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第3章 王都騒乱編
第30話 神殿にて
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ゼムスさんの屋敷で話を聞いた俺たちは、そのまま王都の神殿に向かう。もちろん、その前にミルクとシルクにはお菓子をたっぷり出して上げた。
詳しく話を聞くと、2人で100匹近くの魔物を退治したらしい。かなり頑張ってくれたみたいだ。2人と一緒に行ったコガルムは1体で更に先行して無双してたらしいけどね。北の街道沿いには既に魔物が居ないとか・・・。
そのままゼムスさんの屋敷でお菓子を食べるのかと思ったら、折角だから神殿についてくるらしい。と言う事で、神殿に向かうのは俺とミルクとシルク。それにリーナさんとジョージ。更に鈴木さんと太郎さんだ。結構大所帯になってしまった。
ガルムたちはとりあえずボールに戻して持ってきている。アガルムだけゼムスさんの屋敷の警護に置いて来た。
他の街と同様、王都も神殿は街の中心にある。王城のすぐ近くだ。守衛に着くと、鈴木さんが1歩前にでる。
「ゼムス様の屋敷の執事の鈴木です。ゼムス様に取次ぎをお願いします」
普段はゼムスさんと呼んでいる鈴木さんも、さすがにここではゼムス様と呼ぶらしい。まあ、当然か。
「あ、これは鈴木さん。こんにちは。すぐに確認しますのでお待ちください」
守衛の騎士さんはどうやら鈴木さんと顔見知りだったらしく、挨拶をするとそのまま神殿の中に走っていった。1年も執事をやっていると神殿に来る機会もあるんだろう。
「王都の神殿に来るのも久しぶりね」
「そうなんですか? 王城も近いし、結構来てるのかと思ってましたよ」
「そもそも私は王城に住んでないし、信仰心がそんなにある訳でもないからね。滅多に来ないのよ」
確かに、リーナさんに信仰心はなさそうだ。逆に太郎さんは初めての神殿に興味深々だ。
「ここが神殿なんですね。いかにもファンタジーって感じでテンションが上がります」
そう言えば、俺はもう何年もこの世界にいるから新鮮さはないけど、太郎さんはまだこの世界に来て数日だった。確かに見るもの全てが新鮮なのかも。
そんな話をしていると、神殿の中に入って行った騎士の人が戻ってくる。
「お待たせしました。ゼムス神官長がお待ちです。中にどうぞ」
騎士の人に案内され、大きな会議室に通された。
「ゼムス神官長はこちらです」
ノックをして、返事を待って部屋に入る。部屋に入ると、ゼムスさんとシーラ様、それにレミとソラの4人が居た。
「リョーマ師匠! お疲れ様です」
部屋に入ると、真っ先にソラにそう言われる。そう言えば忘れかけてたけどソラの師匠になったんだっけ。呼び方もリョーマさんからリョーマ師匠になってるし。
「お二人とも長旅お疲れ様です。昨日と今日の移動は大丈夫でしたか?」
「ええ、ガルムたちが頑張ってくれて、何度か変異した魔物に襲われたんだけど、助けてくれたわ」
話を聞くと、ガルムたち・・・イガルム、ウガルム、エガルムの3体は最低1体が馬車の護衛をしつつ、街道沿いと少し離れた場所まで魔物を退治してくれていたらしい。南の街道沿いもしばらく大丈夫そうだね。
ガルムたちはそのまま王都に入って騒ぎになるといけないと、自発的にボールに戻ったそうだ。レミからボールを3つ受け取る。
「しかし、あれじゃの。聖女様はタイミングが良かったのか悪かったのか、絶妙なタイミングで王都にやってきたのぉ。
やはり、王国の危機に関しての【神託】を受けて来たのかの?」
「いえ・・・。あ、そうです。この難局を共に乗り越える為にここに来ました!」
うん。また【嘘感知】がビンビンですよレミさん。確か先日助けた後に個人的な【神託】がどうとかって小声で言ってたよね。その内容も気になるけど、今はそれを聞いてる場合じゃないからな。
