異世界クリエイター ~ゲームをしていたら、神様に剽窃されました~

猫宮乾

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―― 第一章 ――

【001】VRゲーム

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 VRシステムが普及して、もう三十年になるらしい。
 過去のVRと違い、今のVRは、昔でいうワイヤレスイヤホンのような接続装置を用いて、そこから脳に刺激を送り、まるでその世界に本当にいるかのような感覚が味わえる――とは、父の言葉だ。亡くなって三年になる。俺は現在、兄と二人暮らしだ。母は幼少時に亡くなった。この兄夕陽ゆうひは、控えめに言ってブラコンなのだが、俺への愛着と同じくらい、ボーイズラブというジャンルを愛している。

「いいか、陽射ひざし。俺が腐男子だということは、絶対に言うな。いいな?」

 食卓に座る俺の前に、カレー皿を置きながら、夕陽が険しい顔をした。

「うん? 誰に?」
高橋たかはしくんとか」

 高橋和美かずみは、俺の幼馴染みだ。兄は中学から県外の一貫校に進学していたので、最近まで高橋とは顔を合わせたことが無かった。兄は今年で二十七歳、俺は二十一歳、六歳違う。俺と高橋が知り合ったのは、小学校の時だ。大学までずっと一緒であり、俺は高橋以外に友達らしい友達がいないが、奴も同じだ。奴は黒縁眼鏡をかけたゲーマーである。

「言ってないって。それより、次の土曜日に遊びに来るってさ」
「そうか――……土曜? あ……梓馬が来る日だ……」
「へ? またか?」

 梓馬楓あずまかえでさんは、夕陽の会社の同期だという。なんでも、兄は梓馬さんに弱味を握られているそうで、来ると言われたら断れないようだ。その悩みというのは……ボーイズラブが好きなことらしい。俺、そこまで隠す必要性を感じないというか、正直どうでもいいんだけどな。だが、兄にとっては死活問題らしい。

「そ、そうだ。そ、そんなことより、例のアレはどうなった?」

 何やら夕陽は顔を背け、それから改めて俺を見た。

「ああ、今日買ったぞ。食べ終わったらやってみる」
「そうか」

 夕陽は自分の皿をテーブルに置き、席に着いた。父が亡くなる前から、俺は都心で兄と同居していたのだが、その間兄がずっと食事の用意をしてくれている。洗濯と掃除とゴミ出しが俺の担当だ。夕陽は料理が好きらしい。帰宅が遅い日は、作り置きをしてくれる。

「《異世界クリエイター》は、本当に面白いらしいし、本当に頼んだぞ。いただきます」
「いただきます。ええと、夕陽が創って欲しい世界は、『男だけの世界』だったよな?」

 俺が本日購入したインストールバーコードの中身が、《異世界クリエイター》というVRゲームである。まるで神様になったように、自由に世界を作成できるというゲームだ。内部で遊ぶことも出来る。今のVR技術だと、さながら異世界転移したのと同じ感覚を味わえるというのが、売りだ。シェアして、他のプレイヤーに世界を共有したりも可能だ。

「そうだ。男のみの世界で、恋愛も基本的に男同士がする世界だ」
「うん。それで、獣人や奴隷、魔王や勇者、剣士や魔術師、貴族や平民、他には動植物や魔物といったNPCや種族、オブジェを生成して設置するんだろ?」
「その通りだ」

 兄はスプーンを手にしたまま、真剣な眼差しに変わった。夕陽は、若干細身だが背も高く、元から色素が薄く茶色い髪と目をしており、肌も白い。だが切れ長の眼差しをしていて、男前だ。昔からモテる。イケメンだ。

 俺は自分で、そう悪い方ではないと思うが、正直モテた経験は無い。幼少時から、バレンタインになると、兄と俺では格差を感じる。

「媚薬や香油もいて、レーティングはR18だったっけ?」
「その通り! ガッツリ、プレイヤーもNPCも、そ、その……ヤれる方向で頼む!」

 夕陽は少し言い淀んだが、断言した。弟相手に、多少の羞恥はあったのだろう。俺もこれが、『兄がNPCとSEXしたい』という意味だったら、若干ひいたかもしれない。だが、兄が見たいのは、男同士の生BLだそうだ。いつも兄は、『俺は壁がいいんだ』という謎の発言を繰り返している。

「お前だけが頼りなんだ。俺には仕事で時間が無い。そもそもゲームをしたことが無い。どうやるのかもさっぱり分からない。ただ、見たいんだ! 俺の理想の世界を!」
「分かったよ。俺もそこまで得意って訳じゃ無いけど、やっとく。日曜日には、高橋が見に来て調整を手伝ってくれるって」
「えっ!? 俺が腐男子だって、ま、まさか……」
「言わないって。このくらいでバレるとも思わないしな」
「そ、そうか……」

 いつもは怜悧な感じの兄が、そわそわしているのが分かる。俺は生温かい視線を向けた。
 本日のカレーも美味だ。付け合わせのレタスとチーズのサラダも俺は好きだ。
 その後、これから創る異世界の詳細を少し話し合ってから、俺は食事を終えた。


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