魔王の求める白い冬

猫宮乾

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―― 第一章 ――

【008】何が為に生まれたのか

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「……」
「……」

 勇者が強引に僕の手を取って歩くせいで、何度も転びそうになった。
 普段椅子にしか座っていない僕の脚力を甘く見てはいけない!

 その上、僕と話がしたいだなんて言っていたのに、勇者は無言だ。僕は、会話も苦手だが、無言の空気感も大の苦手なのである。

 暫く歩くと、僕らは突風が吹き抜ける丘の上へと辿り着いた。
 ここからは、魔王城の次に、よく城下街が見渡せる。

 きっと適当に歩いてきたんだと思うけど、良くこんな場所を見つけたなぁと感動した。

 ――此処は、墓場だ。
 魔族は基本的に、死ぬと砂になって消えてしまう。

 だからその砂を拾って、小さな正方形の石棺に収め、地に埋めるのだ。そして四角い墓石と、白い十字架を立てる。これは僕が来るまで無かった風習らしい。だけど初めて勇者がやってきた時に砂となって消えていくみんなを見ていたら、つい何もせずにはいられなくて、残った僕はロビンと二人っきりでお墓を作ったのだ。砂となった遺体はしばらくの間は、亡くなった場所に少しだけ残っているから、集めて回った。別に僕は基督教徒だった訳じゃないけれど、十字架を作るのが材料的に一番都合が良かったので、このようにして十字架を立ててある。いつかは此処にロビンと僕も眠るのだろう。

「……きちんと弔っているんだな」
「残された自分たちを慰めるためにだけどね」
「人間は今、合同で火葬をしていて、骨はそのまま土に埋めて、巨大な石碑を一つ建てるだけだ」
「そう言う風習なの?」
「違う。死者の数が多すぎて、葬儀が追いつかないんだ――俺はそれを、魔王がいるから、魔王が魔族をけしかけるからと聞いて育った」

 そうだったのか。
 だとすれば、やはり僕は恨まれてもしかたがないと思う。

 魔族をけしかけた覚えなんて無いけれど、勇者は僕にそう言われたからと言って、簡単に納得できるとは思えない。僕が勇者だったら、絶対に納得しない。

「……これから、魔王は、俺達が殺めた魔族の遺骸を拾いに行くのか?」

 遺骸、か。僕にとっては人も魔族もあんまり変わらないから、せめて遺体と言って欲しかったなって思う。

「まぁね。二十四時間位すると、完全に消えてしまうから、その前には」

 ああ、そうしてまた墓石が増えるのだ。


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