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―― 第三章 ――
【017】次の行き先
しおりを挟む宿に戻ると、高橋と梓馬さんの姿があった。夕陽が、目に見えてほっとした顔で喜んでいる。俺が杖を手に歩み寄ると、三人が俺を見た。
「聞いてくれ、陽射」
「高橋、無事でよかった。どうしたんだ?」
「すっごい強かったんだよ、梓馬さん。あれはやばい」
「へ?」
「俺の回復能力もやばいけど、強すぎる」
がしっと高橋が俺の両肩を手で叩いた。
「魔獣はどんなのだったんだ?」
「光になって消えるから、エグさは無かった」
「なるほど」
「ところで、お前その杖どうしたんだ?」
「ん……ああ、武器店にいってきたんだよ」
「お前金持ってたの? 梓馬さんにいつの間にか貰ってたのか?」
「い、いや……ええとな、その……貰ったんだ」
杖は実際に貰った。だから嘘はついてない。短剣はかったけれど、それは黙秘だ。
そのとき、咳払いが聞こえた。
見るとロイドが、こちらを見て、笑っていた。だが、俺を見る目が笑っていない。
「失礼だが、ヒザシはタカハシとどういう関係だ?」
「え? 友達だけど」
「恋人ではないんだな?」
「うん。それはあり得ないかな。ええと、なんで?」
「タカハシの優しさが、その……ええと」
言いよどんだロイドを見ると、タカハシがうざったそうな目をした。
「そういうのいいから」
「高橋、なにがどうなってるんだ?」
「魔獣討伐は一瞬で終わったんだよ、梓馬さんのおかげで。だけど森を夜歩くのは危険だからって事で、その場で野営をしてたら、なんか急にロイドが俺を口説き始めたんだ。どこのチョロインだよ、本当」
高橋は、不機嫌そうである。こういう時は、深くは聞かない方がいい。
「ロイド様、そろそろ騎士団の撤収を開始しますが」
そこに部下らしき人が声をかけてきた。するとロイドが実に悲しそうな顔をした。
「名残惜しいが俺はいく。絶対にまた会おうな、高橋」
そう言って、ガシッと高橋の手を握りしめた。高橋は死んだ魚のような目をしている。
こうしてロイド達騎士が帰っていった。
「お前ら、こっちに来て座れ」
すると梓馬さんに声をかけられた。俺と高橋は、素直にテーブルへと向かう。
四人で座ると、梓馬さんが腕を組んだ。
「さっき宿屋の店主に聞いたんだけどな、この原初都市には、大陸のどこにでも転移が可能な魔法陣があるらしいんだ」
なんとも便利だなと考えていると、夕陽がうっとりするように高橋を見ていた。
高橋もその視線に気づいている。しかし高橋は理解していない様子だ。
……兄はどうやら、高橋とロイドの関係を妄想しているようだ。
俺はすぐに悟った。
「それで、どこに行く?」
梓馬さんが呆れた顔で夕陽を見ながら仕切っている。
「恋人同士が多いところに行きたい!」
すると夕陽が勢いよく答えた。欲望がダダ漏れである。俺以外の二人がどんな反応をするかと思っていると、梓馬さんはニヤッと笑った。
「いいな。俺と夕陽が並んで歩くのには丁度いい」
「それ、どんな名前の都市なんですか?」
高橋が胡散臭そうな顔をした。すると梓馬さんが、手にしていた大陸の地図を、テーブルに広げた。すかさず夕陽が指をさす。
「聖愛都市ラヴァーズというところが、恋人達の聖地だと、お前達を待っている間に、宿の人に聞いた。なんでもそこには、永遠の恋を保証する鏡の迷路があるらしくて、迷路で出会えると、その二人の愛は永遠らしい。魔術がかかっているそうだ」
「へぇ。試そうぜ、夕陽」
「? 何故? 俺は観察をするんだぞ?」
「――だ、だから、中に入った方が観察しやすいだろ」
「それもそうか」
兄はどうやら、気分を切り替えているようだ。昔から、夕陽は適応力が高い。
こうして俺達は、次の目的地を決めて――流れるように旅立つことになった。
部屋で荷物をまとめながら、俺は朝会ったルカスは無事に泊まれたのだろうかと考える。まぁ、もう二度と会うこともないだろうが。そう思って、俺はすぐにルカスのことを忘れた。
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