「それでゼムスさん。大まかな状況は鈴木さん聞きましたが、どうしましょうか」
「ああ、それをみんなで話し合う為に来て貰ったんじゃ。とりあえずみんな座ってくれ」
俺たちがイスに座ると、鈴木さんが慣れた手つきでお茶をいれてくれた。執事歴1年にもなるとスムーズだ。
「まずは自己紹介かの? ワシは全員知ってるからワシから紹介するかの」
そう言ってゼムスさんが、それぞれの名前を紹介していく。異邦人とかは抜きで、名前だけだ。シーラ様やレミたちに転生者や転移者の話をしても混乱するだけだろうからね。
「それで、リョーマは聖女様とシーラ殿にどこまでお話したのかの?」
「はい、先日救助した後に国家転覆を企てている王族が勇者召喚をした話はしています。
その影響で魔物が変異している事も」
「なるほどの。ワシの方ではリョーマ達が来るまでの間に、今朝のミーナ王女の演説について話をしていた所じゃ。
さて、シーラ殿。ここまでの話を整理して、どうお考えになられる?」
ゼムスさんはこのメンバーで一番・・・と言うかダントツで最高齢のシーラ様に見解を求める。
「そうですね・・・。自らの行いで招いた惨事を逆手にとり、女神様の名を語り勇者召喚を正当化するなんて許せません。
女神様の意思ではない事を神殿として大体的にアピールする必要がありますね」
うんうん。それは俺も考えてた。
「幸いにもここには聖女のレミも居ます。お忍びでとの事でしたので王都のみなさんはまだ聖女が王都に来ている事を知りません。まずそれを周知して、レミに演説でもしてもらいますか?」
勇者という駒を手に入れ、変異した魔物の対抗手段だったと大義名分も得た。全て順調に見えて調子に乗っているところに、女神様の代弁者である聖女が現れて事実を公表する。
あ、その前に王様も助けた方が良いかな? 毒を盛って動けないはずの王様も聖女と共に登場する。
やばい。こんな大変な時に不謹慎かも知れないけど、何か楽しくなってきた。
「水戸のご老公的な感じね。良いね! 私演説するよ」
そうそう。俺も前世で好きだったんだよね。勧善懲悪物ってやつ?
・・・ん? あれ? 何でレミからそんなセリフが出るんだ?
そう言えば先日もボソッと武士がどうのとか言ってたような。
詳しく話を聞くと、2人で100匹近くの魔物を退治したらしい。かなり頑張ってくれたみたいだ。2人と一緒に行ったコガルムは1体で更に先行して無双してたらしいけどね。北の街道沿いには既に魔物が居ないとか・・・。
そのままゼムスさんの屋敷でお菓子を食べるのかと思ったら、折角だから神殿についてくるらしい。と言う事で、神殿に向かうのは俺とミルクとシルク。それにリーナさんとジョージ。更に鈴木さんと太郎さんだ。結構大所帯になってしまった。
ガルムたちはとりあえずボールに戻して持ってきている。アガルムだけゼムスさんの屋敷の警護に置いて来た。
他の街と同様、王都も神殿は街の中心にある。王城のすぐ近くだ。守衛に着くと、鈴木さんが1歩前にでる。
「ゼムス様の屋敷の執事の鈴木です。ゼムス様に取次ぎをお願いします」
普段はゼムスさんと呼んでいる鈴木さんも、さすがにここではゼムス様と呼ぶらしい。まあ、当然か。
「あ、これは鈴木さん。こんにちは。すぐに確認しますのでお待ちください」
守衛の騎士さんはどうやら鈴木さんと顔見知りだったらしく、挨拶をするとそのまま神殿の中に走っていった。1年も執事をやっていると神殿に来る機会もあるんだろう。
「王都の神殿に来るのも久しぶりね」
「そうなんですか? 王城も近いし、結構来てるのかと思ってましたよ」
「そもそも私は王城に住んでないし、信仰心がそんなにある訳でもないからね。滅多に来ないのよ」
確かに、リーナさんに信仰心はなさそうだ。逆に太郎さんは初めての神殿に興味深々だ。
「ここが神殿なんですね。いかにもファンタジーって感じでテンションが上がります」
そう言えば、俺はもう何年もこの世界にいるから新鮮さはないけど、太郎さんはまだこの世界に来て数日だった。確かに見るもの全てが新鮮なのかも。
