うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜

双華

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第4章 魔界編(仮)

第6話 事情の説明

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 さて、どう切り出すべきか。悩むなぁ。

「一ついいかな?」

 俺がどう切り出すか悩んでいたら、村長のアンナさんから質問された。

「はい、何でしょう?」

「グリモール様の話をする前に、何故貴方はグリモール様を呼び捨てにしてるの? 悪魔王様よ?
 全魔界人の憧れの的。神と言って良いお方、そのグリモール様を呼び捨てにするとは、予言でグリモール様に連なる者と言われていても、さすがにどうかと思うわ」

 ああ、そうか。俺の従魔だって事もあって、ついつい呼び捨てにしちゃってたけど、この人たちにとっては神様に等しい存在なのか。俺も逆の立場だったら頭に来るよね。

「あー、えっと・・・」

 困った。どうやって説明しよう。

《ここは正直に説明すべきと考えます。下手に嘘を吐くと後々大変です》

 まあ、そうだよね。【サポーター】さんの言う通り、前世で読んでいたお話とかだと、こんな場面で下手な嘘を吐いて後で困るとか、良くある話だよね。(よくあったら困るけど)

「じゃあ、正直に言います。
 グリモールは僕の仲間です。なので呼び捨てにするのはそんなにおかしな話では無いと思います」

 うん。嘘は吐いてないよ。俺は従魔をシモベだとは思っていない。大事な仲間、家族だと思ってるからね。

「カンナ!」

 俺がそう言うと、アンナさんは急にそう叫んだ。カンナ? 人の名前かな?

「はい。リョーマ殿は嘘は吐いてないようです」

 すると、アンナさんの妹がそう答える。この子の名前がカンナなのか。と言うか、嘘を見抜くスキルを保有してたのか。危ない。下手に作り話をしなくて良かった。

「うーん。カンナがそう言うなら真実なのかな。嘘を見抜く事に関してはカンナの右に出る者はいないからね」

「うん! ・・・じゃなかった。はい、間違いは有りません」

 この自信、【嘘発見】スキルより凄そうだから、それ系のレジェンドスキルでも持ってるのかな? しかし、嘘が吐けないってなると、もう洗いざらい話して協力してもらおうか?

「疑ってごめんね。まさか貴方がグリモール様と同列だとは思わなくて。見た目は人間の子供みたいだけど、人は見かけによらないんだね。
 って、こんな言葉遣いもダメだよね。いや、ダメですよね。実質グリモール様とお話しているようなものです。申し訳ありませんでした」

 衝立の向こうでアンナさんが頭を下げる。因みに、衝立は障子のようになっているためシルエットが分かるんだ。

「いえ、頭を上げてください。今まで通りの話し方で大丈夫です。グリモールを崇拝している事は分かりましたが、僕はただの人間、見た目通りの歳ですから」

「えっと・・・嘘は吐いていないようです・・・」

 またカンナちゃんが補足する。嘘は吐けないかど、言ったことを直ぐに信じてもらえるのは楽かも知れないな。

「え? じゃあ、普通に話させて貰うけど・・・見た目通りって事は10歳以下だよね?」

「ええと・・・それは、話すと長くなるんですが・・・
 (略)
 ・・・と言う事で、僕とこの背中に居るポチは異なる世界、異世界から来たわけです。
 そして、ポチが転生したのは封印されたダンジョン。そのダンジョンの中でポチはグリモールと出会いました」

 もう開き直って順を追って説明をすることにした。

「にわかには信じがたい話だけど・・・、カンナの様子を見るにリョーマの言ってる事は事実なんだろうね。
 しかし、行方をくらませていたグリモール様は人間界の封印されたダンジョンにいらっしゃったとは」

 魔界の人たちにしてみたら、急に支配者が居なくなったようなもの。そしてそのまま千年以上とか。鬼人の寿命がどのくらいか分からないけど、この村の人やその祖先の人は生きてる事を疑わず、今日まで予言の日が来るのを待ち続けてたんだね。

「それで続きですが、怒らないで聞いてくださいね?
 ポチに敗れたグリモールはポチの配下になりました。先ほど説明させて頂いた通り、ポチは生まれた時から僕の従魔に登録されていました。そしてそのポチを通して、グリモールも僕の従魔になった訳です」

 そう言うと、アンナから殺気が漏れ、立ち上がる。うん、そうだよね。さすがに崇拝するグリモールがこんな子供の従魔になっていると聞かされるとそうなるよね。

「ま、待ってお姉ちゃん! ・・・じゃなかった。お待ち下さい、村長! リョーマ殿の言ってる事は事実です。つまりこの方はグリモール様のご主人様、殺気を向けるなど、もってのほかです!」

「あ、ああ。・・・ごめんなさい。まさか貴方がグリモール様のご主人様だとは。本当に人は見かけによらないんだね」

「僭越ながら、口を挟ませて頂きます。
 私はデビルボアに襲われそうになったところをリョーマ様に助けられました。
 デビルボアを軽々と倒す、あの卓越した戦闘能力。とてもテイマーとは思えません。確かに人外の領域です」

 俺をこの村に連れてきてくれた青年がそう言う。あのイノシシはデビルボアって名前だったんだね。因みに、土の壁にぶつかって気を失ったイノシシは貴重な食料との事で、トドメを刺して俺の【収納】の中だ。レベルは80程だったけど、従魔達が高レベルの魔物を乱獲してるらしくて、俺のレベルも既に80に到達している。

「へぇ、デビルボアを楽々と・・・?」

「魔界に飛ばされて、レベルが1に戻っていたのですが、何とかイノシシを止めれるくらいにはレベルが上がっていて良かったです」

 従魔のみんなが魔物を乱獲してなかったら危なかった。きっと王都周辺の変異した魔物を掃討してくれてるんだろうな。優秀な子達で助かる。

「レベル1に? 大丈夫だったの?」

「はい。それこそテイマーですので、従魔達が魔物を倒すと僕もレベルアップします。なので一晩でレベル80までは戻りました」

「「・・・・・・」」
 
 あれ? みんな固まっちゃった。

「えっと、一晩でレベル80って聞こえた気がするけど。まず、魔界に来たのはいつなの?」

「昨日です」

「・・・昨日。そして一晩でレベル80?」

「はい」

「その背中の・・・えっと、ポチさん? も?」

 あ、ポチはどうなんだろう? 寝てるけど、俺も寝てる間もレベル上がってたし多分上がってる・・・と言うか、ポチはレベル1に戻ったのかな?

「ええと、実はポチは眠ったまま目覚めなくて、詳しくは分からないんです」

「あ! もしかして【神託】の目覚めの条件って・・・」

「はい。配下を増やすことが、ポチの目を覚ます条件だと考えています。
 そこで僕からお願いがあるのですが・・・」

 そしてやっと本題を切り出せたのであった。
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