うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜

双華

文字の大きさ
68 / 159
第2章 学園入学編

従話 ポチの冒険(8)後編

しおりを挟む
「もう1つ・・・なのだ?」

「うむ。主殿に経験値が送られる際の小さな次元の歪、アレを使おうと思っておるのじゃ。
 ・・・にしても、このステーキは美味しいのう」

 ついにゴブ・リーンまで我輩の作った料理を食べ始めたのだ。

 我輩【万物創造】のスキルで食べ物が作れると分かってから、色々と前世でご主人が料理番組で観ていた食べ物の再現を試みているのだ。

 野菜はないけど、ひっそり生えている薬草類で代用、肉も魔物の肉で代用しているのだ。

 後、調味料はゴブ・リーンが【錬金術】で作ってくれるのだ。

 お陰で最近、我輩は配下たちの食事担当になっているのだ。みんなの胃袋をガッチリキャッチなのだ。

 と、話がそれてしまっていたのだ。閑話休題なのだ。

「でも、経験値の時の歪は小さすぎて生き物は通れないのだ? どう言う事なのだ」

「ふぉれうわどぅな」

「いや、食べ物を口に入れたまま話しても分からないのだ。食べるか喋るかどちらかにして欲しいのだ」

 そう言うと、一瞬我輩の方を見て、

 ──ガツガツガツガツ

 まさかの、食べる方を選んだのだ!

「すまなかったのだ! 食べるのをやめて話して欲しいのだ」

「ぷはー、美味かった。
 いやー、すまんすまん。あまりに美味しくてな。止まらなくなってしまったわい。
 
 褒められると悪い気分ではないけど、時と場合を考えて欲しいのだ。

「それで、小さな次元の歪の事だが、確かにあの極微量の歪では生き物を同時に通過させる事は難しい。
 じゃがな、何度か実験した結果、僅かな魔力であれば経験値と一緒に移動が可能な事が分かったのじゃ」

 なるほど、分かったようで分からないのだ。

「もう少し分かりやすくお願いするのだ」

「これでも簡単に説明したつもりなんじゃがな・・・。
 ワシらが経験値を獲得した時に、経験値の一部が主殿に送られる。ここまでは大丈夫じゃな?」

「大丈夫なのだ」

「そしてその経験値がこの結界を超える時に、次元の歪が発生するのじゃ。そしてその歪は前回ミルクが通過した時とは違い、生き物が通れる程のスケールではない。
 そこで、ワシはどこまでなら通過できるか検証をしたのじゃ。幸い、300人近い従魔仲間達が日々経験値を稼いでおるからな。色々と検証ができた訳じゃ。
 その結果、極々僅かな魔力であれば経験値と共に次元の歪を通過させる事に成功したのじゃ」

 うーん、何となく分かったような気がするのだ?

「魔力が通過できる事はわかったけど、それでどうするのだ? 結局生き物は通れなかったら意味がないのだ?」

「そう、そうなのじゃ。良くぞ聞いてくれた。
 生き物がダメなら物質を送ることはできないか、ワシはそう考えた。
 そして、1グラムまでの重さであれば魔力に変換する事ができる魔道具〝魔力こんばーじょん1号〟を作り上げたのじゃ! 5秒程で元の物質に戻ってしまうがの」

 ずっと思っていたけど、ゴブ・リーンのネーミングセンスってご主人に通ずるものがあるのだ・・・。イヤ、これ以上は言うまいなのだ。

「でも、1グラムでは何もできないのだ? ・・・ん? そうでもないのだ?」

 1グラムのゴーレムを作れば良いのだ!

「ほほう、意外や意外、気付いたようじゃの?
 そうじゃ、そこで【収納】の付与の出番なのじゃ」

 あ、あれ。そうなのだ? 思ってたんと違うのだ。けど、恥ずかしいから話を合わせるのだ。

「や、やっぱりそうなのだ!?」

「そうじゃ。1グラムあれば何とか【収納】を付与した魔道具にする事ができる。その魔道具の中にワシの作ったオオカミ型ロボ、ガルフを入れて結界の向こうに送り込むのじゃ。そしてガルフには双方向通信が可能な機能を付けておく。常に通信する事はできないが、経験値が送られる瞬間だけなら僅かな通信も可能になるじゃろう」

 あ、ゴーレム案は意外と間違ってなかったのだ。良かったのだ。

「素晴らしいのだ! これで外の世界の事が少し分かるのだ! もしかしたらご主人ともコンタクトが取れるかもなのだ!」

「但し、この作戦には少しだけ問題があっての・・・」

「何なのだ! 少しの問題なら、吾輩すぐに解決してくるのだ!」

「1グラムの物質を送り出そうと思ったら、そこいらの雑魚の経験値で発生する歪では足りないのじゃ。
 ワシの計算によると最低でもレベル130以上の魔物を倒した経験値が送りだされたら、1グラムの物質を魔力変換したモノを一緒に送り出す事ができそうじゃ」

 何だ、どんな無理難題かと思ったら・・・それならどうにかなりそうなのだ。

「我輩、思い当たる魔物が居るからちょっと行ってくるのだ。
 ゴブは準備して待っていて欲しいのだ。倒す直前に【念話】で連絡するのだ」

「ほう、さすがポチ殿じゃ。ではワシはいつ経験値が送られてきても対応できるように準備しておくとしようかの」


 早速、我輩は【転移】で目的の場所に向かう。

 実は我輩のレベルがまだ低かった頃、1度挑んで敗走した魔物がいたのだ。ダンジョンの攻略には差支えがなかったので、そのままスルーしていたけど、その時のリベンジマッチなのだ。

 その時の詳細はいつかどこかでポチ外伝で語るかも知れないのだ!? 語らないかも知れないのだ。

 結論から言えば、我輩強くなり過ぎていたのだ。ワンパンだったのだ・・・。

 そしてその経験値がご主人に送られた時の次元の歪を使って、ガルムは無事に結界の外へ送り出されたのだ。

 まずはミルクにコンタクトを取るように指示が出してあるのだ。【念話】を付与した魔道具も渡してあるので問題ないのだ。

 これできっと事態は大きく進展するのだ。ご主人に会える日も大きく近付いたに違いないのだ!
しおりを挟む
感想 112

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...