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―― 第三章 ――
【四十九】支配感に蕩ける
応接間に入ると、バルラス商会の会長とその部下らしき人々が三人いた。夏の月神のセレモニー以来にお会いしたのだけれど、快活に笑う姿は元気そうで、相変わらず表情筋の動かない僕がおずおずと会釈をしても、人々は笑顔を返してくれた。
バーナードが紅茶のカップを置き、クライヴ殿下が座るように皆を促し、こうして僕も座った。ただ終始、服の下で僕の肌を少しきつく縛り上げている紐製のリーシュの存在が気になっていて、僕は会話よりもそちらに気を取られていた。
露見しないようにという《命令》を思い出すだけで――僕の全身が熱くなる。腰骨が蕩けて消えてしまいそうになり、この事を知っているのはクライヴ殿下だけだと分かってはいても、僕は紐の感触から、いつ露見するかもわからないという考えに囚われていた。紐の存在感が、クライヴ殿下に支配されているという感覚を、とにかく煽る。それが僕の心臓には非常に悪い。嬉しくて、恥ずかしくて、ドキドキして、意識がグラグラしそうになる。玩具のリーシュでこれでは、本物の首輪をもらったならば、僕はどうなってしまうのだろう。それが怖い。
「っ」
その時、隣り合っている長椅子の上で、横から僕の震えている手の甲に、前を向いたままそ知らぬふりで、クライヴ殿下が触れた。殿下の指先は、艶っぽく僕の指の間を撫で、手首を握り、それから太ももの上に置かれた。ゾクゾクしてしまい、紐と指先の感触に、僕は涙ぐむ。
僕はそのまま、いつの間にか話を終え、帰っていく皆を、玄関でクライヴ殿下とともに見送っていたのだけれど、どうやってそこに立ったのかをいまいち覚えていない。
「ルイス、食事もできそうか?」
「ぁ……っ……はい」
「そうか。では、もう少し《我慢》だ」
「ん……」
くらくらしながら、僕は背に触れられて、ダイニングまで促される。
この日食べた夕食も本当に美味だと理性は告げたけれど、僕の意識は紐のリーシュの感覚と、クライヴ殿下の視線にばかり惹きつけられて、上手く思考が出来ない。
食後、二人で寝室に向かい、クライヴ殿下が施錠したのを見た瞬間、僕は息を詰めた。
体が熱い。
「顔が蕩けているぞ?」
「あ……嬉しくて……僕、支配されてる」
「そうか。もっともっと、支配してもいいか?」
「はい……っ、ぁ……」
「では《お仕置き》は、終わりとしよう。《いい子》だったな、ルイス」
「!」
僕はその声だけで、もう立っていられなくなり、倒れこんだ。すると僕を抱きとめて、クライヴ殿下が耳元で囁く。僕は涙で潤む瞳を見つめられ、熱で力が入らない体を、クライヴ殿下に抱きしめられた。
「ルイス、脱がせるぞ」
「あ……」
「だから、《見せてみろ》」
「ン……」
こうして僕達の夜が始まった。
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