昔MMOで最強だった俺、性的に最弱となる。

猫宮乾

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 俺のレベルは、269レベルである。当時、カンストが260だったのだが、レベルをカンストさせてから、シナリオと呼ばれるゲームのメインストーリーを行うと過剰に経験値が入り、レベルがキャップよりも上がったため、俺は269レベルなのだ。VR版では、現在のカンストが250レベルらしい。俺がいない間のMMO版では、360レベルまで解放されていたと聞く。

 レベルはこうしてみるとMMO版からの移行者の方が有利だ。
 だが――VRは、リアリティがあるから、単純なレベルではなく、これまでとは違いユーザースキルがかなり求められるらしい。例えば、剣士系ならば、高レベル者よりも剣道有段者が強いと聞く。やってみないと分からないが、俺は少し楽しみだった。

 続いて俺は、ペット小屋へと向かった。ここでは、個人がペットを買う事ができる。俺はフル課金でペット枠を拡張していたため、四匹のペットがいる。無課金だと、一種類までしか持てない。そこには――赤い文字で、『絶食』というマークが出ていた。

「本当ごめん……」

 いたたまれない気持ちになる。だが、俺を見ると、みんなが飛び出してきた。ピンクと白、水色と黒の、毛玉みたいにモコモコの体に、兎みたいな耳、そして猫のような目をしたパーラ兎猫達だ。俺は、このレアモブが好きすぎて、必死にガチャを回したものである。決して戦闘能力は高くないが、俺はこの四匹が好きだ。

「わ、舐めるな……可愛い……リアルだ……」

 四匹を抱きとめて、俺は照れくさくなって笑顔を浮かべた。全員にペットフードを与えながら、庭の芝の上に座る。この芝も課金アイテムだったのだが、なんというか、柔らかな草は、本当に本物としか思えなかった。風景は夜で、蛍が飛んでいる。そこに緑の瓦の神社が建っていて、これが俺の【ホーム】である。ゲームは典型的なRPG世界観なのだが、俺は和風アイテムが好きなのだ。和服のアバターも沢山持っている。両親が没したためにゲームにのめり込んでいたのが当初で、あの頃は保険金を湯水のようにゲームに注ぎ込んでいた。俺ほどの重課金者は珍しかったと思う。高校にも、両親の事があったからあまり行かず、けれど周囲も俺に気を使って注意はしなかったのだ。今思えば、して欲しかった。学校に顔を出せと俺に話しかける友人がいなかったのは、元々俺は広く浅い付き合いしかしていなくて、深く関わってくれる相手が残念な事に出来なかったからだろう。

 だからこそ、俺はアイツの優しさに、縋ってしまったのかもしれない。
 もう未練は無い……だが、俺は、もう恋などしないだろう。
 今はそれよりも、友達が欲しい。人間不信をその一件からこじらせたせいで、俺は大学にも友達がいないのだ。親戚もいないから天涯孤独である。こうして折角VRでゲームを始めるのだから……そうだな、ギルドとかに入って……和気藹々と……。

 俺は、小さく一人頷いて、視線操作で左下にあったメニューボタンを展開し、その中からコミュニティを選択した。パーティやギルド、フレンドと書いてある。フレンドリストは引退時に全消去したから白紙だった。パーティも今は組んでいないわけだから白紙。パーティというのは、適宜モンスター討伐時などに組むものだ。ギルドも、ログインしなくなる手前に抜けた。その画面の左上のマークに触れると、【ギルド募集検索】というものが存在する。これはMMOの時と変わらない。ギルドは親しい者に誘われたり、一緒に作ったり以外に、このような募集掲示板でも探す事ができるのである。後で、じっくり見て、どこかに入ろうと決意した。

 最後に、折角メニューを開いたのだからと、俺は自分のステータスを確認することにした。名前はバジル、レベルは269――現在の公式カンストは250だからプラス19レベルだが、MMO移行者の中には360以上がいるはずである。職業ジョブは、聖職者。回復と光魔法が使用できる。バフとしてかけるスキルも多い。所持金ガルデガルデが167億ガルデ。HPとMPと各種ステータスも昔のままだ。ステ振りは、ステータスポイントが今は余っていないから、課金アイテムを使用しないと変更できない。こちらも10キャラ分に統合されていたから――俺は全てのステータスがカンスト状態だった。269レベル時点においてであるが。レベルが上がるとステータスポイントがもっと貰えるし、ポイントを割り振ることができるようになる数も増える。だが普通は一人1キャラクターであるから、10キャラクターいる俺は、恵まれているなと思った。

 最後に、ランキングを見た。今日からVR版とMMO版の統一ランキングが表示されるらしい。

「あ」

 俺は思わず声を上げた。俺の名前が載っていたからだ。
 ……見なかったことにした。

「よし、心機一転楽しもう!」

 気分を切り替え、とりあえず俺は、街に繰り出すことに決めた。

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