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第2章 学園入学編
従話 ポチの冒険(8)前編
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ミルクが行方不明になってから10日程が経過したのだ。
我輩たちはミルクはこのダンジョンから脱出し、ご主人の元へ辿り着いたと推定した。そして下層を目指すことを中断して、何とか上層から脱出する方法がないか模索しいるところなのだ。
作戦の要は魔ドワーフのゴブ・リーンなのだ。1000年以上生きているゴブ・リーンの知識や技術はとても素晴らしく、色々と調査もしてくれているのだ。
「ワシをそんなに褒めても何もでないぞ。それに若い頃にこのダンジョンに連れて来られ、階層主にされたせいで、ここ最近で発達したであろう技術については疎いのじゃ」
「そんな事は無いのだ。少なくとも我輩たちの中では間違いなくナンバーワンなのだ。
我輩も【万物創造】が使えるようになっているから、手伝えることがあれば何でも言って欲しいのだ!」
「せ、拙者は応援する事しかできないでござる・・・。無念でござる。
とりあえず殿の作ったおいしい料理を頂くでござる」
食いしん坊のアドランはスルーするとして、実はこの10日程で分かった事が何個かあるのだ。
まず1つ、空間が割れる現象はあれ以来起きていない。ゴブ・リーンが一晩で時空の歪を観測できる魔道具、歪ミエール君を作ってくれたのだ。今のところその魔道具に大きな反応はない。
そしてもう1つ、先ほど大きな反応はないと言ったけど、小さな反応ならあるのだ。
具体的には我輩、もしくは配下が魔物を倒した時に小さな歪が起きているのだ。
「いやぁ、まさかこのダンジョンがこんな事になっているなんて。アナタの配下になるまで想像もしていませんでしたよ」
そう言いながら、アドランと一緒に我輩が【万物創造】で作った料理を食べているのは、1年前に仲間になった悪魔のレッド、今の名はアッカーなのだ。
「どおりでここ数百年、私たちの階層に挑戦者が現れなかったわけです。そもそもダンジョンに入る事すらできなくなってたとは。あの方からは何も連絡がなかったですしねぇ」
あの方と言うのは、悪魔たちを召喚して、階層主にした奴の事なのだ。我輩が悪魔たちを仲間にした後、色々と聞いたけど、結局正体は分からず仕舞い。ダンジョンを管理している人物で、悪魔たちを召喚し階層主としてダンジョンに組み込んだそうなのだ。ゴブ・リーンも同様、外から連れて来られて階層主にされたそうなのだ。
階層主にされてから特に連絡がある訳ではなく、数百年間ずっと言われた通り階層主として、来もしない挑戦者を待っていたそうなのだ。ちょっと可哀そうなのだ。
「しかし、次元が断絶されているようにも見えますが、マイロードへ経験値は送られている。そこに付け入るスキがあるのかも知れませんねぇ」
意外にも? アッカーも状況分析に一役買ってくれているのだ。悪魔の知識もバカにならないのだ。
「ワシもそう思って、色々と調べてはいるんじゃが、やはり生き物が通り抜けられるような歪は生まれないようじゃ。この前のはイレギュラー中のイレギュラーだったのかも知れんの」
配下たちはとても優秀で助かるのだ。だけど、その配下たちの英知を結集しても、さすがに分からない事は分からないし、できない事はできないのだ。
「我輩も最初から10日やそこらで進展するとは思っていないのだ。もう6年も頑張っているのだ後数年かかったとしても大丈夫なのだ」
何て、口では言っているけど、本音としては直ぐにでもご主人に会いたいのだ。仲間たちの前では恥ずかしくて言えないけどなのだ。
「だが、しかし! 仮説の段階ではあるが、ワシは大きな発見をしたのじゃ!」
「な、なんなのだ!?」
「経験値なら通れるのならば、経験値になれば良いのだ!」
ゴブ・リーンが何を言っているのか我輩には分からないのだ。
「なるほど! 拙者分かったのだ! 死んで経験値になれば通れるという事でござるか!」
いや、さすがにそこまでストレートじゃないと思うのだ。
「ほう、アドラン氏は珍しく冴えておるようじゃの」
って、まさかのストレート!?
