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―― 第二章 ――
【036】償い
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「俺は――……決めた。償いをすることに」
「償い?」
「ああ。恨むのは止めることにした。魔王、お前は何も恨む必要がないと言ったよな?」
「言ったけどさ――その、」
「償いも必要ないと言ったな」
「うん」
「だけど俺は償いたい。お前に対して、魔族に対して、そして――俺の家族や村のみんなに」
僕はてっきり、勇者は絶望しているのだろうと思っていた。
だけど僕の想像と違って、彼は随分とプラス思考の人間みたいだった。
「じゃあ、僕を殺すのは諦めるの?」
「魔王は殺す。だがアルト、お前は連れて行く」
「ええと?」
勇者の言葉の意味が分からなくて、僕は首を傾げた。
「勇者は魔王を倒した。めでたしめでたし。これはお前が描いていた理想像なんだろう?」
「うん、まぁ」
「そして魔族は皆、静まり、人間に害をなすことは無くなった。最早魔族は、人間社会に害をなす存在ではない。そう宣言する」
「……」
「大災害も凶作も飢餓も全て、魔王は関係なかった。すぐにそれが知れ渡るはずだ」
「それが……償いになるの?」
「償いの一部にはなると思う」
「僕はそうは思わないよ。自然災害が続けば、新たな魔王が出現したと考える人達が出てくるだろうし――あるいは元々、そう言ったものに魔族が関係していないと分かっている人間もいるんじゃないのかな。そうじゃなければ、本当に魔王のせいだと信じているんなら、例え失敗しようとも、勇者を再召喚しようとするんじゃない? 言っちゃ悪いけど、召喚されていない偽の勇者って事でしょう、オニキスは。伝説の剣を抜けたって言うのは純粋に、勇者の才能があるんだろうとは思うけどさ」
すると、オニキスが頷いた。真剣な表情をしている。
「魔族の仕業ではなかったことを知っている人間を炙り出すことも目的の一つだ」
「目的って、償いの目的?」
「そうだ」
「――もし、偽勇者の手で倒したから、本当は魔王を倒し切れていなくて、復活している可能性があるから、もう一度召喚しよう、なんて言う話になって、別の勇者が来たらどうするの?」
「ロビンからこれまでの勇者の末路を聞いた」
「末路?」
「皆、元の世界には帰還できなかったと聞いている」
「出来なかったのか、しなかったのかは、不明だよ。大抵の場合、どこかの国のお姫様やら、パーティにいた女の子とかと結婚して、帰る決断をしなかったから」
「ロビンはそう言ったのか?」
「……ロビンが僕に、虚偽の報告をしていたって言う意味?」
「虚偽とまでは言わない。ただ、言い方の問題だろうな。お前の心が痛まないように伝えたんだろう」
「……へぇ」
なるほど、僕を倒した――事になっているからといって、幸せだったとは限らない訳か。
だとすれば、僕が望むハッピーエンドなんて、何処にもなかったのかも知れない。
思わず僕は笑ってしまった。
「それで? じゃあ新しく召喚された勇者には、貴方はもう帰れないので、魔王を倒しても無駄です、ってでも言うの? それこそ僕なら魔王を恨んで、許さないけどな」
「召喚される前に、伝えるんだ。召喚される直前に、『帰還できないこと』と『魔王は悪くない』と言うことを、相手に伝える」
「どうやって?」
「お前の魔術なら、それが出来るだろう?」
考えても見なかったことだったから、腕を組んだ。
確かに、勇者召喚というのは、魔術であるとも言える。神官が使うものだって、属性が違うだけで魔術の別の側面といえる。だから確かにそれは、不可能ではないかも知れない。しかしこれまでに、他の世界や、世界と世界の狭間に、魔術で干渉してみようとしたことはない。だから、そんなことが出来るのかは――理論上は出来る、としか言えない。
「ちょっと、時間をもらえる?」
「ああ」
頷いた勇者を見てから、僕は目を伏せた。
そして、ここへ来る前にいた、前後左右何もかもが白い場所を想像し、移動の魔術を試みた。
