魔王の求める白い冬

猫宮乾

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―― 第五章 ――

【085】魔王の求める白い冬

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「お前が死んだって聞いた時、俺はもう、自分が生きている価値なんて無いと思った。だから、そうだ、だから俺は――……寿命を全うしたあの日まで、ずっとお前のことを想ってた。そうして神様だとなのる白い光と会ったんだ。その時、欲しいモノを聞かれたから、俺は、そうだ俺は、もう辛いお前と一緒にいた記憶を消して欲しいと願ったんだ。お前がいない世界で何て、俺は何処であっても生きていける自信がなかったから」

 それは、それは……――どういう意味なのか。
 ただ僕は目を見開くしかない。

「今になって思えば、俺はずっとずっとずっと、お前を失った、大切な者だったお前を失った冬が、きっと――嫌いだったんだ」

 その声に、僕は唇を噛もうとして止めた。

「……置田?」
「ああ、そうだよ。お前の記憶だけ消してもらって、都合良くチートやってる転生者が、俺なんだ」
「全然見た目違うじゃん」
「お前だってそうだろ――だけどそんなんじゃない。お前を見た瞬間に、俺はお前の事を忘れていたのに抱きしめてた。結局忘れるなんて無理なほど、俺はお前が好きなんだよ」

 日本の世界にいた頃の大親友のそんな言葉に、気づけば僕は苦笑していた。

「そっか。有難う」
「どうしても……どうしても俺は、きっとお前に会いたかったんだ」

 そう言ってオニキスが僕を抱きしめた。
 そこへ丁度再び雪が降り始めた。

「――今になって思えば、置田と一生離ればなれになった冬を、僕も疎んでいたのかな。だから《ソドム》には冬が来なかったのかもしれない」

 笑いながらそう言ったはずなのに、僕の瞳からは涙が滴っていた。

「その頃はずっと言えなかったけどな、今なら、〝オニキス〟じゃなくてもちゃんと言える。お前の事が好きなんだよ、俺は」

 その一言だけで、僕は胸が温かくなるのを感じた。

「これからは、ずっと一緒にいてくれないか?」

 オニキスが言った言葉に、気づけば僕は苦笑していた。

「僕は――本当に愛する人が出来たら、死ねるんだって。それまでの間でも、構わない?」

 そうだ、そうなのだ。
 一目惚れなんかでもないし、告白されたからでも何でもなかったのだ。
 二人の間にはきっと、赤い糸が繋がっていたのだろう。

「絶対に俺が死なせない」

 断言してオニキスが僕を抱きしめた。

「愛してるんだ。どうして、生きてる間に言えなかったのかって、ずっと後悔してた」
「きっとそれは、僕達が、そう言う関係性だったからだよ」


 ああ、雪が舞いしける。
 抱きしめ合った僕達の髪の上にも綿雪は降って、溶けていく。



 それから二人で、魔族の土地《ソドム》へと戻った。
 以後――《ソドム》には、僕の求める白い冬が訪れるようになった。
 ハッピーエンド。
 僕達の結末の一つはこれで終わりだったが、まだまだ末永く幸せに暮らしましたには、ほど遠いのかもしれない。紆余曲折、試行錯誤しながら、二人でこれからも生きていくのだから。ただ。

「愛してる」

 オニキスかがそう呟いた声が、空に溶けていき、鴉がそれと交差するように飛んでいく。僕は幸せに浸りながら、舞い落ちてくる綿雪を見上げた。もう、死にたいとは思わない。




―― 終 ――



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感想 2

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みんなの感想(2件)

ノア吉
2023.08.17 ノア吉

最新話まで読まさせていただきました😊
アルト君や魔族に天災も罪を被せてしまう人族の罪深さ……複雑ですね。
そういったシーンが所々にあって胸が苦しくなります😵

2023.08.18 猫宮乾

ありがとうございます!(〃'▽'〃)
このお話、私も複雑な側面があって、書きながら苦しかった記憶があります!
なんだかアルトに、前向きになって欲しいなぁとずっと思っておりました!
コメント本当にありがとうございます!!

解除
ノア吉
2023.08.14 ノア吉

先程こちらの作品を見つけて016話まで読まさせていただきました。
アルト君やオニキスの心情描写がとてもリアルで引き込まれました。
素敵なお話ありがとうございます😊

2023.08.15 猫宮乾

ご感想ありがとうございます(〃'▽'〃)
とっても嬉しいです! 大好きな二人なので、見守って頂けましたら嬉しいです!

解除

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