「えっ、本気なのだ!?」
「いや、冗談じゃ。さすがに仮説で死ねとは言えんわい。
それとも試してみるかの?」
「せ、拙者は遠慮しておくのだ・・・」
良かった。冗談だったのだ。問題は・・・、
「で、どこまでが冗談なのだ? ゴブの事だから、何か案を持って言ってるのだ?」
「うむ。さすがに経験値になってしまうと終了じゃからな。ワシはそもそも経験値とは何か? から考えた訳じゃ。
正直、今までそんな事を考えたことはなかった。それが当たり前だと思って生きて来たからの。
しかし、ポチ殿の話を聞くとポチ殿の前世の世界にはそんなものは無かったと言うではないか?」
そう言えば、そんな話もしたのだ。我輩は最初から疑問だったけど、この世界の知識しかないモノ達はそんな疑問を持たないのだ。
「そして、細かい話は理解してもらえぬと思うので省くのじゃが、ワシは経験値とは魂の一部だと結論付けた」
「魂の一部なのだ?」
「そう、ポチ殿の話からすると生き物は死ぬと輪廻転生する。そしてこの世界では相手を殺した者には、その相手の魂の一部が引き継がれるのじゃ。同じ魂が何度も輪廻しても成長は僅かじゃ。そこで魂を混ぜ合わせ、強化するようなシステムになっているのではないかと思った訳じゃ。
もちろんそんなに単純な仕組みではないと思うが、簡単に言うとそんな感じかの?
まあ、つまり、経験値とは魂の一部、魂ならばこの結界を抜ける事ができるのではないかと思ったわけじゃ」
「なるほど、分からないのだ!」
我輩が頭をコテンと倒してそう答えると、アドランが緩んだ顔でコチラを見ていた。何なのだ? 気持ち悪いのだ。
「なるほど、つまりゴブ・リーン殿は魂だけの存在になればこの結界を超えてダンジョンを脱出できるのではないか、そう言いたいのですね?」
「そうじゃ。しかし、魂たけの存在になったとしてどうやってここを抜けたら良いのかはわからぬ。経験値になればこの世界のシステムとして自動的に、ここを通り抜けることができるのじゃろうが」
良くは分からないけど、魂だけになればご主人に会えるのだ?
「・・・と、まあ1つ目はそんな感じで行き詰っている」
「今のはボツ案だったのだ?」
「ボツではないが、検証が足りぬな。しかし、本命はもう1つあるのじゃ」
───────────
後編は明日更新します。
我輩たちはミルクはこのダンジョンから脱出し、ご主人の元へ辿り着いたと推定した。そして下層を目指すことを中断して、何とか上層から脱出する方法がないか模索しいるところなのだ。
作戦の要は魔ドワーフのゴブ・リーンなのだ。1000年以上生きているゴブ・リーンの知識や技術はとても素晴らしく、色々と調査もしてくれているのだ。
「ワシをそんなに褒めても何もでないぞ。それに若い頃にこのダンジョンに連れて来られ、階層主にされたせいで、ここ最近で発達したであろう技術については疎いのじゃ」
「そんな事は無いのだ。少なくとも我輩たちの中では間違いなくナンバーワンなのだ。
我輩も【万物創造】が使えるようになっているから、手伝えることがあれば何でも言って欲しいのだ!」
「せ、拙者は応援する事しかできないでござる・・・。無念でござる。
とりあえず殿の作ったおいしい料理を頂くでござる」
食いしん坊のアドランはスルーするとして、実はこの10日程で分かった事が何個かあるのだ。
まず1つ、空間が割れる現象はあれ以来起きていない。ゴブ・リーンが一晩で時空の歪を観測できる魔道具、歪ミエール君を作ってくれたのだ。今のところその魔道具に大きな反応はない。
そしてもう1つ、先ほど大きな反応はないと言ったけど、小さな反応ならあるのだ。
具体的には我輩、もしくは配下が魔物を倒した時に小さな歪が起きているのだ。
「いやぁ、まさかこのダンジョンがこんな事になっているなんて。アナタの配下になるまで想像もしていませんでしたよ」
そう言いながら、アドランと一緒に我輩が【万物創造】で作った料理を食べているのは、1年前に仲間になった悪魔のレッド、今の名はアッカーなのだ。
「どおりでここ数百年、私たちの階層に挑戦者が現れなかったわけです。そもそもダンジョンに入る事すらできなくなってたとは。あの方からは何も連絡がなかったですしねぇ」
