うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜

双華

文字の大きさ
95 / 159
第3章 王都騒乱編

第15話 救援依頼

しおりを挟む
 俺は今、南に向かって飛んでいた。

 ダンジョンを出た俺たちを待っていたゼムスさんに緊急クエストを依頼されたのだ。

 俺、今日は朝から働きすぎだと思うんだよね。何て言ってる状況でもなく。依頼の内容は聖女の救援だった。

 聖女・・・、そうエナンの街に居た時は巫女候補だったレミだ。確か、聖女に祭り上げられて南の港町オーシャにいたはず。

 どうやらレミは王都に向かえと【神託】を受けたそうで、王都に向かっているとついさっき、早馬でゼムスさんに連絡が届いたそうだ。

 向こうを出発した日時から逆算したら、昨日エナンの街を通過したくらいではないかとの話だ。

 順調なら、今日の午後には鈴木さんが盗賊に捕まっていた森を通過する。魔物の変異がどの範囲まで影響しているかはまだ分からないけど、聖女を危険な目に遭わせる訳にはいかないとの事で、俺に依頼が来た。

 さすがに今回ジョージは置いてきた。ジョージの代わり? に、お供としてガルムを3体ほどボールに戻して持って来ている。

 リーダーのコガルムはゼムスさんの屋敷で待機、アガルムはリーナさん預かり、残りのガルム隊は王都周辺の見回りに出てもらっている。シルクもまだ勝手が分からないだろうから屋敷待機だ。



 夕暮れ近くなり、森の中にある宿場町の近くに到着した。よし、とりあえず広範囲を探知しよう。

 そう思ったところで、視界の片隅に煙が上がっているのが見えた。

「不味い、既に戦闘が起こってるのかな」

 俺は急いで煙が上がっているところに向かうと、やはり戦闘中のようで怒声や叫び声が聞こえる。

 聖女の移動だからそれなりの神殿騎士が護衛に付いているはず。まだ、大事には至ってなければ良いけど。

 【サポーター】さん、広域探知と結果報告を!

《承知しました。【鑑定】も合わせて実施します》

 指示してない事までやってくれる。さすが【サポーター】さんだ。

《結果を報告します。
 オーク(変異種)が6体にオーガ(変異種)が1体です。
 レベルはオーク(変異種)がプラス値込みで50前後で、オーガ(変異種)が80です。
 戦闘中の人はレベル33~50の9名、それと馬車に3名乗っています。
 また9名の内、半数が負傷して戦えないようですが、死者はいません》

 ありがとう。意外とヤバかったかも。でも死者がいないなら、間に合ったのかな? 良かった。

 それに、そのレベル帯なら、まず間違いなく聖女一行だろう。

「くっ! 殺せっ」

 ケガで動けなくなった女性騎士の人がオーク相手にそんなセリフを吐いてたけど、スルーしてまずは全員回復させよう。

 俺はスキルレベルと魔力にモノを言わせて広範囲に高位回復魔法を発動する。魔物も範囲に入るけど、大してダメージを負って無いみたいだから良いだろう。

「くそっ! 動けない私は今からオークにあんな事やこんな事をされて蹂躙されるのだ!
 ・・・あれ? 体が動く」

 さっきの女性騎士さんはまだ変な事を言っていたけど、急にケガが治って驚いている。

「神官長の依頼で助けに来ました! 全員に回復魔法をかけましたので、下がってください!」

 俺はそう叫ぶと【収納】からガルムボールを取り出す。

「よし、行け! ガルム!」

 ボールを投げるとガルムが3体現れる。

「よし、状況は分かるかな? オッケー、じゃあガルム1体でオーク2体ずつ倒してくれ。僕はオーガをやる」

 呼び出してすぐに状況を理解してくれたガルムに指示を出し、俺はオーガの変異種に向かう。【従魔超強化】の影響でステータスも向上しているガルムの方が素の能力は高いんだけど、レベル80程度の魔物なら俺がやっても良いだろうとの判断だ。

 まあ、レベル80程度とか言っても、俺が今まで戦った魔物の中では一番高いんだけどね。

「お、おい、君。あいつはタダのオーガじゃない。やめるんだ。自殺行為だぞ」

 護衛騎士のリーダー格の人が俺に話しかけてきた。レベルだけみたらゴブリンキングを軽く凌駕している訳だから、確かに自殺行為だ。普通の冒険者なら。

「大丈夫です。僕はこう見えてもSランクの冒険者です」

「え、Sランク!?」

 何て話している間にも、ガルムたちがサクサクとオークの変異種を倒していく。

「え? 何だあの黒い・・・オオカミ? 俺たちが苦戦していたオークをアッサリと・・・」

「彼らは僕の従魔です。人に手出しはしませんので安心して下さい」

 正確にはちょっと違うけど、広い意味では従魔で間違いないはずだ。何て考えていたら、オークが全滅していた。

〈おう、主殿終わったぞ〉

 ガルムの1体から【念話】が届く、この個体はウガルムだったかな? 口が悪いが、噂ではツンデレらしい。シルクが言ってた。

「ありがとう、後は僕がやるから待機してていいよ」

 そう言って、1歩前に出ると【収納】から自慢の一振りを取り出し構える。すると、今まで様子を伺っていたオーガも臨戦態勢を取る。

 オーガは通常2~3メートル程の鬼のような魔物だ。変異したこのオークは4メートルに迫る大きさとなっている。

「ぐおぉぉぉ!」

 しかし、その巨体からはとは思えないような速さで俺に向かい突進してきた。そして俺とのすれ違いざまに、手にしたこん棒を横薙ぎにしてくる。

 思ったより速いけど、対処できないスピードではないな。俺は最小限の動きで、その攻撃を避けると逆に足を切り裂く。その痛みに耐えきれなかったのか、そのまま俺の後ろの方に突っ込んで倒れた。

 そのまま騎士さんに突っ込みそうになったところを、ウガルムが前足で止めてくれてた。

「えっ? 何が起きたんだ? オーガが消えたと思ったら、目のまえで足から血を流して倒れて・・・?」

 リーダー格の騎士の人でも、このオーガのスピードには付いていけなかったらしい。このオーガが最初から戦闘に参加していたら、救助は間に合わなかったかも知れない。オークに任せて高みの見物をしていてくれて助かった。

「すみません。そっちまで行ってしまいました。
 以後気を付けます」

 以後なんてもう無いんだけどね。

「いいよ、ウガルムそのままやっちゃって」

 俺がそう言うと、ウガルムは頭を止めていた前足を振り下ろす。俺が拘って出しゃばるところでもないからね。そこにオーガの頭に乗ったウガルムの前足があれば、そのまま倒して貰う方が手っ取り早い。

《ウガルムが取得した経験値の一部を獲得しました。
 【そして伝説へ】のスキルレベルが2に上がりました》

 後、従魔が倒した方が俺に入る経験値も多いからね。レベル80程度ではもう俺のレベルは上がらないけど、スキルレベルは上がったようだ。ラッキー!

「リョーマ?」

 丁度倒し終わったところで、馬車から様子を伺っていた人物が出て来た。

「お久しぶりです。レミ」 
しおりを挟む
感想 112

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...