うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜

双華

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第3章 王都騒乱編

第45話 魔王vs勇者

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すみません。ここ数日体調不良で更新が遅れました・・・。申し訳ありません。
───────────

 事前の作戦通り、リーナさんが太郎さんを連れて現れる。

 俺立案、クーデターを防ぐついでにリーナさんの王族内の地位も向上してしまおう大作戦。第一段階である偽勇者討伐は完了したので、次のステップだ。

 太郎さんを真の勇者として、共に魔王が率いる魔物の軍勢を打ち払って王様を救出する作戦である。

 更にどこかで見ているのか、昨日レミに運命の女神様から【神託】があった。

 曰く、私の名前を使っても良いわよ、と。これで太郎さんは女神及び神殿公認の勇者になったわけだ。

「ここは真の勇者タロウと冒険者のリーナが引き受けます。
 貴方方は万が一に備え、ここで街を守っていて下さい」

「え? リーナ様Sランク!?」

 兵士の間にざわめきが広がる。そう、何しろ昨日まではAランクだったし、Sランクなんて早々居るものではない。この国は俺も含めて3人しかSランクは居なかったので、リーナさんで4人目である。

 この1年の実績に加え、ここ数日の実績を加味してリーナさんも晴れてSランクとなったのだ。

 ギルドのグランドマスターであるトミーさんも今回の作戦には一枚噛んで貰っているから、話は早かった。本来もう少し時間がかかるんだけど、権力って怖いね。でも味方に付けると頼もしい。

〈リーナカッコいいの。ミルクも混ざりたかったの!〉

 ミルクから【念話】が届く。さすがに妖精が参加する訳には行かないって事で、ミルクは姿を消して近くで様子見をしている。

〈まあまあ、そう言わないで。見張りも大事だから。
 この作戦がうまく行ったら、新しい味のアイスを作ってあげるよ!〉

 アイスは味の汎用性が高いので、しばらくこれで釣れそうだ。

〈やったの! アイスなの! 楽しみなの!〉

 うん。相変わらずチョロかった。

「ええ、私は先日Sランクになりました。この場はお任せ下さい」

 そう言いつつ、兵士の間を抜けて前に出て来る。

〈ちょっと作戦と違って、リョーマが魔王って事になってるみたいだけど、どうするの?〉

 笑いを堪えた声でリーナさんから【念話】が届く。【念話】なのに笑いそうな声とか、逆に凄いかも。

〈さすがに魔王が戦わずに退くのもおかしいから、僕も戦わざるを得ないですよね?
 勇者は魔王と戦う方がしっくりくるので、僕と太郎さん、リーナさんとアクモンですかね?〉

 本来の作戦では俺は見てるだけ、魔王アクモンが2人と少し戦い撤収する予定だったけど、まあ仕方ない。これはこれで楽しそうだしね。

〈分かったわ〉

〈太郎さんとアクモンもそれで良いかな?〉

〈〈はい!〉〉

「ほう、今度はどうやら本物のようだな。良いだろう、私が直々に相手をしてやろう」

 俺はまた声を作って魔王を演じる。結構楽しいかも。

「そっちの小娘! 貴女は私が相手をして差し上げます」

 アクモンも結構ノリノリだ。

「ふふっ、その余裕、いつまで持つかしら? さあ、勇者様行くわよ!」

 リーナさんも同じくノリノリだね。

「は、はいっ」

 太郎さんだけはちょっと緊張してるみたいだ。

 そして、壮大な魔王決戦自作自演の幕が開けるのであった。


 最初に動いたのはアクモンだ。さっきの偽勇者戦とは違い、一気に距離を詰める。

 一気にと言っても、全力で移動すると周りに見えないので、かなり手は抜いている。できるだけギャラリーに分かりやすく、そして派手にやる作戦だ。

 たまに派手な魔法を織り交ぜつつ、リーナさんとアクモンの戦いは激しさを増していく。

「くっ! 中々やるわね!」

 リーナさんはそんなわざとらしいセリフを言いつつ、アクモンを少しずつ追い詰めていく。

 もちろん、現時点で本気を出したらアクモンが圧勝してしまう。適度にリーナさんに合わせつつ、寧ろ押されているように演出しているアクモンはさすがだ。

 さて、ずっと見ていたいけど、こっちもそろそろ始めないとね。

「勇者と言えど、所詮は人の子。身の程を知るが良い」

 そう言いつつ、以前作っていた魔王っぽい剣を【収納】から取り出す。自分の剣を作る時に、試作品で色々と作ったんだよね。黒と赤をベースに無駄に装飾とかしてたら実用性ゼロで【収納】の肥やしになってたけど、まさかこんな所で役に立つとは。

 それに対して、太郎さんは今回の為に俺が作った勇者っぽい剣を構えている。如何にも伝説の剣っぽい自信作だ。勿論、相応の能力も備えている。

「行くぞ、魔王! 勇者の力を見せてやる!」

 カッコよく、剣を俺に向けて突き出して、そう叫ぶとこちらに向けて走り出した。 太郎さん、やればできる子!

 それに合わせて俺も移動を開始する。そしてほぼ中央で戦闘を開始した。

 太郎さんが振り下ろす剣に対応して、俺も剣で受け止める。そして、逆に俺が突き出した剣を太郎さんが受ける。そんな感じのやり取りを何度も繰り返す。

 太郎さんも【剣術】スキルを持っていたので、結構サマになっている。

〈太郎さん、ちょっと派手なの行くので避けて下さいね〉

〈は、はいっ〉

 俺は注意を促してから、剣を振り下ろしつつ魔法で攻撃する。太郎さんはそれを大きくバックステップして避ける。直前まで太郎さんが今場所は爆発が起き、大きな穴が開く。

〈うわっ。今のは忠告がなければそのまま食らってたかも知れません。さすがリョーマさんです〉

 まあ、そこは戦闘経験の差かな? 何だかんだ言って、勇者とは言え太郎さんは初戦闘だからね。

 そんな感じで、しばらく戦闘を続ける。もちろん徐々に追い詰められている感を出すのも忘れない。

〈リョーマ! 大変なの! 城壁の上! ミーナ王女が王様を狙っているの!〉

 俺が結構ノリノリで太郎さんと戦っていると急にミルクからそんな【念話】が届いた。

 城壁の上を見ると、確かにミーナ王女が何やら銃のようなもので王様を狙っているのが見えた。また宝物庫にでも眠っていた魔道具かな? ってヤバい、もう撃つ寸前だ!

 ただ、幸いなことに俺は丁度ミーナ王女と王様を直線で結んだ線状の近くに居る。

〈ミルク、教えてくれてありがとう。大丈夫、俺が防ぐよ〉

 そう【念話】を返した所で、魔道具が発動したようだ。ミーナ王女から王様に向けて、弾丸が射出される。

 俺は数歩移動すると、剣でその弾丸を受け止める。

 ───カキン!

 予想以上の衝撃だ。普通の剣なら折れてるところだった。

「えっ!? リョーマさん?」

 あれ? てっきりグループ【念話】で太郎さんも気付いてるのかと思ってたら、もしかしてミルクさん、1対1の【念話】だった?

 伝わっていると思っていたので隙だらけだった俺に、太郎さんの剣が振り下ろされた。
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