NPCのストーカーの件について

草薙翼

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恋愛イベントのはじまり

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音楽隊が生演奏でイベントを盛り上げていた。

周りにはカップルや片想い中の相手がいる人やらであちこちからハートが飛ばされていた。
あんな殺伐とした闘技戦から時間が経っていないのに、もう新しいイベントの雰囲気だった。

俺はとりあえず今持っている、食べられる食材で何を作ろうか考えていた。
すると、レイチェルちゃんが見えて挨拶をしようと思って手を上げようとした。

でも、レイチェルちゃんはいろんな男達に言い寄られていた。
助けないとと一歩踏み出したのはいいが、そんな心配は無用だった。

レイチェルちゃんは言い寄ってきた男達に営業スマイルでいろんなものを買わせていた。
さ、さすがレイチェルちゃん…逞しいな。

俺もあの輪に入りたいが、金欠の俺なんて相手にされないだろう。
だからレイチェルちゃんにはイベントでアピールするしかない。

司会の男が長い話をしていて、欠伸をしながら下を見る。
影は俺の姿をしている、あの日の翌日…目を覚ましたら影ゼロは何処にもいなかった。
ゼロのところに帰ったんだ、俺はゼロを傷付けた…きっともう会う事はないだろう。

このイベントは報酬とかはないから、司会とかいらないし王都に集まる必要もない。
でも、何となく皆集まっている…誰もが分かるイベントの注意事項を聞いている。
人の嫌がる事はしない、しつこくしないとかそんなものだ。

周りを見渡すと、司会の後ろ側にいるのはゼロだった。
ゼロは護衛かなにかか?騎士団だし、護衛はするだろう。
しかし、この司会に護衛が必要なのか分からない。

ゼロの隣にはブライドがいて、目を丸くした。
いつもなら気にしないのに、なんでこんなに目が行くんだろう。
お互いの顔は見ていない、ゼロはもう片方の隣の人に話しかけていて目線をそちらに向けていた。

身なりがいい金髪の小柄な少年が話していた。
そうだ、あの少年はゲームにもいたれっきとした恋愛対象のNPCだ。

それに彼が身なりいいのは当然だし、少年ではない。
この子は男の格好をしている女の子だった筈だ。
確か、国王の娘で病に倒れた国王の代わりに国王をしている姫だ。
でも、王都では男が国王になる事は絶対で一人娘が継ぐ事は出来ない。
だから男の格好をしている訳ありの子だったな。

なんで俺がそんな事を知っているかといえば、国王を攻略しようとしたら出来なかった女プレイヤーが俺達のギルドにやってきた。
難攻不落キャラをこよなく愛する集まりだが、国王ってそんなに難しいんだっけと不思議だった。
試しに国王の好感度を上げた男プレイヤーは恋愛に発展したらしい。
そこで、国王の秘密を知り…後に公式サイトでも国王についてのネタバレがプチ解禁された。

難攻不落キャラではないが、同性は対象外だっただけだ。

女の子の格好だったら、さぞ可愛いんだろうけどレイチェルちゃん一筋の俺からしたら興味はない。

なるほど、司会ではなく国王の護衛なのか…納得。

「帰って料理するか」

ついいつものくせで影に話しかけてしまい、恥ずかしくて走った。
影に話しかけるとか、変な人じゃん!恥ずかしい…

何だよゼロ、両手に花で人生楽しそうだな……ブライドは花っていうのか分からないけど…

ゼロがいるといろいろツッコミを入れたり疲れる事があった。
でもいないならいないでなんでこんなイラつくのか訳が分からない。

俺とレイチェルちゃんがいい仲になったらきっとこんな気持ちにならないだろう。
そうだ、俺だってこのイベントで花を咲き乱れさせてやる!
……花を咲き乱れさせるとは、イベントで料理をあげるとキャラクターのエフェクトが花になって喜びをアピールするからだ。






※ゼロ視点

あぁ、ツカサはいつも可愛いな……可愛いけど、でも……

「くっ…」

「ど、どうしたんだ?ゼロ!?」

「ゼロ、セレス様が怖がっているだろ…何をしているんだ」

外野がうるさいな、今お前らに構ってるほど暇ではないんだ。
本当にこんな事で合っているのか俺には分からない。

あれは、ツカサに妙な誤解をされた日だった。
当然俺はツカサに会いに急いでいた、影を使って移動する事も考えたがその前に怪しい老婆に捕まった。
俺はツカサのところに行きたいから離せと老婆を睨んだが、老婆はニヤニヤ笑っているだけだった。

