うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜

双華

文字の大きさ
145 / 159
第3章 王都騒乱編

第3章 エピローグ

しおりを挟む
 作り物のような無機質な空。どこまでも続く荒原。目を開けると、俺はそんな場所に転がっていた。ここはどこだろう。体がとても重い。

 俺の記憶が間違っていなければ、ここに飛ばされるまでダンジョンに居た筈だ。ポチと念願の再会を果たし、喜び合っていた。

 その後、変な氷の塊が現れて・・・、実はその中に自称神様が居て・・・。

 そうだ! それで自称神様が俺に何かしようとして、ポチに体当たりされたんだ。

「ポチ! ポチ!!」

 立ち上がり辺りを見渡す。スキルを使えば見なくても分かるはずなのに、気が動転した俺はキョロキョロと辺りを確認する。

 居た! 少し離れたところにポチも転がって居た。気を失っているんだろうか? 呼びかけても反応がない。

「ポチ! 大丈夫!?」

 近寄ると、子犬の姿のままスースーと寝息を立てていた。良かった。寝てるだけみたいだ。うん、寝てる姿もかわいい。

 とりあえず一安心して、更に辺りを見渡したけど、他には誰も居ないみたいだ。

〈ミルク! 聞こえる? リョーマだよ!〉

〈リーナさん、応答願います!〉

 【念話】を送るが、誰からも反応がない。一体ここは何処なんだろう? ちょっとだけ予想はしてるけど、そうではない事を祈りたい。

 そう思いながらも、収納から小さめのベッドを取り出してポチを寝かせる。さすがに硬い地面にそのまま寝かせてるのはかわいそうだからね。

 ポチを置くと改めて辺りを見渡す。

 荒れ果てた大地がどこまでも続いていて、遠くには赤茶色の山が見えている。

 俺とポチは多分だけど自称神様に飛ばされたんだ。それも【念話】が通じないほど遠くに、だ。そもそも、のかも知れない。

 【マップ】を確認するが、当然ここが何処かは分からない。困ったな・・・。

 確か自称神様は俺と新しい遊びをするみたいな事を言っていた。単純に何もない所に嫌がらせで飛ばした訳ではないと思う。ないと思いたい。

 そうなると、これはどんな遊びなのか、と言う事になるけど、そもそも自称神様の考える遊びが人間の考える遊びと同じとは限らないよね。

 結局、あちらからアクションがあるまで分からない・・・か。なんて思っていたら、急に声が響いてきた。

〈ようこそ! ボクの箱庭へ。ボクは遊戯の女神だよ〉

 この声は・・・、自称神様だ!

〈そうそう、このメッセージは一方通行だから質問は受け付けないよ〉

 聞きたい事は色々あるけど、答えてくれないみたいだ。

〈さて、ボクの箱庭。つまり魔界に来てもらったみんなにはゲームに参加してもらいます〉

 予想はしてたけど、やっぱりここは魔界なのか。

〈そして勝っただけが、もとの世界に帰ることができるんだ。わー、パチパチ〉

 勝った一組って事は、俺とポチ以外にも連れて来られた人が居るって事か・・・。見える範囲には居ないけど。

 しかし何だろう。この、今から皆さんには殺し合いをして頂きます的なノリは。

〈何をして貰うのかは・・・〉

 ゴクリ。

〈内緒だよー〉

 おいっ! 今この瞬間、絶対にこのメッセージを聞いてる全員がツッコミを入れたと思う。

〈なので、まずみんなにやって貰う事はただ一つ。
 この環境で生き残ること。そしてこのゲームの内容を調べる事だよ!
 あ、ごめん2つだったね〉

 その後も何かぐだぐだと自称神様改め遊戯の女神の話は続いたけど、特に実りは無かった。

 いや、1つだけ判明した事がある。ゲームの公平性を期すために全参加者のレベルが1になっているそうだ。幸い、スキルレベルまでは弄れないらしく、スキルはそのままなのが救いだ。

 このレベルだと、雑魚の魔物に出会しただけで窮地に立たさせるんじゃないだろうか・・・。

《従魔アドランが取得した経験値の一部を獲得しました。
 レベルが上がりました。
 レベルが上がりました。
 レベルが上がりました。
 以下略。
 レベルが13になりました》

 と思ったけど、杞憂に終わりそうです。さすがポチの右腕だね!

 こんな感じで、俺は遊戯の女神の遊びゲームに強制参加する事になってしまったのだった。


─── 第3章 完


明日には3章の登場人物を投稿予定です。
その後はいつものように幕間が何話か入ります。
しおりを挟む
感想 112

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...