5 / 6
【五】SIDE:操
しおりを挟む寝入ってしまった十朱から陰茎を引き抜くと、白液が零れてきた。
それが布団を濡らす事には構わずに、隣に寝転び、僕は十朱を抱き寄せた。
「まさかこんな不憫な状態になってるとはね」
ポツリと呟きながら、僕は愛しい十朱の黒髪を撫でる。艶やかで、触り心地が良い。涙の痕が残っている頬を指で撫で、僕は口づけた。それから寝転び天井を見上げる。
「僕はもう、十朱くんに守ってもらわなくても大丈夫というか――逆に恩返し的に、守ってあげないとなぁ」
無意識にそう呟いてから、僕は脱ぎ捨てた服に片手を伸ばしてスマホを取り出した。
そして弟の葵に連絡してみる。
『どーしたの?』
「あのさぁ、登藤って奴、知ってる?」
僕の優秀な弟は、大体なんでも知っているので、僕は笑みさえ浮かべながら訊いてしまった。
『ああ。月芝亭にお金貸してるんでしょ? 悪い噂も絶えない、悪い意味での地元の名士の家系の』
「そうそう、多分それ」
『その登藤さんがどうかしたの?』
「潰せる?」
『――操兄ちゃんがそういう事言うの、珍しいね』
「うん。ちょっとイラっとしちゃってさ」
『俺、そういうの大好き。任せて! 優秀な片腕たる、この俺に。それに俺、ああいうタイプを泣かせるの大好きなんだよね。色々な意味で』
一気に葵の声が明るく変わった。僕の笑顔も深くなる。
「それとさぁ、ちょっと考えてみたんだけどね」
『うん?』
「コスパと量だけじゃ、この先不安だって言うのは、父さん達ともよく話すよね?」
『そーだねぇ』
「そういう意味合いで、月芝亭の味はさ、コスパ最悪の量も極少だけど、最高でさぁ、ちょっと考えたんだけど――平楽屋の全国展開開始の頃、コラボするのどうかなぁ」
『お。操兄ちゃんのこれまでの企画、全部当たってるし、アリなんじゃない?』
「お兄様の実力を見よ!」
『だけど、うちとはスタンスが違いすぎる月芝亭の事、どうやって口説くの?』
「うーん、どうしようかなぁ。僕、既に十朱くんには口説き落とされちゃってるから、自信無いなぁ」
『え? 上手くいったの? 恋、実っちゃった感じ?』
「勿論。僕、過去に欲しいと思って、手に入れられなかったもの、ゼロだし」
『だよね。だから俺は、一生右腕としてついていくと決めてるし、操兄ちゃんこそが、グループ代表の素質の持ち主としか言えないよ』
「もっと褒めてくれて良いよ。じゃあ切るね。提携後の企画管理と、あとは繰り返すけど、登藤の事だけは、宜しくね」
『うん。任せて! ズタボロにしておくから!』
こうして僕は、色々と優秀な弟に任せつつ、通話を終えた。
というのも、隣で、十朱が身じろぎしたから、起こしては悪いと思った結果だ。
スマホを置いて、僕は今度は両腕で十朱を抱きしめる。
すると再び寝息が聞こえ始めたので、僕は彼の額に口づけを落としてから、自分も少し微睡む事に決めた。
「ん……」
次に僕が目を開けたのは、腕から抜け出す気配を察知した時だ。大層寝起きが悪い僕ではあるが、それ以上にもっと十朱と一緒にいたかったので、両腕に力を込めて、それを封じる。
「おはよ、十朱くん」
「あ……起こしたか?」
「うん。起こされた。僕はまだ眠いので、動かないで下さい」
「っ、あ、その……昨日は、俺……抱いてくれなんて、酷い頼みを……」
薄っすらと目を開けた僕は、赤面している十朱を視界に捉え、覚醒した。
「酷い頼み? 僕にとっては僥倖でしか、なかったけどね」
「だ、だって……男を抱けると言っても、別にお前は、俺を好きなわけじゃ――」
「好きじゃなかったら抱かないよ。十朱くんは、好きじゃない相手にも抱かれるから、そういう事言うの?」
「っ……良いんだ。良い思い出になったから。もうこれで悔いは無い。有難う、操」
「何一つ良くないよ。十朱くん。僕は、十朱くんが僕以外に抱かれるとか許しませんけど」
「……お前は優しいな」
何も分かっていないのか、僕の気持ちが伝わっていないのか、十朱は切ない表情で笑っている。全く、溜息が出てしまう。嘆息しつつ、スマホを片手で手繰り寄せ、僕は葵からのトークアプリのメッセージを取り急ぎ確認した。
『制裁は、成功です』
そこには、チャーシューのように紐で縛られた、登藤をハメ撮りしている笑顔の葵の画像があった。さすがは我が弟、やる事が早い。
「十朱くん。登藤の事だけど、もう大丈夫だから」
「え?」
「銀行への返済も、肩代わりのあてが出来てる」
「どういう意味だ?」
「――平楽屋と月芝亭の良い所が重なったら、最高だと思わない?」
「?」
「早い、安い、美味い」
「そ、それは理想だろうけどな……?」
「というわけで、三茶グループと提携しない? 企画協力金、先にお支払いするので、それで銀行には返済すれば良いよ」
「え?」
虚を突かれたように、十朱が目を丸くしている。本当に愛らしくて困るし、男前の純粋な顔というのは、汚したくなってしまうのも困る部分だ。
「これから、公私ともに忙しくなるから、覚悟してね」
「公私?」
「仕事においては、究極の蕎麦について僕と探求。私的には、僕の恋人として――ちょっとマグロは好みじゃないから、開発させてもらおっかなぁって」
「こ、恋……な、なんて?」
「僕の事が好きって、嘘だったの? 十朱くん、僕を弄んだの?」
「い、いや……俺は、本当に好きだけど……気持ち悪くないのか?」
「何が? もう可愛くて愛しくて、俺死にそう。愛してるよ、十朱くん」
ギュウギュウと僕が抱きしめると、十朱が真っ赤になった。それがまた愛おしい。
こうして僕達は、恋人同士として、新しい朝を迎えたのだった。
「ね、十朱くん」
「な、なんだ?」
「――もう一回、シたい」
「!」
「嫌?」
僕が問うと、真っ赤になった後、瞳を潤ませてから十朱が小声で答えた。
「……嫌じゃない」
