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―― 第五章 ――
【081】世界が明るく見える時
しおりを挟むすると僅かに考え込むような沈黙を挟んでから、オニキスが答えた。
「何もない山間の村だった」
「そうなんだ」
「ただ一つだけ、洞窟があって、その奥に今俺が持っている勇者の剣が突き刺さっていたんだ。俺はそれを抜いてしまった」
「抜けたのは凄いことだと思うけど」
「――どうだろうな。魔族を屠る度に、これが正しいことなのか自問していたんだと思う。今になって思えば。ただ……お前に出会えたから、これで良かったんだと今では思っているんだ。最初はそれこそ単純に復讐したいという衝動に駆られていたにしろ」
「いつか、オニキスが育った村を見てみたいな」
「ああ。《聖都》へ顔を出した後、必ず連れて行ってやる」
そんなやりとりをしてから、二人は静かにそれぞれ目を伏せたのだった。
僕達はそれから野宿や、各街での宿泊を繰り返し、《聖都:ローズマリー》へと向かった。
ただ、それでも。
僕は不思議なことに、世界に色彩なんてやはり感じなかったのだ。
全ては不可思議な灰色に見えて、その場に自分がフィットしている気がしない。
ただ、ただ、オニキスの側にいる時だけは、世界が明るく見えるのだ。
その理由なんて、僕自身にも分からない。
寧ろ、こんな風に、心を乱すオニキスのことが、本当は僕は嫌いなのかもしれない。
オニキスと一緒にいると辛くなったり苦しくなったり、胸の疼きが止まらなくなって頬が熱くなって、泣きそうになるからだ。
何も出来ない己の無力を突きつけられるようで、吐き気がした。
――ああ、どうして僕は何も出来ないのだろう。
一つだけ、だけど僕は気がついた。
僕はこれまで死にたい死にたい終わらせたい消えたいと、自分のことしか考えてはこなかった。自己中心的だったのだと思う。
だけど今は、少しでも、オニキスのために何かが出来たらいいと思うのだ。
そして、何も出来ない自分に多分絶望していた。
きっとオニキスは、僕に何かを望むことはないし、僕が何も出来なくても気に何てしない。
だけど何かをしてあげたくて、なのに何も出来なくて――その上、必要とされない現実が確かに底には横たわっているのだ。
恋人とは、そう言うもので良いのだろうか。
僕には恋なんてそんなもの、今でも確かに確固としては分からない。
だけど……そんな僕自身のことが、僕はどうしようもなく疎ましい。嫌いで嫌いで仕方がない。気がつけば、僕は無力だった。何も出来ない。何かしたいのか、何をしたいのか、それすらも分からない。こんな自分が恋人、何て言ってもらえる価値があるのか。
きっと、無い。
息苦しくなって、僕は、再びシーツを握りしめた。
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