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―― 第三章 ――
【018】鏡の迷路
しおりを挟む俺達は、魔法陣にのり、聖愛都市ラヴァーズへと移動した。俺達が地に降り立つと、すっと足下の魔法陣が、光の粉になって消えた。一方通行らしい。【神様モード】で見ると、他にも魔王国などにも類似の魔法陣があるようだった。
「早速迷路に行こう。きっとその周囲には、恋人達がたくさんいるはずだ!」
遠くに看板が見える。兄がそちらに向かって歩きはじめた。慌てたように梓馬さんが隣においついて、並んで歩いている。俺と高橋は、その後ろをまったりと歩く。
「なぁ、陽射」
「ん?」
「前の二人が迷路に入るとして、俺達も入るのか?」
「んー……俺は別に興味ないけど」
「俺もないんだよなぁ」
「でもさ? 逆に考えると、迷路に入ってで会わなければ、俺達が結ばれない証明になるよな?」
「あ、それはいいな。じゃ、入るか」
そんなやりとりをしながら、俺達は鏡の迷路に到着した。一階建ての巨大な施設だ。梓馬さんがチケットを四枚買ってくれた。一度に数組は入れるそうで、俺は万が一兄か梓馬さんと遭遇したら、それも嫌だなと思いながら、中に入った。勿論、俺達以外の客もいる。
「まぁ、どうせこんなのデマだよなぁ」
そう呟きながら、俺は鏡の壁で作られた迷路を適当に歩く。まぁそのうち、出口につくだろう。気楽に考えて、俺はブラブラ歩いていた。
すると――角を曲がったとき、人とぶつかった。
「うわっ」
思わず声を上げて前に倒れた俺を、その人が抱き留めた。なんだか既視感がある耐性だ。そして顔を上げて俺は驚いた。既視感も何もそこには昨日助けてくれたルカスが立っていたからである。抱き留められたのも全く同じだ。
「ヒザシ? なにしてるんだ?」
「ルカスこそ」
「俺は魅了魔術の調査……ああ、なんでもない。お前は恋人とここに入ったのか?」
「違うよ、俺、恋人なんて生まれてこの方出来たことがない」
俺が我ながら空しい答えをすると、ルカスが俺をきちんと立たせてくれた。
だけど魅了魔術の調査ってなんだろう?
聞こうかと思った時、ルカスが屈んで俺を覗き込んだ。
「……ここは、運命の相手とのみ遭遇する迷路だったな」
「うん、そうらしいけど、そんなのデマじゃ――!!」
ルカスがその時、急にチュッと俺の唇に唇で触れた。俺は目を見開く。
「な、な、な……」
「運命の相手かもしれないからな。後で後悔しないように、キスを貰っておいた。それじゃあ、俺はもういく。今回は本当に偶然の遭遇だったが……次は俺から会いに行くかもしれない。またな」
そう言ってルカスは俺が来た方角へと歩いて行った。あちらへ行けば、俺が入ってきた入り口が出口となり、外に出られるだろう。
「……」
俺は思わず口を押さえる。だんだん頬が熱くなってきた。
すごいな、異世界人。さすが男だけの世界――というのが関係あるのかないのかは分からないが、俺のファーストキスは、奪われてしまった。
なお、俺はその後、誰とも会わずに、出口に到着し、外へと出た。
やはり俺と高橋の間には、運命の赤い糸は繋がっていなかったのである。
分かってたけど。
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