「お前さん、恋の悩みをしておらんか?」

「……何?」

「そのままだと、お前さんはずっと先に進めないぞ」

占い師だと言う見るからに胡散臭い老婆だったが、俺が恋で悩んでいるとすぐに見抜いた。
確かにツカサと過ごして関係は少しずつ変わっていっているように見えたと思ったら戻っていた。
何も変わらないのはその通りだが、焦る必要もないと思っている。

でも、ツカサの片想い相手は脈なしだが…もしツカサが他に好きな人が出来てソイツもツカサの魅力に気付いたら…

老婆に「ずっとこの関係のままで、お前さんが満足ならその子の別の幸せを応援しなされ」と言われた。

ツカサと他の奴の幸せ?応援出来るわけないだろ…ツカサは俺のものだ、俺の…

ちょっとくらいアドバイスを聞こうかと思って老婆の言葉に耳を傾けた。

そして俺は老婆の言葉に驚いて、その話を聞かない事にした。

聞かないつもりだったけど、ツカサの言葉で気持ちが変わった。
老婆の言葉がずっと頭の中でループしている。

確かに今のままではだめだ、もっと悪化する。

だから俺は老婆の言う通り、ツカサと離れる事にした。
当然、諦めたわけではない…俺はツカサ以外と恋愛するつもりはない。

でも、ずっと一緒にいると相手はそれに満足するらしい。
だから、引いてみるんだ…ツカサを愛しているからこそ一度自分を見つめ直そうかと思った。

とはいえ、影も戻ってきたし…ツカサを一日中見れないのは不安だ。
こっそり影だけ忍ばせようと思っていたが、ツカサは勘がいいからすぐにバレてしまう。

だから泣く泣く影を戻した…俺があげたものを身に付けていれば魔物に対しては大丈夫だ。

エルフの国の宝にあった宝石、あれは強力なシールド効果があるものだ。
加工してミリ単位の宝石を防具に使っている。
貴重なものだから高級な防具しかない、俺の服にもその宝石はある。

それが結構な大きさであるなんて、これならさらに強いシールド効果が期待できる。

それを貰って、ツカサに耳飾りとしてプレゼントした。
ツカサによく似合っている、俺の手で加工したものを身に付けていると思うだけで興奮する。

でも、やっぱり本物に触れたいし声が聞きたい。
どのくらい耐えれるのか、自分との勝負だ。

「ゼロ、ちょっといいか」

ツカサの事を考えると顔が強張り、目の前の国王は怯えていた。
それはどうでもいいとして、大臣が俺に話しかけてきた。
今は国王の護衛中とか小言なら別に聞きたくない。

そう思いながら大臣に付いて行く、国王はブライドに任せればいい。
ブライドがあんな事しなければツカサと一緒にいれたのにと殺意が湧くが、その拳でブライドをぶん殴ったからいい。

ブライドへは気持ち悪い誤解が解けたから、残るはツカサだけだ。
何とも思わないなんて言われてショックだったが、その言葉を素直に鵜呑みにも出来なかった。
ツカサの顔が、全然何とも思っていない顔には見えなかった。

ちょっとは期待してもいいのか?ツカサの性格からしたら、本当にどうでもいいなら眼中にない筈だ。

「ゼロ、分かっているだろうな…今回のイベントはひめ………国王も楽しみにしていらっしゃる」

「……分かってます」

あの男……いや、男装女が何をしようとしているのか分からないが、護衛をするのも騎士団長の務めだ。
国王が女だと知っているのは、王族と大臣と俺だけらしい。
理由は騎士団長で一番強いかららしい……なんだその理由。

ブライドは知らない、ブライドの場合は他に情報が漏れるかもしれないと言っていた。
信用ないんだなアイツ、まぁブライドは白の騎士団の間で人気があるから本人が言わなくてもストーカーはいるかもな。

俺はストーカーさせない、俺をストーカーするという事はツカサをストーカーする事と同じだ。
ストーカーする奴がいたら、相手の影を締め上げて再起不能にしてやる。

影と本体は切っても切れない間柄だからな、全影は俺の味方だ。

守るべき対象の事はいろいろ知っておけと、男装国王の分厚い資料を貰ったが一ページしか見ていない。
誰が国王だったとしても興味ないし、守れば何でもいいんだろ。

イベントが終わったら、もうツカサを解禁していいんだよな。
だったら早くイベント終わらないだろうか……ツカサ…会いたい。
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