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―― 第五章 ――
【084】雪景色
しおりを挟む《聖都》を出たのは、そのすぐ後のことだった。
ルイは神殿に残るとのことで、フランは何処へと行ったのか、姿を消した。
ただ僕は、オニキスに手を引かれて次の街へと移った。
「!」
そこには、舞い落ちる綿雪があった。
それは――ずっと見たかった、雪だった。冬だ。だが、先程までいた街はまだ夏の終わりだったから、虚を突かれて僕は息を飲んだ。
その街は草原に囲まれていて、周囲には囲むように山がある。
「お前、これが見たかったんだろ?」
「――オニキスだって、一緒に見たいって言ってたじゃないか」
「ああ……それに、思い出したよ、俺が失ったモノを」
アルトは視線を向けて、追憶に耽るように遠くを見た。
一体何を彼が失ったのか聞きたい気もしたが、果たして己に聞く権利があるのか分からなかった。
一面の雪景色が、二人の前の草原に広がっている。
「なぁ、アルト。お前に、〝大切〟な友達がいたことはあるか?」
不意の言葉に、僕は首を傾げた。そう言われて思い出すのは――もう千年以上経っているというのに、相変わらずたった一人だったから苦笑してしまう。
「あるよ」
そう答えると、雪を見据えていたオニキスが振り返った。
「誰だ? 名前は?」
「……置田って言うんだ」
懐かしいなと思いながら、僕は微笑んだ。
「そいつは――お前にとって、どんな奴だった?」
「そうだな。僕の、たった一人の、一人だけの大切な友達だったよ。僕には、あの世界で、置田以外、誰もいなかったからなぁ」
目を伏せアルトが言うと、オニキスが息を飲んだ。
「……それは、友情か?」
「うん、そうだね」
「もし仮に、その相手が恋情を抱いていたとしたらどうした?」
「考えたこともないから、よく分からないよ」
率直に僕が言うと、不意にオニキスが僕を抱きしめた。
「でも、今、今は少なくともお前は俺の恋人なんだよな?」
「え? どうしたの急に」
「俺は思い出したんだよ」
「何を?」
「冬の夢を見る理由を」
そう言うと、オニキスが僕の両肩に手をのせ強く掴んだ。
「――俺は、そうだ、俺は、いつだって、現実ではないどこかでチート能力だとかそんなものを得ることを望んでいたんだよ。魔王を倒すみたいな、そんなかけがえのない存在でありたいと思っていたんだ」
「……オニキス?」
その言葉の意味が分からなくて、僕が首を傾げる。
「だけど現実世界において、俺の居場所はお前の隣しかなかったんだよ在斗。多分俺は、本当はお前が側にいてくれれば、それで良かったんだ。お前がいなくなっては自分勝手だったって気づいた。俺は、お前の事が好きだったんだって」
何を言われているのか分からなかったのだが、だけど、けれど、胸の動悸が早まっていく。
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