あなたとの時間

べねま琴音

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あなたとの時間 同級生

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 楠木ゆず子は今年高校1年生に入った。
「…ここが、私の学校かあ…。」
感慨深く、ゆず子は三階建ての校舎を眺める。
 ここは、新座芸術高等学校。県内でもめずらしい5学科揃った学校だ。
 商業科、服飾科、デザイン科、情報技術科、調理科が揃った就職に有利な学校であり、また、進学校としての布石も兼ね備えた、準備万端の学校だった。

「…ホントはデザイン科に入りたかったなー」
ゆず子は漫画をこよなく愛し、同人誌にも興味を持つ女の子で、絵や漫画を描くのが得意だったため、デザイン科で絵を描きたかったのだ。
 だが、世間はそんなに甘くない。
偏差値というものの都合上、一番自分に合っていたのは商業科だったため、ゆず子は商業科を余儀なくされてしまった。


 一方、同じく当時16歳になった速水真理子は、同じく新座総合芸術高等学校、略して新総(にいそう)の調理科に入った。
 真理子もまた、クラス分けを見ながら
「デザイン科に入りたかったな。絵や漫画かけるし」
と同じことを思っていた。
 彼女はアニメオタクで、やはり同人誌にも興味を持っていた。
 だが、そこは同じ理由、偏差値が真理子を選んだのは調理科だった。



 そんなふたりは、偶然にも同じ1年3組に所属することになった。

 

 ゆず子は中学生の頃、引っ込み思案な性格だったため、それを払拭しようとして、アニメのペンケースを持ち歩いていた。
 アニメオタクの仲間を、友だちを増やすのには一番早い作戦だと思ったからだ。
 むこうから声をかけてくれれば、探す手間もはぶける。

ふと、斜め前の席を見やると、バッグにアニメキャラクターのラバーストラップをつけている女の子が目についた。

短髪で、前髪が片方だけ長くて目が隠れそうなくらいの特徴を持ったその子は、名を速水真理子といった。

「それって、ことりちゃんのラバストだよね!?」
ゆず子は思い切って声をかけてみた。
「…え?あんた、誰?」
驚く真理子をよそに続ける。
「私もことりちゃんが好きな、楠木ゆず子…だよ」
「……ふんふん。オレは速水真理子。ことりちゃんの漫画は全巻揃ってるよ」


それが、私と真理子の出会いでした。


しっかり、女の子なのに、一人称が【オレ】には正直驚いたけど、ここは個性集まる5学科の学校。
すぐにそれは違和感なく受け入れられることになっていた。


真理子は言う。
「オレもアニオタ探していて、そしたらあんたが先に話しかけてくれて、あんたもアニオタみたいだったし、漫画も同人誌も興味あるっていうから、オレ、嬉しくてさ。」
そう言って少しだけ微笑んだ。


ゆず子は思った。
(真理子…もっと笑えばかわいいのに。せっかくの笑顔がもったいないな…)
いつもそうなのだ。満面の笑みというものを見たことがない。
真理子はどこか淡々としていて、あまり笑わない。
 いわゆるツンデレなのかもしれない。


その【もっと笑えばかわいいのに】という思いは、どこから来ているのか、まだ知る由もなかった。


だが、やがてその気持ちがどこから来てるのか、嫌でも知ることになる数々の出来事が待ち受けていた。



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