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―― 本編 ――
【一】ライトユーザーの過去
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今はしがないブラック企業の社畜。
それが笹間湊だ。今では、帰宅しても即就寝。ゲームをする暇も無い。だがスマホを見ていると、数多のBLゲームの広告が流れてくる。やりたいなぁ、と思わないでもないが、やる時間を作り出せない。
大学生の頃、湊はとにかくBLゲームをしまくっていた。当初のきっかけは、ゲームが下手な妹の手伝いだったのだが、その後はハマった。ゲームが得意な湊は、スチルを全て集め全部のエンディングを見ると満足感を覚えていた。
ただ、その時々は没頭しても、クリアすると『はい、次!』と別のゲームに進んでいたので、一つ一つの作品にじっくりと取り込んだことはない。
BLゲームというのは、大体の場合が、主人公がいて、攻略対象がいて、その攻略対象の許嫁に苛められるも、悪役の許婚は大体断罪され、身を滅ぼす。その後、主人公は攻略対象とハッピーエンドを迎える、というような内容だ。皆、美形なのも常である。
「はぁ……今日も疲れたなぁ」
湊はそう呟き、アパートの階段を上がっていた。今日は雨だ。
――ずるり。
その時、雨で濡れた階段で、湊は滑った。あ、落下する、と思った時には、体は浮遊感に襲われていた。ギュッと目を閉じる。
――ダン。
と、衝撃を受け、思ったよりも痛くはなく、寧ろ絨毯のようななにかに頭を打ち付けたと思った時、目を薄らと開いて湊は愕然とした。
違う、『湊』ではない。
今、ベッドから落下した、ユーリ・エルドライト。それが即ち今の自分の名前であり、ユーリはその途端、甦った膨大な記憶に焦った。鈍く痛む頭を撫でながら起き上がる。手は楓のように小さい。
「そうだ……僕は、エルドライト侯爵家の次男で……」
両手を頬に当てる。五歳児らしい柔らかな頬だ。転生前の二十四歳の記憶が、そこに混じり込んでくる。
「嘘だろ……僕、転生したの、か?」
ユーリはダラダラと冷や汗をかいた。
それが笹間湊だ。今では、帰宅しても即就寝。ゲームをする暇も無い。だがスマホを見ていると、数多のBLゲームの広告が流れてくる。やりたいなぁ、と思わないでもないが、やる時間を作り出せない。
大学生の頃、湊はとにかくBLゲームをしまくっていた。当初のきっかけは、ゲームが下手な妹の手伝いだったのだが、その後はハマった。ゲームが得意な湊は、スチルを全て集め全部のエンディングを見ると満足感を覚えていた。
ただ、その時々は没頭しても、クリアすると『はい、次!』と別のゲームに進んでいたので、一つ一つの作品にじっくりと取り込んだことはない。
BLゲームというのは、大体の場合が、主人公がいて、攻略対象がいて、その攻略対象の許嫁に苛められるも、悪役の許婚は大体断罪され、身を滅ぼす。その後、主人公は攻略対象とハッピーエンドを迎える、というような内容だ。皆、美形なのも常である。
「はぁ……今日も疲れたなぁ」
湊はそう呟き、アパートの階段を上がっていた。今日は雨だ。
――ずるり。
その時、雨で濡れた階段で、湊は滑った。あ、落下する、と思った時には、体は浮遊感に襲われていた。ギュッと目を閉じる。
――ダン。
と、衝撃を受け、思ったよりも痛くはなく、寧ろ絨毯のようななにかに頭を打ち付けたと思った時、目を薄らと開いて湊は愕然とした。
違う、『湊』ではない。
今、ベッドから落下した、ユーリ・エルドライト。それが即ち今の自分の名前であり、ユーリはその途端、甦った膨大な記憶に焦った。鈍く痛む頭を撫でながら起き上がる。手は楓のように小さい。
「そうだ……僕は、エルドライト侯爵家の次男で……」
両手を頬に当てる。五歳児らしい柔らかな頬だ。転生前の二十四歳の記憶が、そこに混じり込んでくる。
「嘘だろ……僕、転生したの、か?」
ユーリはダラダラと冷や汗をかいた。
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