うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜

双華

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第3章 王都騒乱編

第23話 スタンピード

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 飛んで移動したとは言え、ダイダの街に着く頃には辺りは薄暗くなっていた。

「リーナさん、お疲れ様でした。
 ジョージもお疲れ」

「ああ、ホントに疲れた・・・。何度か死ぬかと思ったぞ」

 ここに来る途中、街道沿い(正確には街道から数キロ程度まで)に魔物を発見する度に降りて退治して来た。

 レベル上げも兼ねているので、俺は援護のみ。2人に頑張って貰った。カガルムはボールにして持っているだけだ。カガルムが本気を出したら、いくら変異した魔物とは言え、一瞬で倒しちゃうからね。

 【酔拳】を覚えたジョージは基本的に近接戦だ。調子に乗って突っ込むから、何度か危なかったけど、想定の範囲内だから問題ない。

「だけど、それに見合うだけのレベルアップはしたでしょ? 寧ろそれ以上だよね?」

「うん、まあそこは否定しないさ。
 まさか、1日でレベル50になるとは思わなかったぞ。さすがチートの王、リョーマ様だ」

 また新しい称号を頂いてしまった。要りません。

 魔物のレベルは変異によって最低でも40前後、俺のスキルで経験値が大幅に増えた事もあり、ガンガンレベルが上がった。それはもう見てるこっちも楽しくなるくらいに。

 それもあって調子に乗って何度か危なかったってのもあるけどね。

「私もレベル80台に到達したわ。そこだけは魔物を変異させた自称神様に感謝かしらね?
 でも、魔物の数が増えてる訳じゃなくて良かったわ。街道沿いは元々定期的に討伐隊が組まれてるのもあってそんなに多くないけど、普段の魔物の数くらいだったわ」

 なるほど、リーナさんは俺が王都に来る前から王都で冒険者をしていたので、この辺りの魔物分布にも詳しいんだろう。

「ところで、そろそろ暗くなるけど、今から王都に帰るの?」

 そう言われて辺りを見渡すと、先ほどまで薄暗かった空が完全に暗くなりかけていた。

「そうですね。今日はダイダの街に泊まって明日の朝明るくなってから帰る事にしますか?
 幸い、この街でお勧めの宿を知っています」

 そう、お勧めの宿ジョージの実家

「待て待てリョーマ。それって俺の実家じゃないだろうな?」

 おっと、もう気付かれた。

「何を言ってるんだジョージ。僕がそれ以外にこの街で泊れる場所を知っているとでも?」

「思わないけど・・・いきなり王女様を連れて行けば、どんな騒ぎになるか」

「大丈夫、バレなければ何てことはないよ」

「そうかな? まあ、他に当てがないのも確かだろうし、とりあえず俺の実家に行くか」

 何だかんだいいつつ、ジョージは自分の実家に案内してくれるみたいだ。良かった。

 ☆

「リ、リ、リ、リ、リーナ王女ではありませんか!!」

 ジョージの実家について、ジョージの父親に挨拶に行ったら、速攻バレた。あれ、おかしいな。

「いえ、私は冒険者のリーナ。ジョージさんのお友達です。それ以上でもそれ以下でもありませんよ」

「そ、そうは言われましても・・・これでも私は商人の端くれです。王女様のご尊顔を見間違える訳・・・。
 ・・・いえ、そうですね。貴女は愚息の友人で冒険者のリーナさんです。ようこそワトソン家へ。歓迎します」

 どうやら、一発でバレたけど冒険者のリーナさんとして扱ってくれるようだ。ジョージの父親の中でどんな葛藤があったのかは分からないけど、結果オーライって事で。

「すまない親父。そう言う事だから、部屋を1つと豪華な夕飯を頼む」

「全く、昨日急に居なくなったと思ったら、想定外の客人を連れて帰ってくるとは。あとで詳しく聞かせてもらうからな」

 ジョージ親子がそんな話をしているのを横目に、俺とリーナさんは応接室で出されたクッキーに舌鼓を打つ。と言っても、俺がワトソン商会に納品したクッキーなんだけどね。

 とりあえず、泊めて貰えそうでよかった。


 ただのリーナさんと言う事になったとは言え、王女様と気付かれている訳で、物凄く豪華な夕食を頂いた。あの時間からこれだけのものを準備するとか、ジョージの父親・・・と言うか、ジョージの家の料理人は物凄く頑張ったんじゃないだろうか? 悪い事したかな。

「それではリーナ様・・・リーナさん、お部屋をご用意させて頂きましたのでメイドに案内させます。
 リョーマ君は今日もジョージの部屋でいいのかな?」

「ワトソンさん。ご配慮ありがとうございます。それではおやすみなさい」

 そう言うと、リーナさんはメイドに連れられで部屋を出て行った。

「僕はジョージの部屋で全然問題ありません。本当にありがとうございます」

「いや、こちらこそ王族とのコネクションを作らせてもらって感謝しているよ。
 ジョージがリーナ様と面識ある訳ないからな。お連れしてくれたのはリョーマ君なんだろう?」

「本当、急に連れて来て申し訳ありませんでした。そして冒険者のリーナさんとして扱って頂いてありがとうございます」

「それは構わないよ。むしろ王女のリーナ様をこんな所にお泊めする訳にはいかないからね。あの方は冒険者のリーナさんだよ」

 ジョージの父親はこんなところって言っているが、有力な商会の会頭なだけはあり、ここ以上の家をこの街で探すのが大変なくらいだ。ここがダメなら領主の館くらいしか王女のリーナ様が泊まれるところは無いんじゃないだろうか?

「すまない親父。事前に連絡できたら良かったけど、それどころでもなかったんだ」

「ふむ。それは周辺の魔物が狂暴化している事と何か関係があるのかな?」

「親父、どこでその事を!?」

「昨日、今日で色々と噂は耳にしている。リョーマ君が救ってくれた牧場の冒険者たちからも話を聞いたからね。
 冒険者たちを救った後、急に出て行ってリーナ様を連れて帰ってきた。何か関連でもあるのかなと、ちょっと思っただけだよ」

 少しの情報からそこまで結びつけるとは、さすが大きな商会を運営しているだけの事はある。

「まあ、今日は疲れているようだからゆっくり休むといい。ジョージにはまた日を改めて説明してもらうからな」

 そう言われ、この場はお開きとなった。そのままジョージの部屋に戻り、今日は休む事にした。

 ☆

「ジョージ! リョーマ君! すまない、起きてくれ!」

 明け方、まだ外も暗い内にジョージの父親が俺たちを起こしに来た。

「親父、こんな朝早くどうしたんだ?」

「冒険者ギルドに居る情報員から連絡があった。スタンピードだ。どうやら西から狂暴化した魔物の群れが街を目指して進行中らしい。
 リョーマ君、客人にこんなことをお願いするのも忍びないが、ダイダの街を守ってくれないか?
 この街は現在Bランクまでの冒険者しか居ないらしいんだ。Aランクの君が今この街の最高ランクなんだよ」

 どうやら、ジョージの父親は色々な情報網を持っているようだ。商人にとって情報は命だからね。

「親父、その情報は古いぜ。リョーマは昨日Sランクに昇格したんだ」

「何と! その歳でSランクに・・・。ジョージは凄い友達に出会ったんだな」

 ジョージの父親が何か1人で感動してるけど、とりあえず冒険者ギルドに行けばいいのかな?
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