うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜

双華

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第3章 王都騒乱編

第29話 王都の陰謀

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 ゼムスさんから【念話】で問題発生の連絡をもらった俺たちは、急いで王都に向かう。

 もちろん移動は空を飛んでるんだけど、ジョージは悟りの境地に達したのか、とても静かだ。いつもなら泣き叫んでるのに。

 慣れたのか諦めたのか、分からないけどね。

 あれ、ジョージはとりあえずダイダの街に置いて来ても良かったのかな? 勢いで連れて来ちゃったけど。・・・まあ本人も拒否しなかったからいっか。

「全く、のんびりお昼を食べる時間もなかったわね。
 お陰で飛びながらお菓子を食べる羽目になったわ」

 リーナさんはそう言いながら、隣を飛んでいる。もちろん食べているのは、俺が【万物創造】で作ったお菓子だ。材料は【収納】の中に、それこそ売るほどあるからね。ワトソン商会の物だけど、自分たちで食べる分くらいは好きに使って良いと許可も貰っている。

「それにしても、王都で緊急事態って多分勇者か姉たち絡みの話よね・・・。今から憂鬱だわ」

 ゼムスさんも問題発生で忙しいらしく、詳細までは教えてくれなかった。戻ったら話すから、とりあえず急いで帰ってきてくれと。

 それにしてもこの数日でダイダの街と王都を何往復もして疲れて来たな。そろそろ瞬間移動的なスキルが欲しいところだ。定期的に届くポチからのメッセージでは、ポチはそれ系のスキルを持っているって話だったし。羨ましいなぁ。


 そんな事を考えている間に王都に到着する。

 街中はそんなに問題があるようには見えないから、まずは一安心だ。

 街の様子を伺いつつ、そのままゼムスさんの屋敷の庭に降り立つ。

「おかえりなのー! 待ってたの! 聞いて欲しいの。ミルク達、いっぱい魔物退治してきたの! ご褒美のお菓子が欲しいの」

 降り立つなり、ミルクに捕まりマシンガントークが飛んできた。

「た、ただいま。後で上げるから待っててね。
 問題発生らしいから、先に話を聞いてからね」
 
 後ろでブーブー言ってるミルクをスルーして、いつもの打ち合わせ部屋に向かう。

 部屋には鈴木さんと太郎さんが居た。何故か太郎さんまで執事服だ。

「お帰りなさいませ!」

 部屋に入ると太郎さんが腰を90度に曲げて元気に挨拶をしてくる。何か信者度増してない?

「た、ただいま戻りました。何か問題があったと連絡がありましたが」

「はい。ゼムスさんは忙しくて神殿から戻れないので、私が説明します」

 どうやらゼムスさんは不在で鈴木さんが説明してくれるみたいだ。

「まず、昨夜から徐々に近隣の街の領主達が王都に集まりつつあります。
 神殿が入手した情報では、王命で急いで集まるようにと召集が掛かったとの事です」

 なるほど、ダイダの街の領主も隊長格の兵士たちを連れて王都に向かったって話だったし、召集が掛かったからだったんだね。

「それでダイダの領主は少数精鋭で急に街を出たのね」

 各自が乗馬して夜を徹して移動したら、朝までに王都に着けるだろうからね。

「ただ、王城内の情報源からの話では、この数日王の姿を見た者が居ないとのことです」

「確かに。僕が召喚された日も王様には会っていません。
 国として召喚したのに、王様に会わせないのは何でだろうとは思っていました」

 なるほど、リーナさんの兄姉たちが勇者召喚に合わせて何か企てているのか、他の何かがあるのか。とにかく良くない事が起きていそうな気がする。

「それだけかしら? 確かにお父様の姿を見た人が居ないと言うのは心配ではあるけど、急いで帰ってこいって言うほどではないわよね?」

「ええ、その通りです。
 もう1つあります。ミーナ王女が勇者の召喚を大々的に発表しました」

「姉が?」

「今朝、王城の前で演説したそうです」

 勇者の召喚を発表したと言う事は、反乱を企てている王族の1人かな?

「ミーナ姉さん。今回の主犯格ね」

 主犯格らしい。

「録音した魔道具がありますので、再生します」

 そう言うと、鈴木さんは魔道具を取り出す。

 この世界には高価ではあるが、音声を記録する魔道具が存在している。残念ながら映像を記録する魔道具はまだない。その内作りたいな。

 鈴木さんが魔道具を操作すると、音声が流れ始めた。


『お集まり頂いた皆様。王女のミーナです。
 既にお聞き及びの方もいらっしゃると思いますが、ここ数日で各地の魔物が狂暴化しています。
 中には兵士や騎士、冒険者の手に負えないような魔物も多数発生していると聞いています』

 そこで、ミーナ王女は一呼吸置く。魔道具からは、聞いていたであろう民衆がザワザワと騒ぎ始める声が入っていた。

『お静かに! ですが、心配には及びません。女神様は私たちに希望を与えて下さいました』

 またミーナ王女が一呼吸置くと、民衆からは感嘆の声や、良かったといった声が聞こえてくる。

『女神様が勇者様を2人遣わして下さったのです!』

 録音は長時間出来ないらしく、ここで終わっていた。

「この後、勇者が出て来て、王城前の広場は多いに盛り上がったそうです」

「なるほど、魔物が変異したのを逆手にとって、勇者を使って国を救った既成事実を作る方向にシフトしたのかしら?」

 そうしたら、近隣の領主たちを集めたのは、その事をアピールするのが狙いなのかな?

「勇者を2人って事は、僕は居なかった事になってるんですね。ちょっと寂しい気もしますが、良かったです」

 太郎さんはステータスを偽装していたし、居たとしてもカウントはされていなかった可能性もあるけどね。

「だけど、どうしましょうかね。勇者召喚を大々的に発表されると勇者を倒して、はいお終いって訳にも行かないですよね?」

「そうね。魔物の変異を受けて、勇者が現れた事をアピールする。確かに良い手を打たれたわ。
 そして王は病気で急逝し、国の危機を救った自分が次の王になると言うシナリオかしらね?
 勢いで召喚したっぽいのに、よく考えたわね」

「はい。その辺りも含めて、この後どう動くのかを相談したいので、ゼムスさんから話を聞いたら神殿に来て欲しいと言われています。
 神殿としては女神様の名を使ったミーナ王女は許せないそうです」

 ああ、そうだよね。実際には勇者を召喚したせいで魔物が変異しているんだ。それを女神様を使って正当化しようとしている。神殿としては許せる訳ないか。

〈リョーマ。そろそろ話を聞き終わった頃かの?〉

 そう考えていたら、丁度ゼムスさんから【念話】が届いた。

〈はい。丁度聞き終わったところなので、今から神殿に行こうと思います〉

〈待っておるぞ。それとこちらにも丁度聖女殿が着いたところだ〉

 すっかり忘れてたけど、レミが到着したようだ。

「リョーマ! それよりお菓子はまだなのー?」

 あ、こっちもすっかり忘れてた。
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