匠なら家の権力も使えるんじゃ無いですか?」

「あ、ありがとう。
 家の権力はねぇ・・・。出来る限り使いたく無いのよね」

 うーん。何か思うところがあるのか。余り触れない方が良いのかな?

「と言うか、その後ろにある現代チックなベッドは何!?」

 あ、【収納】するの忘れてた。

「更に言えば、そのちっこくてかわいいのは何!?」

 見ての通り妖精ですよね。

 さて、何から説明したものか・・・。
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