79 / 84
―― 第六章 ――
【七十九】様々な準備
しおりを挟む
その後数日をかけて、僕達は備蓄の配布を王宮に代行してもらう打合せをしたり、何度か披露宴についての話し合いをして過ごした。そうして二月の上旬が終わる頃、馬車で王領へと帰還した。
「わぁ……」
コーラル城では、四階から伸びる塔の一室の改装工事が行われていた。話は僕も聞いていたのだけれど、クライヴが新しい部屋を作るそうだった。大勢の職人達が行きかう姿に目を丸くしていると、クライヴが僕の肩を抱いた。
「完成が間近だそうだ。楽しみだな」
「どんなお部屋にするの?」
「秘密だ。完成したら、真っ先にルイスを連れていく」
悪戯っぽい目をしたクライヴの楽しそうな声音に、僕は頷いて返した。
クライヴが楽しそうだと、僕もそれだけで明るい気持ちになる。
こうして帰還後からは、本格的に披露宴の準備が始まった。まずは招待客の選定があり、クライヴと共にリストを作成した。王都では主に貴族、領地では関係のある地元の名士をはじめとした人々を招く予定だ。招待状の作成は、主に僕の仕事となった。
そのようにして、二月の中旬が始まった。
――庭には、最近、冬から春にかけて咲く木の花の蕾が見える。
僕は本日は、執務室の窓からそれを眺め、春の気配に心を躍らせてから、招待状の作成に臨んだ。一人一人に向けて文章を綴り、蝋印で封をしていく。時々バーナードが、珈琲を淹れてくれた。クライヴは、今日は城を不在にしていた間に溜まった執務を、自分の執務室で行っている。
もうじき、クライヴの誕生日があるから、その日はコーラル城で、生誕祭を催す予定だ。僕はそれも楽しみにしている。ただ、聖夜の時と同じように、まだ贈り物が決まらない。ただ、好きな相手に渡す品を悩むというのは、思いのほか楽しい。
その日の夜は、王領での披露宴の際に振る舞う料理の、試食をした。
シェフが用意してくれた品はいずれも美味であるから、純粋に味を楽しんでしまう。
王領では、コーラル城の大広間で、立食式の披露宴をする予定だ。
「やはり六月にして正解だな」
僕がテリーヌを口に運んでいると、クライヴが微笑した。
「どうしても結婚記念日は、ルイスと二人でいたいんだ」
「クライヴ……」
嬉しくなって、僕は口元を綻ばせる。僕も同じ気持ちだ。七月の僕の誕生日と結婚記念日もまた、待ち遠しい。嘗ては、ヘルナンドとの婚姻が待ち構えていると思い、己の誕生日は憂鬱な日でしかなかったが、今年は心から、祝える気がする。それは、クライヴが共にいてくれるからだ。
「明日はまた、ルミナンス伯爵が顔を出してくれる」
続いて響いた声に、僕は首輪デザイナーである伯爵について思い出した。実は今回、披露宴での衣装を、伯爵の友人のデザイナーが担当してくれる事になっている。元々王室御用達のデザイナーでもあるそうで、明日から僕とクライヴは、服を仕立ててもらうのだが、その際に身に着ける装飾品は、ルミナンス伯爵が担当してくれると決まっている。
僕は身に着けている首輪に触れ、楽しみに翌日を待った。
「わぁ……」
コーラル城では、四階から伸びる塔の一室の改装工事が行われていた。話は僕も聞いていたのだけれど、クライヴが新しい部屋を作るそうだった。大勢の職人達が行きかう姿に目を丸くしていると、クライヴが僕の肩を抱いた。
「完成が間近だそうだ。楽しみだな」
「どんなお部屋にするの?」
「秘密だ。完成したら、真っ先にルイスを連れていく」
悪戯っぽい目をしたクライヴの楽しそうな声音に、僕は頷いて返した。
クライヴが楽しそうだと、僕もそれだけで明るい気持ちになる。
こうして帰還後からは、本格的に披露宴の準備が始まった。まずは招待客の選定があり、クライヴと共にリストを作成した。王都では主に貴族、領地では関係のある地元の名士をはじめとした人々を招く予定だ。招待状の作成は、主に僕の仕事となった。
そのようにして、二月の中旬が始まった。
――庭には、最近、冬から春にかけて咲く木の花の蕾が見える。
僕は本日は、執務室の窓からそれを眺め、春の気配に心を躍らせてから、招待状の作成に臨んだ。一人一人に向けて文章を綴り、蝋印で封をしていく。時々バーナードが、珈琲を淹れてくれた。クライヴは、今日は城を不在にしていた間に溜まった執務を、自分の執務室で行っている。
もうじき、クライヴの誕生日があるから、その日はコーラル城で、生誕祭を催す予定だ。僕はそれも楽しみにしている。ただ、聖夜の時と同じように、まだ贈り物が決まらない。ただ、好きな相手に渡す品を悩むというのは、思いのほか楽しい。
