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―― 第一章 ――
【第八話】特色
しおりを挟む「特色って?」
心当たりのないゼクスが尋ねると、高砂と時東が顔を見合わせた。
それから高砂が咳払いをする。
「顔だよ」
「顔?」
「なんでも神様はメンクイなんだってさ」
「は?」
怪訝そうな声を上げたゼクスに反し、高砂は至って真面目な表情だ。
「〝救世主の遺伝子〟というのは、神様が美しいと思う顔の遺伝子なんだって」
「なんだそれ……」
「そして聖書にある通り、人間というのは元々神様を模して創られたから、俺達の顔は、多くの人間が美しいと判断するみたいだよ」
「……」
ゼクスが虚ろな目をした。あまり他者と接触せずに最下層で暮らしてきたため、容姿を褒められた記憶も目立っては存在していない。だが、言われてみれば確かに高砂と時東の顔立ちは整っているように思える。
「まぁ俺と高砂はアルファだから、元々それなりではあるんだろうけどな」
時東が呟くように言ったので、ゼクスは頷いて見せた。それから時東は、高砂の眼鏡を見る。
「高砂は伊達眼鏡をして顔を隠しててもモテるぞ。寧ろ眼鏡フェチまでよってきて、大変そうだ。そして俺も非常にモテる。これは自画自賛じゃなく、客観的な評価だ」
それを聞いて、ゼクスは非常に複雑な気持ちになった。ここまでの話が本当ならば、過去にモテた試しがない己が惨めに思えた。無論、聖職者であるからモテても困るのだが。ゼガリア教の神父は、基本的に妻帯しない。〝姦淫の罪〟を犯した場合、除籍される決まりがある。尤も露見しないように肉体関係を持っている者も多いのだが、律儀にゼクスはその教えを守っている。
「それを言うなら、ゼクスだって神父様なんだからアルファでしょう?」
高砂が述べたので、ゼクスが顔を上げる。ゼクスは、オメガだ。本来、オメガは発情期があるため、聖職者にはなれないという規定がある。ただ最下層に限っては、人手不足から特別許可がおりるので、ゼクスは神父となる事が出来た。
「俺は――」
ゼクスが否定しようと口を開いた時、客室をノックする音が響いた。
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