魔王の求める白い冬

猫宮乾

文字の大きさ
36 / 84
―― 第二章 ――

【037】神様との再会

しおりを挟む

 目を開けると、正面には光球があった。千二百年ぶりにみる、自称神様だった。

「魔王業はどう?」
「……その」
「嫌になっちゃった? まぁ、種族とか技能とか、与えた特典とかはもう変えられないけど、魔王はあくまでも職業だからさ、他のことをやりたくなったら、とりあえず魔王のところには名前だけ残して、他のことして過ごしても良いからね。君の十代前の魔王なんて、面倒くさいから一魔術師になりますって言って、魔術師として暮らしてたよ。その後他に魔王になりたいって人がいたから、魔王を辞めてもらったんだけどさ。彼も不老不死だったから、今でもどこかで魔術師をやってるかもね」

自称神様の朗らかな声に、何となく僕は脱力しそうになった。
こんなに簡単に会いに来られるのならば、もっと早くにそうすればよかった。

「やだなぁ、今回は特別だよ。面白いことするみたいだったから、この空間に入らせてあげただけ」

 すると笑い声と共に、僕の心を読んだらしく、自称神様が言った。
「『帰還できないこと』と『魔王は悪くない』ことを、これから、あの世界から勇者召喚が行われた時に表示すれば良いんだよね? 基本的にこの空間を経由して、勇者の召喚は行われるから、任せて」

 僕は笑顔を浮かべながら、心を読まれないようにする魔術を発動した。
 効果があるのかは分からないが。

「――……その勇者達にも、特典はつくんですか?」
「基本的に勇者特典はつくよ。魔王や魔族に対しては、凄い力を発揮するようになる。剣とか魔術とかの力も凄くなるよ。後は一つか二つ、時と場合によってついてる。それが何かは人によるけど」
「もし、二つの条件をのんで、あちらの世界に来る勇者がいたら、もう一つ特典をつけてもらえませんか?」
「ん、聞くだけ聞いてみようか。言うのは自由だからね。君もつれないなぁ、心を読めなくするなんて。相手は僕――神様なのにさぁ」
「不死の魔王アルトを殺すことが出来る」
「うーん、却下だね。何、生きるのに飽きちゃった?」
「……」
「却下の理由はね、基本的に勇者って一人なんだよね。魔王が一人、勇者が一人。召喚された人だろうが、そうじゃなかろうが、各世界に本物の勇者は一人だけなんだ。だから、今後何人も勇者が召喚されるかも知れないけど、その一人一人にそんな特典つけるのは、それも二つの条件で選りすぐった勇者にだけ、その特典を与えるのはさ、結構大変なんだよね。せめて君の世界だけの神様やってるんなら良かったんだけど、ほら勇者や魔王がいる世界は、君の今いる世界だけじゃないし」
「今、僕の所にいる勇者は、本物の勇者ですか?」
「さぁね。どうかな」
「どっちでもいいです。彼に、僕を殺せる能力を授けて下さい」
「神様的には、一人間を依怙贔屓するわけには、行かないんだよね。それに、彼だって勇者だから、勇者の特典は持ってる」
「彼も勇者です。普通の人間じゃない」
「でもさ、彼。アルト君の事、殺すつもり無いみたいだけど?」
「なんとかします」
「確かに君の側の特典を君の側から削ることは出来なくても、相手にその特典を打ち消すって言う特典が有れば、不老不死の君を殺す、っていうのは可能だけどさ……君って結構自分勝手なんだね。君に死なないで欲しいって思ってる人が沢山いるのに、死のうだなんて」
「……」
「じゃあ、こうしよう。君に心から愛する人が出来て、君が死にたくない、ずっと一緒にいたい、と思った時、その時に君を死ねるようにしてあげるよ」
「……え?」

 自慢ではないが、千二百年生きてきて、そんなことは一度も無かった。無かったのだ。一体いつ、愛する人など出来るのだろう。全く想像もつかない。

「これが神様の優しさ。最大の譲歩だ。じゃ、条件提示の件も了承したし、もう話は終わりかな」

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

神子は二度、姿を現す

江多之折(エタノール)
BL
1/7外伝含め完結 ファンタジー世界で成人し、就職しに王城を訪れたところ異世界に転移した少年が転移先の世界で神子となり、壮絶な日々の末、自ら命を絶った前世を思い出した主人公。 死んでも戻りたかった元の世界には戻ることなく異世界で生まれ変わっていた事に絶望したが 神子が亡くなった後に取り残された王子の苦しみを知り、向き合う事を決めた。 戻れなかった事を恨み、死んだことを後悔し、傷付いた王子を助けたいと願う少年の葛藤。 王子様×元神子が転生した侍従の過去の苦しみに向き合い、悩みながら乗り越えるための物語。 ※小説家になろうに掲載していた作品を改修して投稿しています。 描写はキスまでの全年齢BL

秘匿された第十王子は悪態をつく

なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。 第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。 第十王子の姿を知る者はほとんどいない。 後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。 秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。 ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。 少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。 ノアが秘匿される理由。 十人の妃。 ユリウスを知る渡り人のマホ。 二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。

『偽物の番』だと捨てられた不憫な第三王子、隣国の冷徹皇帝に拾われて真実の愛を教え込まれる

レイ
BL
「出来損ない」と捨てられた場所は、私の居場所ではありませんでした。 ラングリス王国の第三王子・フィオーレは、王族の証である『聖種の紋様』が現れなかったことで「偽物の番」と罵られ、雪降る国境へと追放される。 死を覚悟した彼の前に現れたのは、隣国アイゼン帝国の「冷徹皇帝」ヴォルフラムだった。

処理中です...