うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜

双華

文字の大きさ
65 / 159
第2章 学園入学編

第25話 先客

しおりを挟む
 地下室の扉から覗き込むと、質素なベッドで寝ている鈴木さんの横に、黒ずくめで小柄な男が立っていた。しかし、確かに部屋には鈴木さん1人分の気配しか感じられない。

 な・・・何を言っているか分からないかも知れないが、俺も全く状況が理解できない。・・・ん? 何かこの表現とてもデジャブなんだけど、何でだろう? ついこの間あったような。

 さて謎の人物だが、黒ずくめ・・・と言うより何だろう? 忍者みたいな恰好をしている。その装束から除く顔はどうやら老人のようで、立派な白髭を蓄えていた。見た目はとても穏やかな好々爺だ。

 とりあえず、俺は【光魔法】で光学迷彩を施している上に、【気配遮断】【魔力遮断】スキルを発動し、更に『遮音』の魔法で音も消している。向こうにはばれていない。

「む? 何じゃ? ワシ以外にもお客さんかの?」

 ・・・はずなんだけど、あれ? ばれてる? そう言いながら、振り向くお爺ちゃん。

「ほう・・・。これは見事じゃ。
 確かにそこに居ることは分かるが、目では何も見えないの・・・」

 うん。ばれてるよね。そうだ、【鑑定】はできるんだろうか。と思って【鑑定】をしてみたが、普通に【鑑定】できた。気配がないだけで普通に【鑑定】はできるみたいだ。

 【鑑定】結果によると、このお爺ちゃんはキツネの獣人のようだ。耳は隠れてるので確認できないけど、きっとケモミミだろう。ケモミミお爺さんとか誰得!?

 そして、普通の獣人だけど特殊なスキルを持っている。【気配支配】なるレジェンドスキルだ。レジェンドスキルか・・・。

《レジェンドスキル【気配支配】を解析しました。自らの気配をゼロにするとともに、どれだけ遮断した気配も察知できます。使用方法によっては存在感もゼロにする事ができるようですが、現在はそこまで発動していないようです》

 あ、【サポーター】さんありがとうございます。いつの間にか解析までしてくれるようになってた。

 まあでも、ほぼほぼ想像通りのスキルのようだ。

「さて、どちら様かは分からぬが、姿を見せてくれないかの? ワシは争う気はないぞい」

 そう言われ、俺は部屋に入り、ドアを閉め、部屋全体に『遮音』をかけた。

 万が一戦闘になって上に気付かれたら面倒だからね。後、逃げられないようにドアを固定しておく。

 そこまでしたら、自分にかけていたスキルと魔法を解除する。

「どうも、初めましておじいさん。僕は怪しい者ではありません」

「まさか、子供じゃったとは・・・。しかし、お互い様じゃが、こんな時間にこんな所にいる時点で怪しい者じゃぞ?」

 確かに。さて、でもどうしたもんかな? 間違いなく、双方怪しさ大爆発だからな。とりあえず揺さぶりをかけてみるか。

「そうですよね。自分で言っておいて何ですが、怪しすぎますよね。
 ところで、どうしてお爺さんはこの人が気付いたんですか?」

 そう言いながら、寝ている鈴木さんを指さす。

「ふむ、合点がいったぞ。そう言う事か。お主もと言う事じゃな」

 おっと、ちょっと揺さぶりをかけるだけのつもりだったのに、クリーンヒットかな。ま、こんな所でレジェンドスキルを持った人に出会う時点でほぼ間違いないんだろうけど。

「そんな感じです。正確にはちょっと違いますが、これは後で説明させてもらいますね」

「しかし、まさかこの歳になってから前世の記憶が戻るとは思わなんだ。
 そして、神と名乗るモノに頂いたコードネームは憤怒じゃ。ワシはとても温厚だと言うのにひどい話じゃろ?」

 あ、うん。やっぱりコードネームは七つの大罪なんですね。しかも適当に付けてるだけっぽい。リーナさんも全然傲慢って感じじゃない・・・ない? あれは演技だから、多分ないし? ね?

「それで最初の質問に戻るのですが、どうしてこの人が7人の内の1人だと気付いたんですか?」

「うむ、それはな。とある情報筋からとても珍しいスキルを持った者が軍に監禁されていると聞いたんじゃ。しかも名前がスズキと言うではないか? ほぼ間違いないと思い、こうして確認に来た訳じゃ。
 さすがに、この場で連れて行く事はできんが、後で裏から手を回そうと思っておった。
 して、逆にお主はどうして気付けたんじゃ?」

 まあ、ここは正直に答えても問題ないかな?

「僕の場合は、既に面識があるんです」

「ほう?」

「実はエナンの街から、学園に入るために王都へ移動してきたんですが、その途中で盗賊に捕らえられている鈴木さんを助けました。その時に一緒にいた兵士の方に保護されたので安心していたのですが・・・、まさか監禁されるとは」

 そこまで話をしたところで、お爺さんの目がクワっと開かれる。

「エナンの街じゃと? お主、名は何と言う?」

 急にどうしたんだろう?

「えっとリョーマ・・・、リョーマ・グレイブです」

「やはりそうか・・・」

 え? 俺って有名人?

「エナンの街の大神官グレイ・グレイブの息子じゃろう? そして神託の子じゃ」

 そこまで知ってるなんて、この爺さん何者なんだ・・・。

「あ、貴方は一体・・・」

「ふふふ、それは・・・秘密じゃ」

 人差し指を口の前に持ってきてそんな事を言うお爺さん。いや、どこの獣神官だよ! しかもリーナさんと元ネタ作品かぶってるし! 何? もしかして7人皆そっち路線でいくの?

「まあ、言ってみたかっただけじゃ。後で説明するわい。とりあえず今は、この場を離れようと思うんじゃが?」

 確かに、ここでいつまでも無駄話(無駄ではないけど)してると、いつ屋敷の人に気付かれるとも限らないからな。

「お主は、ここにコヤツが監禁されていると知った上でここまで来たんじゃ。助ける術を持っているんじゃろ? だとしたら話は助けてからじゃ」

「確かに、仰る通りですね。
 どうします? 起こしてから連れて行きますか? それとも寝たままにします?」

「起こさずに連れて行けるのであれば、とりあえずそうして欲しいところじゃな。起きてから説明したら良いじゃろう」

 その言葉に、俺は無言で頷くと鈴木さんに『誘眠』の魔法を使い、更に深い眠りに誘う。

「これでちょっとやそっとでは起きないはずです。では連れ出す準備をしますね」

 そう言って【収納】から腕輪を出すと、鈴木さんの腕に嵌める。嵌めながら効果を説明すると、リーナさんと同じような反応をされた。やっぱり俺がおかしいのかな!?

 腕輪が無事に効果を発揮している事をお爺さんに確認したら、次は【光魔法】で光学迷彩を施すと更に『浮遊』の魔法をかける。これで頑張って運ばなくても、浮いた鈴木さんを押すだけの簡単なお仕事に早変わりだ。

 こうして俺たちは無事に、カメル伯爵の屋敷を抜け出したのだった。
しおりを挟む
感想 112

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...