その日の夜は、王領での披露宴の際に振る舞う料理の、試食をした。
シェフが用意してくれた品はいずれも美味であるから、純粋に味を楽しんでしまう。
王領では、コーラル城の大広間で、立食式の披露宴をする予定だ。
「やはり六月にして正解だな」
僕がテリーヌを口に運んでいると、クライヴが微笑した。
「どうしても結婚記念日は、ルイスと二人でいたいんだ」
「クライヴ……」
嬉しくなって、僕は口元を綻ばせる。僕も同じ気持ちだ。七月の僕の誕生日と結婚記念日もまた、待ち遠しい。嘗ては、ヘルナンドとの婚姻が待ち構えていると思い、己の誕生日は憂鬱な日でしかなかったが、今年は心から、祝える気がする。それは、クライヴが共にいてくれるからだ。
「明日はまた、ルミナンス伯爵が顔を出してくれる」
続いて響いた声に、僕は首輪デザイナーである伯爵について思い出した。実は今回、披露宴での衣装を、伯爵の友人のデザイナーが担当してくれる事になっている。元々王室御用達のデザイナーでもあるそうで、明日から僕とクライヴは、服を仕立ててもらうのだが、その際に身に着ける装飾品は、ルミナンス伯爵が担当してくれると決まっている。
僕は身に着けている首輪に触れ、楽しみに翌日を待った。
114
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
隠れSubは大好きなDomに跪きたい
みー
BL
ある日ハイランクDomの榊千鶴に告白してきたのは、Subを怖がらせているという噂のあの子でー。
更新がずいぶん遅れてしまいました。全話加筆修正いたしましたので、また読んでいただけると嬉しいです。
死に戻りした僕を待っていたのは兄たちによる溺愛モードでした
液体猫(299)
BL
*諸々の事情により第四章の十魔編以降は一旦非公開にします。十魔編の内容を諸々と変更いたします。
【主人公(クリス)に冷たかった兄たち。だけど巻き戻した世界では、なぜかクリスを取り合う溺愛モードに豹変してしまいました】
アルバディア王国の第五皇子クリスが目を覚ましたとき、十三年前へと戻っていた。
前世でクリスに罪を着せた者への復讐は『ついで。』二度目の人生の目的はただ一つ。前の世界で愛し合った四男、シュナイディルと幸せに暮らすこと。
けれど予想外なことに、待っていたのは過保護すぎる兄たちからの重たい溺愛で……
やり直し皇子、クリスが愛を掴みとって生きていくコミカル&ハッピーエンド確定物語。
第三章より成長後の🔞展開があります。
※濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭、ちょっとだけ重い展開あり。
※若干の謎解き要素を含んでいますが、オマケ程度です!
【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。
猫宮乾
BL
異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。
恋人に捨てられた僕を拾ってくれたのは、憧れの騎士様でした
水瀬かずか
BL
仕事をクビになった。住んでいるところも追い出された。そしたら恋人に捨てられた。最後のお給料も全部奪われた。「役立たず」と蹴られて。
好きって言ってくれたのに。かわいいって言ってくれたのに。やっぱり、僕は駄目な子なんだ。
行き場をなくした僕を見つけてくれたのは、優しい騎士様だった。
強面騎士×不憫美青年
【完結】王子様たちに狙われています。本気出せばいつでも美しくなれるらしいですが、どうでもいいじゃないですか。
竜鳴躍
BL
同性でも子を成せるようになった世界。ソルト=ペッパーは公爵家の3男で、王宮務めの文官だ。他の兄弟はそれなりに高級官吏になっているが、ソルトは昔からこまごまとした仕事が好きで、下級貴族に混じって働いている。机で物を書いたり、何かを作ったり、仕事や趣味に没頭するあまり、物心がついてからは身だしなみもおざなりになった。だが、本当はソルトはものすごく美しかったのだ。
自分に無頓着な美人と彼に恋する王子と騎士の話。
番外編はおまけです。
特に番外編2はある意味蛇足です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる