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【SeasonⅡ】―― 第一章:生首ドリブル ――
【061】花子さんとの再会
しおりを挟む「――ということで、見てきたけど、生首ドリブルはいなかったんだ」
次の日の朝、ぼくはみんなの前で七海さんに言った。すると七海さんは唇をとがらせた。これでは七海さんがうそつきみたいになってしまうけど、それは心の中であやまる。
「で、でもね? そのうわさはあるみたいで、もしも生首ドリブルにあって、『一緒に遊ぼう』といわれたら、逃げたら大丈夫だって聞いたよ!」
「聞いたって、誰に?」
「そ、その……都市伝説にくわしい子に!」
道家くんに聞いたんだから、うそではない。
「だから七海さんは、大丈夫。怖かったかもしれないけど、なにも起きないよ」
「そっか……それならいいんだけど」
何度かうなずいて、七海ちゃんもなっとくしてくれたようだった。
そのまま時間は流れていき、本日も放課後になった。
今日は椿ちゃんが休みだったんだけど、本当は哀名と椿ちゃんで、トイレの花子さんを調べにいく予定だったみたいで、代わりにぼくと道家くんがついていくことになった。ぼくと哀名は前にも会っているから、じつざいしてると分かってる。逆に椿ちゃんが見たらおどいたかもしれないから、いなくてよかったのかもしれない。
エアコンのない廃校舎の中は暑い。
ぼく達は土足で進み、四階の女子トイレに向かった。そして、時計を見てから声をかける。
「花子さん、あーそびーましょー!」
ぼくが言うと、トイレのとびらが、ギギギと音を立てて開いた。赤いスカートをはいている、おかっぱ頭の花子さんが顔を出した。
「また来たんだ」
「久しぶりね」
哀名はそう言って、ポケットに触れている。中には護符があるのだと思う。
花子さんは、道家くんを見た。
「あら。ピエロが見つかってよかったね」
どうやら前の話を覚えていてくれたみたいだ。ぼくは笑顔をうかべた。
「うん。探していたときは、協力してくれてありがとう」
「ううん。一緒にあそぶ仲間は多い方が楽しいからね!」
それから花子さんはあらためて道家くんを見た。
「おかえり、図書室ピエロ」
「――うん。ただいま」
道家くんは、ちょっとだけ嬉しそうに見えた。
「あ、今日はね、遊びに来たんじゃなくて、学校の七不思議を調べているから、話を聞きに来たんだよ」
そういえば、水間さんが前に、都市伝説のお化けには独自のネットワークがあると話していたけど、学校の都市伝説のお化け達もやっぱりそうなんだなってぼくは思い出す。ある意味それは、お友達みたいなものなんじゃないかなと考えた。
「あのね、花子さんがいたっていったら、みんなびっくりして怖がると思うから、花子さんのことは、歴史をまとめようと思ってるんだ。花子さんは、ぼくのお父さんの頃もお兄ちゃんの頃もいたんでしょう? ずっといるから、いろいろ教えてもらえないかなって思ってさ」
ぼくの言葉に、こくりと花子さんがうなずいた。
「ええ、いいわ。けど、歴史かぁ。いつの時代も、小学校のみんなは、私がいるかどうかを肝試しに見に来るけど、あんまり変化はないし、あそんでくれる子はほとんどいないかなぁ」
「花子さんは、いつからどうしてここにいるの? 私はそれを聞いてみたい」
哀名がいうと、花子さんが考えるような顔をした。
ぼくはメモを取り出す。聞いたことを書いておくためだ。
「私ももともとは小学生だったの。今とは違う頃で、ここにあったトイレよりも、もっともっと古いトイレで、ぼっとんべんじょって呼ばれていたの。中のものは、バキュームカーでくみ取っていたんだけど、私ね、トイレの中に落っこちちゃったの。そうしたら、気がついたら死んじゃってたみたいで、私はこの場所にいたの。それから、ここから出られなくなって。みんなに声をかけても、だれも気づいてくれないの。4時44分を除いては」
花子さんの顔が悲しそうに変わった。
「だからその時間に声をかけていたら、学校の七不思議になったみたい。私みたいなのを、 地縛霊っていうらしいよ」
「そうなんだ……」
トイレの中に落ちて死んでしまうなんて、とっても怖かったとおもう。
それに誰にも気づいてもらえなかったら、どんなに寂しいんだろう。
「これからは、ぼく達たまに遊びに来るよ」
「嬉しい! あなた達なら、一緒に遊んでも、ちゃんと帰してあげる」
「キミじゃぁボクには勝てないしね」
「ピエロはうるさい!」
そんな話をし、ぼくはメモをとってから、花子さんにバイバイと手を振って、廃校舎をあとにした。
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