うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜

双華

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第3章 王都騒乱編

第44話 魔王様と真の勇者

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 少し待っていると城門が開いた。そして、2人の勇者を先頭に兵士たちが出てくる。

 因みに、【魔物支配】で集めた魔物は街の外200メートルくらいの所に待機させている。今回、この魔物たちはここに待機するだけの簡単なお仕事です。

 俺とアクモンはその10メートルくらい前だ。檻に入れられた王様も一緒に居る。王様が檻の中とか、実は結構シュールな絵かも・・・。

 一方、出て来た勇者様だが、ピカピカの鎧に豪華な剣を持っている。兜をかぶっていないのは見ている人に顔を売る為だろうか? それにしてもレベルは一応80だけど、戦闘経験のない勇者にいきなり魔物の群れを殲滅とかできるのかな? 今回は必要ないけど、本当に攻めて来てた場合。

《この数日で多少の戦闘訓練はしていると考えられます。また戦闘系のスキルや魔法も人類最高(笑)のスキルレベル5はあるみたいなので、余裕だと考えているのでしょう》

 うーん。そんなもんかな? でも魔物と戦う心構えとかは・・・奴隷の首輪をしているから強制か。

「我こそは、異世界より召喚されし勇者タクヤだ! 命が惜しければ、王を置いてすぐに立ち去れ!」

 おっと、戦う前に交渉をするつもりなのかな?

〈リョーマ様、どうしますか?〉

 うーん、どうしようかな?

「どうした? まさか言葉も通じない蛮族なのか?」

「きゃはは。タクヤ、所詮こいつらは魔物なのよ。人間様の言葉なんて通じないんじゃないの?」

 うわぁ、本当に「きゃはは」とか笑う人を初めてみたよ。鈴木さんの時もそうだったけど、奴隷の首輪って行動が縛られるけど人格が変わるとか、そんな事はないから素がこうなんだろうなぁ。

〈アクモン、とりあえず交渉は適当に切り上げて作戦通りやっちゃおう〉

〈承知しました〉

「いやぁ、失礼しました。あまりにお粗末な勇者が出て来たので唖然としていたのですよ。
 言葉も通じない蛮族とは、私たちを魔王軍と知っての狼藉ですか?」

「なんだ、喋れるんじゃないか。高々平均レベル60くらいの魔物の群れを連れて、いい気になってるんじゃねぇ。
 お前たちに【鑑定】レベル5の俺たちは【鑑定】できないだろうから、教えてやろう。
 俺たちは2人とも人類史上最強、レベル80だ!」

「「「おおおおーー!!」」」

 うわぁ、凄く・・・ドヤ顔です・・・。後ろの兵士たちもそれを聞いて雄叫びを上げている。

 こっちは軽くレベル100超えてるんだけどね。聞いてるこっちが恥ずかしくて寒気がしちゃった。・・・いや、この寒気は寝不足でフラフラだからかも。

 因みに、なぜこの人たちは自分たちが【鑑定】されないと思い込んでいるのかと言えば、忘れているかも知れないけど、【鑑定】を持っている人は自分の【鑑定】レベル以下の【鑑定】をレジストできるからだ。そして、スキルレベルは5が上限だと信じている。

「ふっ、頭の中がお花畑ですね。たかがレベル80で私たちをどうこうできるとでも思っているのですか?」

「強がりは止めるんだな。レベル80の俺たちを倒せるヤツなんて存在しない」

「良いでしょう。見た所、貴方たちは偽物のようです。こちらの魔王様の手を煩わせる程でもありません。
 私が貴方たちに身の程と言うモノを教えて上げましょう」

 そう言ってアクモンは1歩前に出る。

 ん? ちょっと待ってーー!

〈今、サラッと俺を魔王として紹介しなかった!?〉

〈すみませんリョーマ様。いくら作戦とは言え、私がリョーマ様より立場が上という設定はやっぱりダメだと思うんです!〉

 ダメじゃないから! 作戦だから!

「何っ!? 俺たちが偽物ってどう言う事だ? 俺と諒子は本物の勇者だ!
 それにそっちのチビが魔王だと? お前じゃないのか! 【鑑定】できないから悪魔だろうとは思っていたが・・・」

 まあ、サクッと無力化する事に変わりはないから、もうどっちでもいいや。

「偽物よ。そう言う事だ。
 さあ、私の右腕よ。その偽物勇者を倒すのだ」

 もうヤケだ。仕方ないので、魔法でそれっぽい声を作ってアクモンに命令する。兵士たちに聞こえるように偽物を強調するのも忘れない。

「はっ! 御身の仰せのままに!」

 俺の右腕と言われてホクホク顔(兜で見えないから声から推定)のアクモンが更に数歩前に出る。

「くそっ! 舐めやがって! 後悔させてやる! ・・・地獄でな!!」

 そう言うと偽勇者(一応【勇者】スキルも持ってるから本物ではあるんだけど)が勢い良く走り出す。少し遅れて女勇者も動き出した。

 それに対して、アクモンはゆっくりと前に進んでいく。カッコいい。何だろう、傍から見ててもあっち勇者が三下にしか見えないな。

 勇者はそれでもレベル80であり、更に【勇者】スキルでステータスが底上げされている為、それなりのスピードだ。アクモンがゆっくり歩いていても直ぐにその距離は縮まる。

「真っ二つになりやがれ!」

 そしてアクモンの直前で飛び上がり、正面から斬りかかる。とても・・・隙だらけです。もちろんアクモンはその隙を見逃すはずがなく・・・、と思ったらそのまま剣を受けた。

「きゃはは! 死になさい!」

 更に、飛び上がった勇者の下からはそのまま走ってきた女勇者もほぼ同時に斬りかかる。

 ───パキーン!

 しかし攻撃と同時に、2人の勇者の剣はキレイに折れた。・・・アクモン硬すぎぃ。

「は?」

「え?」

「・・・つまらない。少しは痛みを与えてくれるのかと思いましたが、まさか防具も傷付けられないとは」

 アクモンは心底つまらなさそうにそう言うと、一瞬姿が消える。相変わらずの速さだ。そして数瞬後に勇者を通り過ぎ、数メートル進んだ場所に現れる。

「安心して下さい。峰打ちです」

 いや、アクモンどう見ても素手だから! 峰打ちとか関係ないから!

 勇者の2人は数秒後そのままその場に倒れこんだ。完全に意識は失っているんだろう。

「お、おい。勇者様が倒れたぞ!」

「いや、演技だろう? 悪魔を油断させるための演技だろう?」

 兵士たちがそんなやり取りをしているのがここまで聞こえてくる。当然、どれだけ待っても勇者が起き上がる事はない。何故なら気絶したところに、更に俺が魔法で深く眠らせたから。

「さて、次は貴方たちですか?」

 そう言ってアクモンが兵士たちを見ると、兵士の皆さんは目に見えて狼狽し始めた。

「や、やばいぞ! 本気で勇者様が起きない」

「しかし、俺たちが王都を守る最後の砦なんだ。ここで引く訳には行かない!」

 そろそろかな?

〈さあ、リーナさん出番です〉

「皆さん落ち着いて下さい!」

 俺が合図を出すと、リーナさんはそう言いながら城門を飛び越えて現れた。太郎さんが一緒だ。

「だ、だれだ!?」

「バカ! リーナ王女だ!」

「おお、冒険者としても名高い飛行姫リーナ様!?」

 そのまま兵士たちの中心に降り立つと、リーナさんは高らかに宣言する。

「そこで倒れている勇者は偽物です。
 こちらが私に女神様が遣わされた真の勇者タロウです!」
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