魔王の求める白い冬

猫宮乾

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*** 過去:Ⅰ ***

【017】過去――魔王一日目①

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 僕は、真っ白な光に包まれた。
 神様に移動させられたのだと気づいたのは、自分が金で縁取りされ、赤いヴェルベッドで非常に座り心地の良い椅子に座っていると気づいた時だった。真っ白い光に包まれて、それまで立っていたはずなのに、気づくと座っていたのだ。

 目の前には、ファンタジックな服を着た老人が二人、その一歩後ろに青年が一人、更に向こうには、目算で三十名ほどの人々がいた。皆、片膝をたてて、頭を下げている。

「……?」

 どうして良いのか分からず、僕は曖昧に笑って首を傾げた。
 しかし皆頭を下げたまま、ピクリとも動かない。

「あの……?」

 沈黙が辛くて僕は尋ねた。

「はッ」

 すると間をおかずに、右側にいた老人が声を発した。

「ここは?」

 僕が尋ねると、老人が頭を下げたまま続ける。

「魔王城でございます、陛下」
「魔王城……」
「はッ」
「あ、あの……宜しければ、お顔を上げていただけませんか?」

 自分よりも年上の人に、ずっと跪かれているというのは、何とも居心地が悪い。

「皆さんも」

 僕の言葉に、その場にいた人々が顔を上げた。

 すると正面にいた老人二人と若い青年が視線を交わしたのが分かった。
 僕はどうしたらいいのか分からなかったので、とりあえず笑ってみせることにする。

「あ、あの、まだ僕はここの事がよく分からないのですが……」

 僕の声を聞くと右側にいた老人が、意を決したように立ち上がった。
 それから僕をじっと見る。

「――非礼にて罰を受けることは覚悟しておりますゆえ」
「え?」
「お許しもないというのに、勝手に立ち上がり申し訳ございません」
「いやいやいや、そんな、全然です」
「私めを殺さないのですか?」
「え、まさか、え? え? どうしてですか?」
「……私は、この城を、魔王様が顕現されるまでの間、管理していたシモンと申します。後ろに控える使用人達に、各自の仕事へ戻るよう、指示を出しても構いませんか?」
「あ、はい。よろしくお願いします」

 僕が頭を下げると、呆気にとられたような顔をしてから、シモンさんは振り返った。

「皆、戻れ」

 そこに響いた声音に、僕は硬直した。

 先ほどまでは、何処か震え気味の嗄れた声だったというのに、使用人達にかけた言葉はゾッとするほど冷たかったのだ。尋常じゃなく怖い、と言うのが率直な感想だ。

 だが使用人達は、その声を待っていたかのように、皆足早に部屋を出て行った。時折僕の方をちらりと見る人がいたのだが、皆その目には怯えの色が見て取れた。

 シモンさんは実はかなり怖い人なのか――いや、もしかすると、僕が何故なのか怖がられていたりするのか?

 そんなことを考えていると、シモンさんが僕に向き直った。

「残る二名に、立つお許しを頂けませんか?」
「あ、はい。どうぞ、立って下さい」

 するともう一人の老人と、その一歩後ろにいる青年が立ち上がった。


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