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*** 過去:Ⅰ ***
【034】過去――魔王二日目⑨
しおりを挟む「俺が理性を保っていられるのは、前々魔王様のおかげかもな。本当に良い方だった――……俺が認めるたった一人の主だよ。なーんて現魔王様の前で不徳な発言だったな。悪い」
「いえ」
「今でも倒した勇者が憎くてたまらない。人間だからとっくに死んでるんだろうけどなぁ――新しい勇者が来る度に、それでも俺は全力で殺してる。だからメイガスの治世も長く続いたんだけどな……結局守りきれなかった」
「バル……貴方は、自分のしてきたことを美化して、さも良いことのように言う癖を止めて下さい。理由はそうかも知れませんが、実際には大層楽しそうに虐殺していたと聞いていますよ」
「あ、バレた?」
溜息をつくロビンと、楽しそうなバル。
僕がこの会話の中で学んだことは、兎に角勇者は沢山来るらしいと言うことだった。そして魔王を殺すのだろう。
「ま、そう言うことだから、魔王様。俺は俺なりに勇者を退治てやるから、心配しないで、なんとか魔族連中を支配してくれよ」
「頑張るよ……」
ただし恐怖政治なんて、とても僕には無理だと言うことだけは、よく分かる。
これまでに考えていた、地道に農耕牧畜を普及させる案では、どうにかならないものだろうか――ただし狂う、というのだから、人間の社会と魔族の社会では、やはり違うのかもしれない。僕は、一体どうしたら良いのだろう。そこで僕は、ふと思った。
「バルは、前々魔王様の時の宰相だったんだよね?」
「ん、ああ」
「その時の魔王様は、どうやって魔族を治めてたの?」
「――……各地でバラバラになってた魔族を、この地に集めて、《ソドム》と名付けた。みんなで開墾してなぁ。一体感とでも言うのか、自分達の場所が出来たからか、みんな生き生きしてたよ。あの頃が一番、幸せだった」
懐かしむような表情になり、穏やかに微笑んだバルを見て、僕は目を瞠った。
ならば――僕の考えた農耕牧畜やら、お店を作るやらで商業を発展させたり、建築設備を整えたり、道路を造ったりというのも、少しは効果があるかも知れない。そちらの方面で、出来るだけのことをしてみようと、僕は考えた。
それからバルが帰った後、僕は夕食を食べることにした。
豚の丸焼きと葉っぱの集合体には、今度はしっかりと味がついていた。スープの色も紫色ではなく、なんと、ちゃんとしたコンソメスープが出てきた。雑草のような葉の味つけも、他の食材ならば、文句なしのサラダである。
今度は食材をどうにかしようと考えながら、僕はその日を終えた。
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