そんな話をしていると、神殿の中に入って行った騎士の人が戻ってくる。
「お待たせしました。ゼムス神官長がお待ちです。中にどうぞ」
騎士の人に案内され、大きな会議室に通された。
「ゼムス神官長はこちらです」
ノックをして、返事を待って部屋に入る。部屋に入ると、ゼムスさんとシーラ様、それにレミとソラの4人が居た。
「リョーマ師匠! お疲れ様です」
部屋に入ると、真っ先にソラにそう言われる。そう言えば忘れかけてたけどソラの師匠になったんだっけ。呼び方もリョーマさんからリョーマ師匠になってるし。
「お二人とも長旅お疲れ様です。昨日と今日の移動は大丈夫でしたか?」
「ええ、ガルムたちが頑張ってくれて、何度か変異した魔物に襲われたんだけど、助けてくれたわ」
話を聞くと、ガルムたち・・・イガルム、ウガルム、エガルムの3体は最低1体が馬車の護衛をしつつ、街道沿いと少し離れた場所まで魔物を退治してくれていたらしい。南の街道沿いもしばらく大丈夫そうだね。
ガルムたちはそのまま王都に入って騒ぎになるといけないと、自発的にボールに戻ったそうだ。レミからボールを3つ受け取る。
「しかし、あれじゃの。聖女様はタイミングが良かったのか悪かったのか、絶妙なタイミングで王都にやってきたのぉ。
やはり、王国の危機に関しての【神託】を受けて来たのかの?」
「いえ・・・。あ、そうです。この難局を共に乗り越える為にここに来ました!」
うん。また【嘘感知】がビンビンですよレミさん。確か先日助けた後に個人的な【神託】がどうとかって小声で言ってたよね。その内容も気になるけど、今はそれを聞いてる場合じゃないからな。
「それでゼムスさん。大まかな状況は鈴木さん聞きましたが、どうしましょうか」
「ああ、それをみんなで話し合う為に来て貰ったんじゃ。とりあえずみんな座ってくれ」
俺たちがイスに座ると、鈴木さんが慣れた手つきでお茶をいれてくれた。執事歴1年にもなるとスムーズだ。
「まずは自己紹介かの? ワシは全員知ってるからワシから紹介するかの」
そう言ってゼムスさんが、それぞれの名前を紹介していく。異邦人とかは抜きで、名前だけだ。シーラ様やレミたちに転生者や転移者の話をしても混乱するだけだろうからね。
「それで、リョーマは聖女様とシーラ殿にどこまでお話したのかの?」
「はい、先日救助した後に国家転覆を企てている王族が勇者召喚をした話はしています。
その影響で魔物が変異している事も」
「なるほどの。ワシの方ではリョーマ達が来るまでの間に、今朝のミーナ王女の演説について話をしていた所じゃ。
さて、シーラ殿。ここまでの話を整理して、どうお考えになられる?」
ゼムスさんはこのメンバーで一番・・・と言うかダントツで最高齢のシーラ様に見解を求める。
「そうですね・・・。自らの行いで招いた惨事を逆手にとり、女神様の名を語り勇者召喚を正当化するなんて許せません。
女神様の意思ではない事を神殿として大体的にアピールする必要がありますね」
うんうん。それは俺も考えてた。
「幸いにもここには聖女のレミも居ます。お忍びでとの事でしたので王都のみなさんはまだ聖女が王都に来ている事を知りません。まずそれを周知して、レミに演説でもしてもらいますか?」
勇者という駒を手に入れ、変異した魔物の対抗手段だったと大義名分も得た。全て順調に見えて調子に乗っているところに、女神様の代弁者である聖女が現れて事実を公表する。
あ、その前に王様も助けた方が良いかな? 毒を盛って動けないはずの王様も聖女と共に登場する。
やばい。こんな大変な時に不謹慎かも知れないけど、何か楽しくなってきた。
「水戸のご老公的な感じね。良いね! 私演説するよ」
そうそう。俺も前世で好きだったんだよね。勧善懲悪物ってやつ?
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