ミリしらな乙女ゲームに転生しました。

猫宮乾

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【十九】大学進学

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 結局私は、進学する学部を教養学部に決めた。これは、貴族令嬢が通う一般的な学部だから――という理由だけではなく、グレイルのお母様のメアリ様と相談した結果だ。一応令嬢としての教育は幼少時から受けてきた私だが、人脈作りに限らず、簡単なお茶会の準備や夜会の作法なども含めて教えてくれるそうで、後々宰相の妻になるならば学んでおいて損はないと教えてもらったからである。

 グレイルが不在の場でも、私はたまに、メアリ様のお茶会に招かれるようになった。その場で色々な事を教わっている。

 ちなみに冬休みは、メアリ様の同伴無しでグレイルと、エルディアス侯爵領地に旅行に行った。別段やましい事は何もなかったが、二人きりでちょっとだけ緊張した。

 このようにして、私は卒業式を迎えた。二年間ほど、グレイルとは学び舎が変わる事になるが、二人で約束をした。土曜日は、可能な限り一緒に食事をしよう、と。

 今に至るまで、その言葉は守られている。
 既に大学に入学して半年が経過しているが、グレイルに宰相補佐官としての急務が無い限り、あるいは私にセレフィ様関連の護衛が無い限り、土曜日の昼食化夕食は、決まって一緒に食べている。

 本日も待ち合わせをしていて、私は王都のレストランでグレイルを待っている。お互いの都合もあるからと、現地での待ち合わせが増えてきた。

「待たせたな」

 声がかけられたので顔をあげると、グレイルが立っていた。私は思わず、両頬を持ち上げた。グレイルの前だと、私の表情筋は、比較的自然に動く。寧ろ、顔がデレデレにならないように、淑女らしくあるようにと、気を遣う場合さえある。

 こうしてこの日も食事が始まった。
 お互いの学校生活を話したり、セレフィ様やエドワード殿下について雑談したりしながら食事をすると、いつもあっという間に時が流れる。帰り際は名残り惜しいのが常だ。だが、触れるだけのキスをして視線を合わせると、とても胸が満ち溢れるから、次が楽しみにもなる。

 そのようにして、大学生活は順調に進んでいった。休暇は大学も高等部も変わらないので、夏と冬の休みには、エルディアス侯爵領地に旅行に行くなどしながら過ごし――大学も二年、三年と進学した。私が三年生になった年、グレイル達の学年が入学してきた。それに備えて、私は久しぶりにオズワルド先輩と打ち合わせをした。

 現在四年生のオズワルド先輩は、卒業後は近衛騎士団の零部隊から、正式に移動して、エドワード殿下の担当をする第二部隊に所属するのだという。第一部隊は、国王陛下の直属、第二部隊が王太子殿下の直属と決まっている。なので大学で重なるこの一年間は、オズワルド先輩の零部隊の団員としての最後の活動となるそうだった。なお、零部隊は、ここでもかゆい所に手が届く用にという位置づけなので、個々人に担当王族が決まっている。私ならばセレフィ様、オズワルド先輩ならばエドワード殿下という形だ。

「一年、何事もなく過ぎるといいんだけどなぁ」

 オズワルド先輩と、零部隊の本部で、背中合わせに座りながら、現在私は打ち合わせをしている。それぞれ正面には、報告書の書類がある。

「学園には強固な結界がありますし、問題ないのでは?」
「そう願う。が、気は抜けないだろう? リリア隊長」

 そう言ってから、オズワルド先輩は溜息をついた。

「ただでさえ、最近は大学構内に、結界の穴が見つかったばかりだしな」
「――そうですね。誰かが意図的に破壊した痕跡もありましたし」
「エドワード殿下のご入学前にすべて塞いでおかないとな。ただ、学園への攻撃は、歴史を遡ってもほとんどない以上、老朽化して自然に解れた可能性の方が高いと、周囲は考えている」
「うっかり破ってしまったのだとしても、破壊は破壊です。犯人は名乗り出るべきでしたね。ただ、いつ頃から請われていたのか分かりませんし、本当に偶発的な可能性は否定できないと思います。ただ、王族の皆様をお守りするためには、念には念を」
「そうだな」

 そんなやりとりをしながら、私達は零部隊の書類を片付けていった。現在、叔父様は国王陛下の視察に伴い不在だから、書類は自分でやらなければならない。

「ところで、リリア隊長」
「はい」
「グレイル卿とは、最近はどうなんだ?」
「どう、というのは?」
「ただの雑談です。上手くいってんのかなぁ、とか」
「……」

 万年筆を動かす手を、私は思わず止めてしまった。順風満帆すぎて怖いくらいである。

「もうヤったのか?」
「な」
「悪い、セクハラだったな」
「……っ」
「グレイル卿は、非常におモテになるんだから、気をつけろよ」
「……グレイルは、浮気しません」
「惚気か」

 そんなやりとりをしながら、私は仕事を終えた。深く吐息すると、背後でオズワルド先輩が笑った気配がした。

「幸せそうで、何よりだ」


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