堕落した淫魔は夢を見る

雪之丞 親実

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淫魔のお仕事※※突発的ss

カグヤのお仕事★11

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「48歳、……おっさんじゃねぇか」

  真っ暗な画面を正面に小一時間正座をさせられている男の所持品を調べながら、ジンが呟いた。
  見事なまでの太鼓腹を持つ男の膝下は限界で、どうにかしようと腰を左右に小さく動かした。

「動くなって言われてんだろうが。背筋を伸ばして前向いとけよ」

  そう言いながらジンは男の足の裏を踏みつけた。
  痺れで感覚は失っていた筈なのに、激痛が蘇ったのか男は悲鳴を上げて背筋を伸ばした。

「す、すみませんっ!もぅ、こんな事はしませんからっ!!」

  男は画面を向きながらそう訴えた。

「不法侵入に、暴行、強姦未遂。普通なら即警察行きだよねー」

  男のスマホを片手に何やら操作をしながら、エルは言った。

「48歳の引きニート。親のスネかじりだから、金でどうの、は出来ないね」
「見てくれもこんなだし、労働っつっても買い手が居ねぇだろな」
「出会い系のアプリ登録してる。うわー、写真盛ってるー。キモー」

  口調は楽しげだが、エルの表情は無だ。
  
「で、フィギュアが欲しくてエロ配信して、住む所バレて突撃されたんだっけ?」

  エルはチラッと横を見た。
  ソファーに座る千皇に絡み付くように跨って、ヒクヒクと鼻をすする。
  がっちりとホールドされている千皇は、うんざり気味に宙を見ていた。

「そんで説教されて泣き憑かれてんだ。面白いねー、君」
「だ、だって……、夜一人とか、さみしーんだもん……。せ、セックス、してくんねーし……」
「あ、お話する相手が欲しかったんだねー。こーんな面白い子を夜一人にするなんてさ、酷いよねー」

  エルはいー子いー子する様に、カグヤの頭を撫でた。

「仕事があんだ。仕方ねぇだろ……」

  ポツリと低く千皇は呟いた。

「まぁ、千皇さんが働かないと、君を養って行けないからねー」
「別に養う為に働いてる訳じゃねぇよ」
「千皇さんがもーっと優しければ、怖い思いしないで済んだかも知れないのにねー?」
「これでも目一杯優しくしてる。それに、今回は自業自得だ」

  そう言ってはいるが、別にカグヤを剥がそうともせず、抱き憑かれたままだ。

「なー、コイツどーするよ?やっぱり海のがいいか?」

  限界の男の足の指先を、グリグリと踵で踏み付けながら、ジンが聞いてきた。
  男は背中の肉を上下に揺らしながら、小さく悲鳴を上げては痛みに耐えているようだ。

「そーだねー。陸だと逃げちゃうだろうし。半年くらい海に出れば、そのわがままボディも少しは引き締まるかもねー?帰って来たらモテ男になってるかもー」
「まぁ、こんな身体じゃ誰も相手にゃしねぇだろうしな」

  ケラケラと笑いながら、ジンが言った。

「もうしませんからっ!!ゆ、許して下さいっ!!」

  男は肩をプルプル震わせて叫んだ。
  ジンは足を踏んだまま、背後から男の髪の毛を掴み、背中を仰け反らす様にこちらを向かせた。

「弾じゃなくて俺達を呼んだ千皇さんの優しさに感謝しろや。千皇さんじゃなかったら、テメェは挽肉にして海のお魚さんの餌になってたぞ」

  ジンが睨みを効かせていたのだろう、男は小さい悲鳴を上げた。

「ジンは悪人面なんだから、睨んだら漏らしちゃう。これ以上汚したらジンも千皇さんに叱られちゃうよ」
「しっかし、フィギュアの為にこんな事するとか、アホの子か?素直に欲しいって言えば買ってくれただろうに」
「千皇さん、怖いからねー。弾なら一発相手で即買ってくれるだろうけど」

  二人の会話に、カグヤは少しだけ顔を上げた。

「だ、だって……、飯とか服とか買ってくれるのに、自分だけのモノが欲しいなんて、言えねぇだろぉ……。確かに、弾なら買ってくれるだろうけど、外、出れないし、弾呼んだら、怒られるし」
「確かに他の男なんて連れ込んだら、血の海になっちゃうね。あ。嫉妬に狂う千皇さんも見てみたいな」

  エルはカグヤの頭に手を置いたまま、じっと千皇を見た。
  千皇は横顔でうんざりげな表情を浮かべた。

「……このデブ、一人だったと思うなよ?」

  溜息を吐きながら、千皇が静かに言った。

「何人、このマンションを彷徨いて居たか」
「実際、弾も見てたからねー。あの突然のキス動画なんて相手が千皇さんて分かってさ、コーフンし過ぎて叫びながらティッシュ一箱使ったし」
「あれはあれで面白かったぜ、弾のヤツ」

  千皇の眉間に皺が寄った。
  
「千皇さんは恋愛童貞だからさ、君は遠慮しないで甘えたらいーよ」
「……れんあいどーてー?」
「気が済むまで君はそーやってくっついてていーんだよ、って事。叱るのも君が可愛くて仕方がないし、不器用だからこんな風にしか態度取れないだけだよ」

  エルはカグヤの頭をポンポンとすると、手を離した。
  カグヤは千皇を見上げた。

「適当な事を言うなよ。本気にするだろ、コイツが」
「適当な事は言ってないよー。さ、ジン。俺達は帰ろうか。これ以上お邪魔したら悪いし、いろいろと」

  エルはそう言うと、カグヤから手を離して立ち上がった。
  
「今からこの二人は仲直りラブラブイチャイチャセックスで甘い一時を共にすんだって。残念だったな」

  ジンは男にそう呟くと、髪の毛を鷲掴みにして無理矢理立ち上がらせた。
  男は全体重を掛けていた足が軽くなると同時に、痺れと痛みに足がもつれて前に倒れそうになったが、ジンに髪の毛で引き上げられた。
  言葉にならない声が響く。
  カグヤは期待の眼差しで、千皇を見上げた。
  でっかい溜息を吐いた千皇は、カグヤのキラキラな目を手で覆う。

「もー、セックスの違いで分からせればいーのに。まどろっこしいなぁ」
「……同じだと思われたくねぇだろ」

  小さく呟く千皇に、エルはふーんと返した。
  じゃーねー、とエル達は怯える男を引きづって帰って行った。

「なぁなぁ?仲直りせっくすっての、しねぇの?」

  千皇の手を自分の顔から離すと、カグヤの瞳はさらに輝いた。

「しない」

  千皇のその一言に、カグヤがむくれた。

「そもそも、俺達は別に喧嘩してた訳じゃねぇし。テメェはもっと反省しろ」

  そう冷たく言い放つ千皇に、カグヤは肩をすぼめた。





  次の日、等身大特大フィギュアとその領収書の額に頭を抱える千皇と、嬉しげにフィギュアに抱き着くカグヤがいた。

  
  
  
    
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