あの方と言うのは、悪魔たちを召喚して、階層主にした奴の事なのだ。我輩が悪魔たちを仲間にした後、色々と聞いたけど、結局正体は分からず仕舞い。ダンジョンを管理している人物で、悪魔たちを召喚し階層主としてダンジョンに組み込んだそうなのだ。ゴブ・リーンも同様、外から連れて来られて階層主にされたそうなのだ。
階層主にされてから特に連絡がある訳ではなく、数百年間ずっと言われた通り階層主として、来もしない挑戦者を待っていたそうなのだ。ちょっと可哀そうなのだ。
「しかし、次元が断絶されているようにも見えますが、マイロードへ経験値は送られている。そこに付け入るスキがあるのかも知れませんねぇ」
意外にも? アッカーも状況分析に一役買ってくれているのだ。悪魔の知識もバカにならないのだ。
「ワシもそう思って、色々と調べてはいるんじゃが、やはり生き物が通り抜けられるような歪は生まれないようじゃ。この前のはイレギュラー中のイレギュラーだったのかも知れんの」
配下たちはとても優秀で助かるのだ。だけど、その配下たちの英知を結集しても、さすがに分からない事は分からないし、できない事はできないのだ。
「我輩も最初から10日やそこらで進展するとは思っていないのだ。もう6年も頑張っているのだ後数年かかったとしても大丈夫なのだ」
何て、口では言っているけど、本音としては直ぐにでもご主人に会いたいのだ。仲間たちの前では恥ずかしくて言えないけどなのだ。
「だが、しかし! 仮説の段階ではあるが、ワシは大きな発見をしたのじゃ!」
「な、なんなのだ!?」
「経験値なら通れるのならば、経験値になれば良いのだ!」
ゴブ・リーンが何を言っているのか我輩には分からないのだ。
「なるほど! 拙者分かったのだ! 死んで経験値になれば通れるという事でござるか!」
いや、さすがにそこまでストレートじゃないと思うのだ。
「ほう、アドラン氏は珍しく冴えておるようじゃの」
って、まさかのストレート!?
「えっ、本気なのだ!?」
「いや、冗談じゃ。さすがに仮説で死ねとは言えんわい。
それとも試してみるかの?」
「せ、拙者は遠慮しておくのだ・・・」
良かった。冗談だったのだ。問題は・・・、
「で、どこまでが冗談なのだ? ゴブの事だから、何か案を持って言ってるのだ?」
「うむ。さすがに経験値になってしまうと終了じゃからな。ワシはそもそも経験値とは何か? から考えた訳じゃ。
正直、今までそんな事を考えたことはなかった。それが当たり前だと思って生きて来たからの。
しかし、ポチ殿の話を聞くとポチ殿の前世の世界にはそんなものは無かったと言うではないか?」
そう言えば、そんな話もしたのだ。我輩は最初から疑問だったけど、この世界の知識しかないモノ達はそんな疑問を持たないのだ。
「そして、細かい話は理解してもらえぬと思うので省くのじゃが、ワシは経験値とは魂の一部だと結論付けた」
「魂の一部なのだ?」
「そう、ポチ殿の話からすると生き物は死ぬと輪廻転生する。そしてこの世界では相手を殺した者には、その相手の魂の一部が引き継がれるのじゃ。同じ魂が何度も輪廻しても成長は僅かじゃ。そこで魂を混ぜ合わせ、強化するようなシステムになっているのではないかと思った訳じゃ。
もちろんそんなに単純な仕組みではないと思うが、簡単に言うとそんな感じかの?
まあ、つまり、経験値とは魂の一部、魂ならばこの結界を抜ける事ができるのではないかと思ったわけじゃ」
「なるほど、分からないのだ!」
我輩が頭をコテンと倒してそう答えると、アドランが緩んだ顔でコチラを見ていた。何なのだ? 気持ち悪いのだ。
「なるほど、つまりゴブ・リーン殿は魂だけの存在になればこの結界を超えてダンジョンを脱出できるのではないか、そう言いたいのですね?」
「そうじゃ。しかし、魂たけの存在になったとしてどうやってここを抜けたら良いのかはわからぬ。経験値になればこの世界のシステムとして自動的に、ここを通り抜けることができるのじゃろうが」
良くは分からないけど、魂だけになればご主人に会えるのだ?
「・・・と、まあ1つ目はそんな感じで行き詰っている」
「今のはボツ案だったのだ?」
「ボツではないが、検証が足りぬな。しかし、本命はもう1つあるのじゃ」
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後編は明日更新します。
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