世界に二人は、自分に似た人がいるらしい。

猫宮乾

文字の大きさ
1 / 3
―― 第一章 ――

【001】伴侶不在の輿入れはド緊張

しおりを挟む

 ドクドクドクと、胸の音が煩い。白地に青い糸で刺繍が入った、俺には似つかわしくないにもほどがある豪奢な装束を身に纏っている俺は、現在緊張から体を強ばらせている。

 というのも、今俺は、母国の隣にあるユースフェルド帝国の謁見の間にいる。平民の、俺が。唇を引き結び、余計なことを決して口にしないようにと近いながら、俺は戦々恐々としつつ、恐らく顔面が蒼白になっている。

「申し訳ございません、ライナ殿下。皇太子殿下が何処を探しても見当たらず……」

 申し訳なさそうに、銀色の長い髪を一つに結った青年が、俺に頭を下げた。
 俺は慌てて会釈をする。王子としてそれが正しいのかは分からないが。
 俺は確かにライナという名前だ。だが、決して殿下ではない。

「どうぞ本日は、後宮のお部屋でお休み下さい」

 先ほど俺に、宰相補佐官だと名乗った青年は、確かファルセと名乗っていた。
 俺が母国であるダジェンダル王国から、嫁いで・・・きた時、最初に出迎えてくれた人物である。年齢は、俺と同じ年くらいだから二十代後半だろうか。俺は二十七歳だ。結婚するにしては、遅いだろう。ただ俺は、病弱な弟の世話をしていたから、恋をすることもなく、未婚で過ごしてきたのだが。

「参りましょう」

 その時俺の隣にいた、俺専属の侍従になったのだというエルネが頭を下げてから、俺を促した。こちらの彼は、俺よりも年上の三十代半ば頃に見える。右も左も分からないままで、俺はその足で後宮へと連れていかれた。

 書類を交わして伴侶となった皇太子殿下。
 普通、顔合わせの席にやってこなかったら、落胆するか激昂するか、するのかもしれない。けれど俺の場合、安堵が勝った。なにせ俺は――偽りの側妃なのだから。

 ――どうして、こんなことになったのか。
 それを話すと、長いようで実は短い。俺は後宮の部屋につき、あまりにもの広さと豪華さに唖然としつつ、促されるがままに一人がけの座り心地の良い椅子に座りながら、目の前に良い香りのする紅茶が置かれた時、自分の状況を改めて思い出した。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最愛の番になる話

屑籠
BL
 坂牧というアルファの名家に生まれたベータの咲也。  色々あって、坂牧の家から逃げ出そうとしたら、運命の番に捕まった話。 誤字脱字とうとう、あるとは思いますが脳内補完でお願いします。 久しぶりに書いてます。長い。 完結させるぞって意気込んで、書いた所まで。

運命よりも先に、愛してしまった

AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。 しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、 2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。 その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました 2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。 様々な形での応援ありがとうございます!

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。抱かれたら身代わりがばれてしまうので初夜は断固拒否します!

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
隣国の国王キリアン(アルファ)に嫁がされたオメガの王子リュカ。 しかし実は、結婚から逃げ出した双子の弟セラの身代わりなのです… 本当の花嫁じゃないとばれたら大変! だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだんキリアンに惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

αに軟禁されました

雪兎
BL
支配的なαに閉じ込められたΩ。だがそれは、愛のはじまりだった――。

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

どうも。チートαの運命の番、やらせてもらってます。

Q矢(Q.➽)
BL
アラフォーおっさんΩの一人語りで話が進みます。 典型的、屑には天誅話。 突発的な手慰みショートショート。

処理中です...