この日、僕らは散々交わった。日曜日で助かった。本日の月芝亭は、臨時休業となった。僕は気真面目に仕事に行こうとした十朱を布団に縫い付けて、何度も何度もその体を暴き、僕という存在を刻み込む。快楽と、愛を、叩き込む。もう、僕は絶対に十朱を逃がさないし、幼き日とは逆に、今後はずっと、僕が守ると決めていた。
2
あなたにおすすめの小説
真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~
水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。
アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。
氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。
「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」
辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。
これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!
箱入りオメガの受難
おもちDX
BL
社会人の瑠璃は突然の発情期を知らないアルファの男と過ごしてしまう。記憶にないが瑠璃は大学生の地味系男子、琥珀と致してしまったらしい。
元の生活に戻ろうとするも、琥珀はストーカーのように付きまといだし、なぜか瑠璃はだんだん絆されていってしまう。
ある日瑠璃は、発情期を見知らぬイケメンと過ごす夢を見て混乱に陥る。これはあの日の記憶?知らない相手は誰?
不器用なアルファとオメガのドタバタ勘違いラブストーリー。
現代オメガバース ※R要素は限りなく薄いです。
この作品は『KADOKAWA×pixiv ノベル大賞2024』の「BL部門」お題イラストから着想し、創作したものです。ありがたいことに、グローバルコミック賞をいただきました。
https://www.pixiv.net/novel/contest/kadokawapixivnovel24
テメェを離すのは死ぬ時だってわかってるよな?~美貌の恋人は捕まらない~
ちろる
BL
美貌の恋人、一華 由貴(いっか ゆき)を持つ風早 颯(かざはや はやて)は
何故か一途に愛されず、奔放に他に女や男を作るバイセクシャルの由貴に
それでも執着にまみれて耐え忍びながら捕まえておくことを選んでいた。
素直になれない自分に嫌気が差していた頃――。
表紙画はミカスケ様(https://www.instagram.com/mikasuke.free/)の
フリーイラストを拝借させて頂いています。
幼馴染みの二人
朏猫(ミカヅキネコ)
BL
三人兄弟の末っ子・三春は、小さい頃から幼馴染みでもある二番目の兄の親友に恋をしていた。ある日、片思いのその人が美容師として地元に戻って来たと兄から聞かされた三春。しかもその人に髪を切ってもらうことになって……。幼馴染みたちの日常と恋の物語。※他サイトにも掲載
[兄の親友×末っ子 / BL]
大工のおっさん、王様の側室になる
くろねこや
BL
庶民のオレが王様の側室に?!
そんなのアリかよ?!
オレ男だけど?!
王妃様に殺されちまう!
※『横書き』方向に設定してお読みください。
※異母兄を『義兄』と表記してしまっておりました。『兄』に修正しました。(1/18・22:50)
勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される
八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。
蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。
リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。
ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい……
スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)
【完結】一生に一度だけでいいから、好きなひとに抱かれてみたい。
村松砂音(抹茶砂糖)
BL
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました!
ありがとうございました!!
いつも不機嫌そうな美形の騎士×特異体質の不憫な騎士見習い
<あらすじ>
魔力欠乏体質者との性行為は、死ぬほど気持ちがいい。そんな噂が流れている「魔力欠乏体質」であるリュカは、父の命令で第二王子を誘惑するために見習い騎士として騎士団に入る。
見習い騎士には、側仕えとして先輩騎士と宿舎で同室となり、身の回りの世話をするという規則があり、リュカは隊長を務めるアレックスの側仕えとなった。
いつも不機嫌そうな態度とちぐはぐなアレックスのやさしさに触れていくにつれて、アレックスに惹かれていくリュカ。
ある日、リュカの前に第二王子のウィルフリッドが現れ、衝撃の事実を告げてきて……。
親のいいなりで生きてきた不憫な青年が、恋をして、しあわせをもらう物語。
※性描写が多めの作品になっていますのでご注意ください。
└性描写が含まれる話のサブタイトルには※をつけています。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」さまで作成しました。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる