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―― 第三章 ――
【015】第一遭遇
しおりを挟む翌朝、俺と夕陽は一階の酒場件食堂で顔を合わせた。待ち合わせの時間に一階に来た俺は、既に席について深刻そうな顔で俯いている夕陽を見つけた。静かに歩み寄ると、兄が俺に気がついた。そして表情を一変させて、笑顔を浮かべた。兄は不安なことがあった時、それが深刻であればあるほど、俺の前では笑顔を浮かべる。父が亡くなったときも、俺を励ますように笑顔を浮かべていたのを覚えている。
「おはよう、陽射」
「おはよ」
「朝食のメニューは決まっているらしい。注文しようか」
「うん」
俺が頷くと、夕陽が給仕の店員さんに注文をしてくれた。すぐに届いた皿には、レタスと目玉焼きが載っている。いただきますと手を合わせて、俺達はそれぞれフォークを手に取った。
「高橋達、今日は帰ってくるかな?」
「どうだろうな。まぁ梓馬もいるし、大丈夫だとは思うけどな」
「そうだな。じゃあ俺は……その、予定としては、今日はここの世界に相応しい服を買いに行くつもりだったんだけど、夕陽はどうする?」
俺は高橋との会話を思い出した。そんな場合ではないのかもしれないという思いが非常に強いのだが、他に話題が思いつかなかった。
「……俺は、梓馬達の帰りを待ってる。陽射、気をつけていくようにな?」
「うん……」
兄は本当に心配しているようだ。一番ファンタジー耐性が無いしな……。
なんだか不憫に思えてくる。
「それと、街を歩いていて恋愛関係にある男二名がいたら、どんな風だったか教えてくれ」
申告そうなままで兄が続けた。俺は手にしていた水を拭くかと思った。
「頼む、陽射。これは重要なことなんだ。もし、毎日生BLが見られると分かったら、俺はこの世界でも頑張れるかもしれない。いいや寧ろ、現実より輝けるかもしれない!」
「わ、わかったよ……」
俺が引きつった顔で頷くと、顔を上げた夕陽が神妙な顔で頷き返した。
こうして食事を終え、俺は一度部屋に戻ってから、改めて階段を降り、宿屋を出た。道順を覚えながら、石畳を歩く。【神様モード】で街の簡単な地図を表示したので、どこにお店があるかは分かった。本日は空が白い。雨は降っていないが、曇りだ。その割に、周囲が明るい。気候は穏やかだ。熱くも無く、寒くも無い。ちなみに地球準拠にしなかったのが気候と季節だ。国や土地によって、大陸の位置や自転を無視して、様々な季節がある。四季がある国もあるが、ずっと夏の国や雪が降り続けている国もある。
そんなことを考えながら角を曲がると、あまり人通りが無い通りに出た。この道を真っ直ぐ進むと大通りに出る。その道沿いに、たくさんの店があるらしい。
……それにしても、俺は本当にこんなことをしているべきなのだろうか?
高橋が心配だと思うのに、俺はすやすやと寝ていた。なにもしなかった俺は臆病だ。その点、高橋は勇気がある。いいや、俺に勇気が無いだけだ。
「うわっ」
考え事をしていたからなのか、俺は何かに足を取られて、前に転びかけた。
「!」
石畳に激突することを覚悟した俺であるが、気づくと厚い胸板に抱き留められていた。腕が俺の背に回っている。黒い外套を着ているようで、顔を上げると、そこには端正な顔をした赤い髪の青年が立っていた。目の色も赤だ。
「大丈夫か?」
目が合うと、にこりと笑って、目を細めてその青年は笑った。
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