「やぁ、久しぶりだね」
すると声がかかったので、目を見開いた。
「償い?」
「ああ。恨むのは止めることにした。魔王、お前は何も恨む必要がないと言ったよな?」
「言ったけどさ――その、」
「償いも必要ないと言ったな」
「うん」
「だけど俺は償いたい。お前に対して、魔族に対して、そして――俺の家族や村のみんなに」
僕はてっきり、勇者は絶望しているのだろうと思っていた。
だけど僕の想像と違って、彼は随分とプラス思考の人間みたいだった。
「じゃあ、僕を殺すのは諦めるの?」
「魔王は殺す。だがアルト、お前は連れて行く」
「ええと?」
勇者の言葉の意味が分からなくて、僕は首を傾げた。
「勇者は魔王を倒した。めでたしめでたし。これはお前が描いていた理想像なんだろう?」
「うん、まぁ」
「そして魔族は皆、静まり、人間に害をなすことは無くなった。最早魔族は、人間社会に害をなす存在ではない。そう宣言する」
「……」
「大災害も凶作も飢餓も全て、魔王は関係なかった。すぐにそれが知れ渡るはずだ」
「それが……償いになるの?」
「償いの一部にはなると思う」
「僕はそうは思わないよ。自然災害が続けば、新たな魔王が出現したと考える人達が出てくるだろうし――あるいは元々、そう言ったものに魔族が関係していないと分かっている人間もいるんじゃないのかな。そうじゃなければ、本当に魔王のせいだと信じているんなら、例え失敗しようとも、勇者を再召喚しようとするんじゃない? 言っちゃ悪いけど、召喚されていない偽の勇者って事でしょう、オニキスは。伝説の剣を抜けたって言うのは純粋に、勇者の才能があるんだろうとは思うけどさ」
すると、オニキスが頷いた。真剣な表情をしている。
「魔族の仕業ではなかったことを知っている人間を炙り出すことも目的の一つだ」
「目的って、償いの目的?」
「そうだ」
「――もし、偽勇者の手で倒したから、本当は魔王を倒し切れていなくて、復活している可能性があるから、もう一度召喚しよう、なんて言う話になって、別の勇者が来たらどうするの?」
「ロビンからこれまでの勇者の末路を聞いた」
「末路?」
「皆、元の世界には帰還できなかったと聞いている」
「出来なかったのか、しなかったのかは、不明だよ。大抵の場合、どこかの国のお姫様やら、パーティにいた女の子とかと結婚して、帰る決断をしなかったから」
「ロビンはそう言ったのか?」
「……ロビンが僕に、虚偽の報告をしていたって言う意味?」
「虚偽とまでは言わない。ただ、言い方の問題だろうな。お前の心が痛まないように伝えたんだろう」
「……へぇ」
なるほど、僕を倒した――事になっているからといって、幸せだったとは限らない訳か。
だとすれば、僕が望むハッピーエンドなんて、何処にもなかったのかも知れない。
思わず僕は笑ってしまった。
「それで? じゃあ新しく召喚された勇者には、貴方はもう帰れないので、魔王を倒しても無駄です、ってでも言うの? それこそ僕なら魔王を恨んで、許さないけどな」
「召喚される前に、伝えるんだ。召喚される直前に、『帰還できないこと』と『魔王は悪くない』と言うことを、相手に伝える」
「どうやって?」
「お前の魔術なら、それが出来るだろう?」
考えても見なかったことだったから、腕を組んだ。
確かに、勇者召喚というのは、魔術であるとも言える。神官が使うものだって、属性が違うだけで魔術の別の側面といえる。だから確かにそれは、不可能ではないかも知れない。しかしこれまでに、他の世界や、世界と世界の狭間に、魔術で干渉してみようとしたことはない。だから、そんなことが出来るのかは――理論上は出来る、としか言えない。
「ちょっと、時間をもらえる?」
「ああ」
頷いた勇者を見てから、僕は目を伏せた。
そして、ここへ来る前にいた、前後左右何もかもが白い場所を想像し、移動の魔術を試みた。
「やぁ、久しぶりだね」
すると声がかかったので、目を見開いた。
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